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現代の忍ギルドは忍ばない  作者: 江山彰
第五章『冒険者が行方不明、原因は家出だ』
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六十四の巻『隠しカード』

   六十四の巻『隠しカード』



 冒険者ギルド『狼弧』二階松の間。

 元旅館であった建物は二階には当然いくつもの客間があった。その内のいくつかは会議用の円卓の間や雷丸こだわりのギルドマスター室などに使われているが、それでも多くの部屋が残っていたので、少しでも稼げればと冒険者にカラオケボックスのような時間制で貸しだしている。


 雷丸は緋桜と杏樹を伴い、カーンズ達を引き連れて松の間へと入った。

 タタミ八畳ほどの和室。

 資金さえあれば冒険ギルド風に改装したいと考えている雷丸だが、いろいろと先に済ませたい案件があり二階の内装は後回しになっていた。異世界を生み出す幻術も緋桜が仕掛けた警備陣に阻まれてギルド内では機能していない。

 緋桜曰く、雷丸様の生活する建物に幻術が通用するなど警護の観点から許せることではないらしい。これによりギルド本部の内装だけは幻術では無く本当に工事して改装している。

 よって和室のままになっている部屋へ冒険者スタイルの九人の若者がゾロゾロと入り、座布団を敷いて腰を降ろした。


「話を聞いてくれて感謝するぜ」


 全員が座り落ち着いたのを確認していからまずは雷丸が口を開いた。


「いや、こちらこそ装備を新調してちょうど大きな獲物を探していた所だったから、渡りに船だ」


 チェリーの名前が有効に働き、カーンズ達は有益な情報だということは疑っていない。


「それで、そちらの要求はなんだ、その相手との共同討伐か」


 カーンズも雷丸がタダで情報をくれるとは思っていない、雷丸もカーンズ達が金欠状態だと知った上で持って行った話しだ。だから一番に想像するのは共同討伐だろう。


「それも悪くは無いんだがな、今は探している相手がいてな、情報の交換がしたいんだ」

「ちょっと待ってくれ、俺たちはチェリー姫がかなわないような魔物の情報なんて持ってないぞ」


 チェリー姫と言われて緋桜が額を畳みに打ち付けた。

 平均レベル十八のトップパーティーが緋桜一人よりも劣るとはっきりと認めている事実。


「緋桜、あなた一体何をしたの?」

「え、いえ、その、ただの雷丸様の護衛です」


 雷丸の護衛として参加した月光熊討伐クエストで、つい討伐隊が苦戦した月光熊を一人で倒してしまったのだ。その前にもチェリーの大岩と名付けられた新名所を作り出すなど、騒がれる土台はできあがっていたが。


「サンダー俺たちの情報は……」

「わかってる、そんな強敵の情報を持っていたら俺の話しには乗らなかっただろ」


 落ち着いた言葉選びで雷丸は交渉の主導権を握っていく。もっとも雷丸は亜雪ほどの交渉術を持っているわけではないので、あまり長引かせることはしたくない。


「駆け引きは苦手だからな、単刀直入に話そう」


 会話の流れは雷丸に味方している。ここでカードを切り出すのは悪手ではないだろう。


「俺たちは鳥型のテイムを狙ってるんだ、それもザコではないレア級の」


 雷丸の話しを聞いたカーンズの仲間たちが顔を見わせる。

 鳥型の魔獣の情報はまだギルドクエストにも殆ど出ていない。それと言うのもギルドが始まってから約一ヶ月、飛んでいる敵に攻撃が届くのは武器屋ができるまでは魔法だけだったのだ。これからは違ってくるだろうが現状ではそうなっている。


「鳥型の魔獣の情報か」


 カーンズは答えに悩み黙り込んでしまった。

 その反応に雷丸は嬉しそうに頷いて、チラリと杏樹を見る。

 杏樹もカーンズの反応で気が付いた彼らはギルドにも報告していない鳥型魔獣の情報を持っていると。


「自分たちだけで相談したいなら俺たちは一度部屋を出るぞ」

「……そうだな、そうしてもらえるか」


 数秒考えた後、カーンズは仲間と相談したいと言ってきた。


「わかった、緋桜、アリージュ、一旦外に出ようぜ」


 存分に話し合ってくれと雷丸達は部屋を後にする。




 松の間を出た三人は一階ホールが見下ろせるロビーで時間を潰すことにした。その間に杏樹が雷丸にどうして彼らが情報を持っているのが分かったのかと問い質してきた。


「ギルマスは彼らと親しかったの?」

「まあ、共に強敵と戦った戦友ではあるな」


 彼女とて闇雲に裏山異世界を走り回るだけではなく情報取集もしていたのだろう。結果は全て空振りであったようだが、だからこそ簡単に情報を探し当てた雷丸に聞かずにはいられない。


「受付で何度か彼らと話をしましたが、鳥型魔獣のことは聞いたことがありません」


 受付嬢主任も雷丸がどうしてわかったのか不思議なようす。


「鳥型魔獣の発見はまだ知れ渡っていない最新情報だ、無意味に公開しないで有益に使えるカードとして懐に隠してたんだろ、カーンズたちはトップを争う冒険者たちだぜ、今日俺たちが行った未踏エリアとは別の未踏エリアに行っていても不思議じゃない」


 未踏エリアに踏み入れ、その情報を有益に使うためのカードしている可能性は、トップなら誰でも一枚や二枚は持っているだろと雷丸は予想したのだ。


「ですから、オーガの砦の情報が交換のカードになったのですね」

「オーガなんて大物が釣れるとは思ってなかったけどな」


 緋桜は雷丸が何のために砦に入ろうと言い出したのかやっと理解できた。それは杏樹も一緒だろう。冒険者が隠したカードを見るためにはこちらにも対等に渡り合えるカードを用意する必要があったのだ。


「でも、あの連中が鳥型魔獣の情報を持ってなかったらどうしてたの?」


 カーンズ達の反応からして持っているのは間違いないだろうが、無かった時の場合を想定していたのかと杏樹は尋ねる。こちらのカードもオーガの砦一枚だけなのだ、それを使って狙った情報がゲットできなかったまたカードを探すはめになる。


「そん時は、オーガか砦どちらか半分の情報を伝えて、鳥型魔獣を探してもらう人員を増やすつもりだったさ」


 持ってるカードを半分にして小出しすることで、手伝い要員として働いてもらう。見つけたら残り半分も渡せば同じこと。


「ただ前衛職全員が遠距離装備をしていたからな、飛行型の相手を想定しているのは間違いと確信してたぜ」

「なるほど、装備で判断したんだ」


 見直したと杏樹の雷丸を見る目が少しだけ変化した。



「さすが雷丸様」


 異世界のことだけは頭の回転が速い、とまでは緋桜は口にしなかった。

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