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現代の忍ギルドは忍ばない  作者: 江山彰
第五章『冒険者が行方不明、原因は家出だ』
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四十八の巻『夜襲もするぞ、この正副ギルドマスターズは』

   四十八の巻『夜襲もするぞ、この正副ギルドマスターズは』 



 小さな失敗はあったが気を取り直した雷丸は、集まった御側衆十二名にリストに載っている家出中の生徒たちの追跡を命じた。冒険者名簿で分かったことは、行方不明の生徒たちは全員が同じパーティーを組んではいなかったことだ。


 てっきり集団で行動していると雷丸は予想していたのだが、そうではなかった。

 共に行動しているのは多くても五人ほどで、中にはソロで活動している冒険者もいる。雷丸は現時点での接触はやめ、ギルドをしめた後に彼らがどこに寝泊まりしているのかを突き止めることにする。


「今、注意しても聞かない可能性があるし、ここまでレベルを上げてくれた連中を追放処分にはしたくない、できる限り穏便に解決しよう」


 家出冒険者たちのレベルは現在の上級者と言ってもいい経験値を稼いでいる。こんなお得意様を追い出すのはもったいない。

 学校に家出が冒険者ギルドと関わっていると知られる前に、騒ぎを抑える。


「きっとどこかに根城があるはずだ、そこを抑えて家に帰すぞ」




 曇で月が隠された夜。御側衆の迅速な活躍により、彼らの根城は半日で割り出された。

 その場所とは街灯がまばらに灯るシャッターのしまった商店街、そこに雷丸を中心に緋桜たち御側衆の忍が集まっており、何故か亜雪お嬢様の姿までもあった。


「亜雪、今さらだが門限はいいのか?」


 財閥のお嬢様である亜雪は、身の安全のために以前は日が沈む前には専属の執事が車で迎えにきていた。

 もっともその専属執事が亜雪を襲う計画の首謀者であり雷丸や緋桜が撃退してから二日とたっていない。そんな時期に門限破りなどしたら、今後は外出禁止になるのではと雷丸は心配になるのだが、とうの亜雪は。


「雷丸や緋桜さんたち忍と一緒なら大丈夫だと説得しました。もともと鮫裏を私の専属にしたのは父ですから、強く反対されることはありませんでしたよ」


 以前から門限が早すぎると愚痴っていた亜雪は、襲われた機会に自分の門限を雷丸たちと一緒ならという条件で撤廃させたようだ。


「さ、さすがは亜雪様ですね」


 お嬢様はこと交渉事ならギルド一弁が立つ。


「私も雷丸たちともっと一緒に冒険がしたいですからね」

「流石、相棒だぜ」

「とうぜんです」


 褒めるギルマスに、得意げに胸を張る副ギルマス、共に親指を立ててサムズアップ。

 今回の亜雪の衣装はワインレッドカラーの全身フィットのライダースーツを着込んでいる。この状態で胸を張れば大きさから腰のくびれまではっきりと強調している。これは亜雪イメージの夜のお忍びスタイルらしい。


「相手の根城に夜襲で乗り込む、まさに時代劇のようですね」


 やや興奮気味の亜雪、時代劇ラストの「者ども出あえ~!」のチャンバラを想像しているのだろう。


「別に戦いになるわけではありませんが」


 否定する緋桜、興奮気味の亜雪をなだめる。


「でも、相手はトップレベルに近い冒険者の集団ですよ」

「そうだな、慎重にいこう」


 頷き合うギルド正副マスターコンビ。


「ここは結界の外なのでただの一般学生です」


 夜になってもツッコミをやめられない苦労性の御側役筆頭。


「おお、そうだった」


 すっかり忘れていたとこぼす雷丸に、めまいがして額を抑える緋桜、雷丸の暴走だけでも苦労するのに、その相棒である亜雪が加わったことで夜の負担も昼同様に倍になっていた。


 現在雷丸たちがいる場所はギルド本部から坂道を下って二〇分ほど歩いた距離にある商店街の入り口。

 かつては喫茶店であった店兼住居の現在空き家前。

 昼間はバラバラに活動していた家出中の冒険者たちはギルド本部が閉まると、続々とこの空き家にやってきたのだ。ここが彼らの寝泊りしている隠れ家で間違えないだろう。


「それで、全員ここにいるのか?」

「はい、行方不明の生徒全員この建物へ入ったことは確認しています」


 清は入手したリストとも照合して本人だと直接見て確認。

 この喫茶店は古くくたびれてはいるが三階建てで上は住居になっている。余裕で十二人程度が寝泊りするスパースはある。


「内訳は男子十一名に女子一名」

「そこが問題の一つでもあるんだよな」


 未成年の異性が家出して空き家に住み着いている。

 学校にも世間にもバレたら大問題だ。


「いかがわしい行為はされていないようですが、発覚すればギルドに大きなダメージになるのは間違いないですね」


 今日の行動を観察した限りではここに泊まっている学生たちは昼間の冒険の疲れで、帰るなり殆どがすぐに寝てしまっている。

 ネットゲームと違いリアルで一日中山歩きを、時には駆け回って戦闘をしているのだ、夜に騒ぐ体力は残っていないのだろう。知らなければ無人だと勘違いしてしまうくらいこの元喫茶店は静かである。


「素直に家に帰ってくれるといいんだがな」

「ゴネられるかもしれませんね、かといって力尽くもできればやめたいところです」


 力尽くで叩き出すだけなら緋桜一人でも十分すぎるのだが、穏便にすまそうとすればそうもいかないだろう。


「とりあえず、話し合いで解決を目指すと、亜雪」

「はい、もしもの時にために切り札を用意しておきますね」


 この商店街までくれば携帯の電波も拾えるようになる。亜雪は取りだしたスマフォを操作してどこかに連絡を入れた。


「できれば切り札は使いたくないけどな」

「私としては、先日の件で雷丸に恩返しができて大満足です」

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