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現代の忍ギルドは忍ばない  作者: 江山彰
第五章『冒険者が行方不明、原因は家出だ』
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五十八の巻『砦』

   五十八の巻『砦』



 雷丸たち三人が見つけたモノ、それは砦であった。

 ギルド発行の地図には森と記されていた未踏のエリアは、木々が切り倒され森の中で石造りの堅牢そうな砦が建っていた。


「雷丸様、あの砦は」

「魔獣以外にも、異世界を拡張した時にランダムで古代遺跡なんかも作ったからその内の一つだろうな」

「異世界拡張?」


 まったく聞いたことの無い言葉に杏樹が聞き返す。


「え、ああ、これはオフレコで頼むぞ」


 緋桜と普段の調子で会話していた雷丸は杏樹が運営側とはまったく関係の無い立場にいることを忘れていた。ここまで聞かれてしまってはしょうがないと、部外秘だと最初に約束して異世界拡張の件を説明する。


 異世界拡張とは冒険者ギルド運営開始から僅か一ヶ月足らずで、裏山異世界の三分の一が攻略されたことを受け、急遽実施された対応策。亜雪から周辺の山も貸そうかという案もあったが金銭的問題で流され代案とされたのが異世界だけの拡張、現実の面積は変えずに、幻術を強化して裏山異世界を冒険する冒険者の感覚だけを三倍広く感じるようにしたのだ。


 このおかげで、異世界の広さは三倍にまで拡張されたのだ。それも雷丸の想像力のなせる技、一つの山を三倍広げるイメージなどそうそうできるモノではない。もっと広げられると雷丸は豪語したが、これ以上広げると一般人でも違和感がすると幻術のプロ弧乃衛忍軍隊長の清に止められた。


 ともかく広げた異世界に新たな追加された要素の一つが、目の前にある砦などを含めた古代遺跡なのだ。まさかそれを改修して住処にしているとは、雷丸の想像は本人の知らない所で勝手に進化している。これも狐賀忍軍の高度な幻術があってこそのなせる技。


「幻術?」


 異世界拡張の説明を聞いた杏樹にあらたな疑問を持たれてしまった。


「……雷丸様」


 これにはさすがに怒りを覚える緋桜。


「悪い、幻術も秘密だったな」

「もういいです、杏樹なら秘密も守ってくれそうですか」


 両手を合わせて頭を下げる雷丸を見ると、それ以上怒れなった緋桜はしょうがないと言った顔で許してしまう。


「私は別にギルドの秘密を暴くつもりはまったく無かったんだけど」


 秘密など聞いてもいないのにポロポロと穴のあた道具袋のようにこぼれ落ちてくる機密に、やや呆れ顔の杏樹、結局緋桜たちが忍であることまで聞かされる。


「驚いただろ」

「雷丸様は少し反省してください」

「すまん」

「確かに驚いたわね、この異世界が最新技術によるモノじゃないなんて」


 やはり一般には最新技術系のシステムが使われているとの印象をうけるようだ。確かにギルドカードだけは最新技術だけで作られているが、それ以外は全て忍の術でなりたっている。


「最新どころか、生命の進化と共に古代から延々と受け継がれてきた技法だ」

「そこまで古くありません」


 雷丸の言い回しでは恐竜の時代までさかのぼりそうだ。


「それで話が大幅にずれたけど、ギルマス、結局あれは古代遺跡でいいのよね」

「石の砦はな、まわりの柵は最近作られたみたいだけど」

「ですね、周囲の木を切り倒し柵に利用したのでしょう、柵の作りは歪ですが壁を太い木で二重にしています。頑丈さだけはありそうですね。ただ、見張り櫓も有りませんし、前に流れる川も少し手を咥えれば天然の堀代わりに使えます。いろいろと勿体ない作りでもあります」


 緋桜は忍としての視点から目の前の砦をいろいろとダメ出しをする。


「緋桜、これは別に戦のための砦じゃないだろ」


 それどころか人間が作ったとは思えない、古代遺跡を取り入れたのは一週間ほど前だ、こんな短時間に重機もない異世界で砦を囲むほどの柵を作るのは人間には不可能だ。


「知性のある魔物が作ったんだろうな」

「でも鳥ではないのは確かよね、だったら私たちには関係ないわ」


 どこまでも鳥型にこだわる杏樹は異世界の新発見にもたして興味の無いようす。だが逆に異世界ファンタジー大好きな雷丸としてはこの新発見は放っては置けない。


「関係は築いてこそだぜ、あの砦にどんな魔物がどのくらいいるか調べよう」

「ちょっと、今日はシームルグを探す約束でしょ」

「やみくもに探すより、あの砦を調べた方が手掛かりが見つかるかも知れないぜ」


 まったく根拠が無いはずなのに、自信たっぷりに言いきる雷丸。


「緋桜、ギルマスがおかしなことを言いだしたんだけど」

「それはいつものことですが」

「おい」


 主に対してひどいもの言いをする緋桜だが、ちゃんとフォローも入れるのが御側衆筆頭まで登り詰めた天才忍。


「けど雷丸様は異世界については嘘はいいませんよ、きっと手掛かりが見つかるはずです」


 それは先ほど、緋桜自身が説得された言葉、それを今度は緋桜が口にした。なんだかんだで主の意見を支持する忠義の忍。


「わかったわよ、あなたの顔をたててギルマスを信じるわ」


 杏樹は雷丸ではなく緋桜の事を信じて砦の調査を承諾した。


「では、私が調べてきますので二人はここに隠れていてください」

「ちょっと待った、緋桜一人で行ったら俺とアリージェが楽しめないだろうが」


 確実性だけをとるなら緋桜に任せた方がいい、だがそれでは雷丸の望む異世界冒険にはならないのだ。


「私をあなたの同類にしないでくれる」

「一緒のパーティーを組んでるんだから仲間だろ、それに鳥魔獣に対しては俺と同じ匂いを感じているぜ」

「うわ~」


 否定をしたい杏樹だが、シームルグに対しては出会うために家出までしている身、思い当たる節が有るがために否定できなかった素直な剣道少女。


「三人での調査決定だな、作戦だが俺、アリージェの召喚魔獣が囮になって相手をおびき出して、その隙に緋桜が偵察だな」

「ちょっと待って!」


 今度は杏樹が待ったをかける。


「私は召喚獣を一体も持ってないわ」

「は? 獣騎士なら職業登録の時に一体貰えた筈だろ」


 召喚士は二体、獣騎士は一体、貰えることになっている。


「選択肢に鳥がいなかったから」


 それでは騎馬のいない騎兵と同じではないか、いる意味あるのと言われかねない、獣騎士のスキルの半数以上が従魔との連携技やサポート系だ、ソロで活動するのは相当きつかっただろうに。


「生粋ですね」

「やっぱり同類だ、好きなモノに対してのその拘り、シンパシーを感じたぜ友よ」

「う、うう~」


 見たくない自分の恥ずかしい一面を見てしまって身悶える従魔のいない獣騎士。


「作戦変更だ、俺の召喚獣全てを囮として三人で砦の中を覗こう」

「抜本的に変更されたわね」

「杏樹、アレが変更の要因ですよ」


 緋桜が砦から伸びる獣道を指さした。そこには台車に大猪の死体を乗せたゴブリンの集団がやってきた。


「あの砦を使っているのはゴブリンの集団か、柵を作る知能があるってことは相当な上位種だな」


 雷丸はゴブリンの運搬部隊が砦に着き、狩りの獲物を運び入れるために門が開いた瞬間に従魔三体による襲撃を決行することにした。

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