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現代の忍ギルドは忍ばない  作者: 江山彰
幕間
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四十五の巻『エピローグ的な~』

   四十五の巻『エピローグ的な~』



「あち~~ねみ~~」


 雷丸は太陽光とアスファルトの反射熱にダブルで蒸されていた。


「雷丸様、目をちゃんと開けてください危ないです」


 まだ高校の夏休みが半分も残っている八月中旬。

 学校から緊急登校要請なる物がきていたのに今朝になって気がついた。

 昨日の夜には連絡がきていたようだが、その時間は裏山異世界でリアル傭兵と実弾アリの冒険を繰り広げていた。後片付けが終わることには朝日が昇っており完全な徹夜状態。


 ギルドを偽の任務で出払っていた御側衆が戻りやっと落ち着いて眠れると、布団に入ったところで登校要請を見つけた緋桜に起こされたのだ。

 学校指定の制服に着替え眠い目をこすりながら登校する。

 睡魔に襲われフラフラする雷丸の横を同じ学校の制服を着た緋桜が並んで歩いている。


「クラスに着くまでには、目を覚ましてください」


 同い年なので同学年までは雷丸も理解でる、しかし雷丸たちの通う高校は生徒が多くクラスは十二もあった。十二分の一確率で雷丸と緋桜がクラスメイトになったのには忍の力のなにがしかが働いているのではと勘繰らずにはいられなかった。


「どうかしましたか?」

「いや、このまま三年間同じクラスなのかなって考えてた」

「御側衆筆頭として当たり前のことです」


 否定するどころかなかば肯定されてしまった。


「忍こえ~」

「忍の長が今さら何をいっているのですか」


 冒険者ギルドから学校まで徒歩で四〇分ほど、歩いて行くには多少面倒な距離ではあるが道なりに電車もバスもないのでしかたがない。

 学校最寄りの駅前に差し掛かると、緊急な要請にも関わらず、改札からは制服を着た生徒たちが出てきている。この時期なら旅行や両親の実家などに行って距離的な問題で登校不可能な生徒もいるだろうが通学路にはそれなりの学生がいた。


 休み中の急な呼び出しに文句を言う奴もいるが、半月ぶりに合う友人との会話を楽しんでいる節も見受けられる。

 汗を掻きながらも往来で大あくびをした雷丸の横に、アスファルトよりも太陽光を反射する磨き上げられた輝き放つ高級車が停車した。


「ごきげんよう、雷丸、緋桜さん」


 高級車のパワーウィンドウが下がると中から亜雪が優雅に挨拶をしてきた。だらけている雷丸とは正反対に徹夜明けでも気品は失われていない。ゆっくりとかきあげられた自慢のプラチナゴールドの髪はいつも通りの艶やかさだ。


「学校までご一緒しませんか、冷房がきいていますよ」

「そりゃ助かるぜ」


 遠慮なく高級車に乗りこむ、冷房で冷やされた車内の空気が火照っていた顔を優しく冷ましてくれた。


「時間はまだありますのでゆっくり向かってください」


 御付の運転手に速度を落とすように伝えると、亜雪は広い車内で雷丸の隣に腰を落す。緋桜も当然とばかりに反対側に腰を下ろした。


「なんで二人ともわざわざ横に」

「御側役ですので」

「相棒ですもの」


 雷丸も男である。密室で美少女二人に挟まれて、真っ直ぐに御側役だの相棒だのと言われれば、裏の意味を邪推してしまい冷やされた顔が再び熱を持ってしまう。


「やっぱりいいよな自家用車」


 なるべく意識をしないような会話を試みた雷丸だったが。


「雷丸様にも専用の自家用車があるではないですか」

「コンスゥーはもう二度と乗らないからな」

「心配無用です、暑さなど吹き飛ばしてみせます」

「先に体から魂が吹き飛ぶよ!」


 珍しく会話で緋桜に主導権を取られてしまった。


「緋桜さん、その辺りで許してあげてください。それより、今日の緊急登校のことは何か知りませんか?」

「時間が無かったので簡単な事しかわかりませんでしたが、全校生徒に学校側が聞きたいことがあるそうです。高等部だけでなく中等部にも要請が出されていました」


 緋桜が登校要請を知ったのは雷丸を起こす少し前だろう。それから一時間もたっていない。


「いつ調べたんだよ」

「忍ですから」


 答えになってない答えを返された。忍ならそれくらいできて当然ということだろう。


「学校側が聞きたいこと、中等部までですか、生徒が大きなトラブルにでも巻き込まれたのでしょうか?」

「大きすぎるトラブルはあったが学校には知らせてないからな、俺たちの問題ではないだろう」


 昨晩、銃火器をもった傭兵に追い掛け回されたなど、知られたら登校要請などではすまない。





 車を降りて校門にたどりつくと、急造で作られた手書きの看板が立てられており『在校生は中央大ホールへお集まりください』と書かれていた。

 中央大ホール。中高一貫のこの学校、高等部と中等部の校舎の間に生徒が全員収容できるよう建てられた大型体育館のことである。広さはバスケットコート六面分。


 看板に従い大ホールに訪れた雷丸たち、すでに登校している生徒たちが気の合う仲間同士でグループを作って雑談していた。雷丸は眠いのに呼び出されたことを面倒に感じながらも面白いトラブルが起きないかとつい期待してしまう。


「雷丸様……」

「わかりやすいですね雷丸」


 御側役と相棒には雷丸の今の心境は丸わかりだったようだ。


「しかし、ここには事情を知ってそうな奴はいないな」

「教師陣も混乱中、招集理由は数分後に教頭が説明とのこと」

「そうか、わかったぜ……って清いつの間に!?」


 清が雷丸のすぐ横にいつの間にか現れ、違和感なく会話に混じっていた。

 しかも服装までも違和感がない、完璧に生徒としてこの大ホールに溶け込んでいる。


「その服はどうしたのだ」

「中等部の制服」


 中等部の制服は当然のこと緋桜も知っている。聞きたかったのはそんなことでわないだろう、雷丸の記憶では清はこの学校の生徒ではなかったはず。制服を着ているのはおかしい。


「私が聞きたいのはどうして制服を着ているかだ、確かに情報を取集しろと頼んだが、この程度のことで学生に偽装することはないだろ」

「偽装? 違う」

「どう違うんだ」

「正式、転入」


 清は副将軍の付き人が出す印籠のように中等部の生徒手帳をかざして見せた。

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