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現代の忍ギルドは忍ばない  作者: 江山彰
第五章『冒険者が行方不明、原因は家出だ』
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六十二の巻『レベルアップ』

   六十二の巻『レベルアップ』



 オーガの砦を飛び出した雷丸と杏樹は、外で暴れていた三匹の召喚獣と合流した。子狼と子狐は素早さを活かしてゴブリンたちをかく乱、小さい体でも力持ちの小熊、リトルベアは自身の倍以上ある体格差のゴブリンを腕の一振りで吹き飛ばしていた。

 リトルベアが雷丸たちを見つけると肉球の付いた手を上げてキュウと鳴いて出向かえてくれた。


「ッ!」


 その愛くるしい仕草に杏樹が息を飲む。

 今まで醜いゴブリンたちに囲まれていたせいだろうか、動くテディベアのかわいらしさが前に見た時よりも数段階上がって見えた。


「どうだ、俺のパートナーたちは最高だろう」

「ええ、否定はしないわ」


 鳥一途の杏樹さえもその可愛さは認めるしかなかった。


「アリージェも早くパートナーができるよう協力するぜ、最高だからな」

「あ、ありがとう」


 さきほど同様にカッコつけた言葉、だがその効果はさきほどとは違い効き目があったようで、獣騎士の少女からは、照れながらも素直にお礼が帰ってきた。


「おう、まかせろ親友」


 召喚獣たちが雷丸の足元に駆け寄ってくる。


「よく来てくれたお前たち、脱出するぞ」


 迎えにきてくれた召喚獣たちを褒め、柵の外を目指す。


「緋桜はいいの?」

「大丈夫だ」


 雷丸は砦二階の窓の位置を確認して、そこから見えるように道を選んで門を目指す。こうすれば緋桜の方が自分たちを見つけてくれると信じて。

 すこしだけ遠回りになるが、三匹が合流したことで雷丸も戦力として活躍できる。


「どきなさいよ」

「やってしまえ」


 杏樹の斬撃が雷丸の召喚獣たちが行く手をはばむゴブリンたちを薙ぎ倒していく。

 砦からだいぶ離れた所で砦内部から岩盤が崩れるような轟音が聞こえてきた。その音に雷丸たちを襲っていたゴブリンたちの動きが止まる。


 好機とばかりに雷丸は召喚獣たちを突撃させ視界の範囲にいるゴブリンどもを殲滅させた。動きが止まればザコのゴブリンなどただの的でしかない。

 殲滅を終えてから轟音のした砦を振り返る。


「ギルマス、これって」

「オーガが一階に落とされたんだ」


 疑う余地はない、そしてまもなく崩落には巻き込まれなかった緋桜が戻ってくると確信も持っていた。


「お待たせしました雷丸様」


 信じた通り澄み渡る青空から、舞い降りるように緋桜が雷丸の元へ戻ってきた。


「おう、お疲れ」

「今、空からこなかった」

「忍ですから」

「ああ、そうなんだ」


 この主にしてこの忍あり、普段から常識を持ってくれと主に訴えている緋桜だが、緋桜本人の身体能力は常識人のそれを大きく凌駕していた。あのオーガと一人で戦ったはずなのに、剣は無くなり防具もボロボロなのだが、本人には傷一つ付いていない。

 ギルド最強は誇張など一切ない事実だった。


「あ、レベルが上がった」

「私もです」

「私もだ」


 三人揃ってのレベルアップ。パーティー登録をしていれば誰が倒しても経験値は共有される。召喚獣や杏樹が倒したゴブリンに加えて、緋桜が起こした崩落に巻き込まれた砦一階のゴブリンたちの経験値が一気に流れ込んできたのだ。


 レベル十四だった雷丸はレベル十五に。

 レベル七だった杏樹はレベル九へ二段階上がり。

 レベル五だった緋桜は一気に三段階アップのレベル八となった。


「召喚獣も進化できるな」


 雷丸がギルドカードを操作すると、三匹の召喚獣が輝き出し幼獣から進化していく。


 リトルウルフは大型犬サイズになり、漆黒の毛を持つ狼、ブラックウルフに。

 リトルフォックスもブラックウルフほどではないが大きくなり、キラキラと輝く銀の毛と尾の先が炎色へと変わるファイアフォックスとなり。

 最後のリトルベアは、雷丸の身長と同じくらいの高さを持つスリムな熊へと成長した、親の月光熊の特徴を引き継ぎ鬣がわずかに赤くなっている。名前はレッドワグマ。


「おお、見た目も強そうになったな」


 人が乗るにはサイズ的にきついが、この大きさならかく乱役だけではなく立派な前衛を務められそうだ。

 これからはもっと活躍できると喜んでいた雷丸だが、三匹が光となって送還されることで現実に引き戻される。


「しまった、レベル十五だと、まだ成長した三匹を同時に維持するには魔力が足りな過ぎた」


 ギルドカードに表示される雷丸の魔力はほぼカラになっていた。

 それでも三人の中では最高レベルである。


「さすがギルマス、レベルが高いわね」


 レベル十五は冒険者の中ではかなり高い方だ、まだ二十に到達した冒険者はいない。トップクラスと言っていいだろう。あくまでも一般的冒険者の中では。


「緋桜は私よりレベルが下だったんだ」


 朝のごたごたしたギルド本部をすぐに出たため、各自レベルの申告を完全に忘れていた。本来ならどの程度の能力を持っているか冒険前に共有するのが普通であるのだが、ド忘れしていた雷丸に異世界音痴の緋桜、基本ソロだった杏樹、気がつく者が一人もいなかった。

 よってレベルと実力が不釣り合いな緋桜を見て杏樹が驚くのはしょうがないことであった。


「こいつは、たまにギルドカードを忘れるから敵を倒しても経験値が貰えないことがあったんだ」

「たまにって一回だけですよ」

「一回はあるんだ」

「レベルを無視した戦闘力も対外にしろよな」

「流石、ギルド最強の魔法剣士チェリー」

「殿を務めた私にそれですか、杏樹までチェリーって呼ばないでください」


 オーガを単身で手玉にとった忍娘はダブルでいじられて泣きそうな顔で抗議してくる。


「おいおい、アリージェまで緋桜をいじるなよ」

「緋桜の反応が可愛くてつい、いじりたくなるギルマスの気持ちがわかったわ」

「わからないでください!」

「ごめん、悪かったわよ」


 泣きそうな顔をしながらも、砦の中を柵の外まで二人を誘導していく、泣けるほどに義務を果たす涙目の忍娘であった。


「さて、手札を手に入れたし、シームルグを探しに行きますか」

「やっとね、でも私にはまったく手掛かりが、あの砦にあったとは思えないだけど」


 砦に入ったのは雷丸が情報が手に入ると自信満々で言ったからだ。


「そりゃまだ、手に入れてないぞ情報は」

「あんたね」


 話が違うと怒りを露わにする杏樹だが、雷丸は涼しい顔で言葉を続けた。


「だから、これから手に入れに行くのさ」

「どこによ?」

「もちろん、冒険者ギルドにだぜ、情報は手に入らなかったけど、情報を引き出すための手札は手に入ったからな」


 雷丸の自信は揺るぎなかった。

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