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現代の忍ギルドは忍ばない  作者: 江山彰
第三章『戸隠峰の洋館忍者屋敷』
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二十七の巻『金で売れる夢なんて夢じゃない』

金庫完成までの日数を一週間に変更しました。

   二十七の巻『金で売れる夢なんて夢じゃない』



「すんだことで怒る、無駄」


 雷が落ち、雷丸へのお説教が一区切りついた所で清が口をひらいた。


「それはかわっているが」

「だったら早く依頼の話を聞くが、最良」

「釈然としませんが」


 蒸し返しても意味がない事は承知しているので、緋桜は渋々引き下がった。


「どこまで話しましたか」

「ギルドカードが狙われていると」

「そうでした、このギルドカードあまりにも高性能になり過ぎまして、軍事的にも利用できるようで、争い事に敏感な戸井原の嗅覚に嗅ぎつけられたようなのです。それに開発者曰く現行のスマフォよりも一部の機能は、二世代は先にいっているそうで、システムを売りに出せばかなりの金額にもなるそうですよ」

「あの金額でそこまでも物ができたのか!?」


 これにはさすがの雷丸も驚いた。思い起こせばいろいろと高性能なカードである。ギルド本部周辺にいれば無線でのいつのまにか自動充電に、レベルが上がった時などのデータ更新のやり取りがタイムラグ無しなど、現行の機種では実現不可能な機能が搭載されていた。


「戸隠峰の開発チームってすごすぎるな」

「開発チームの中にも雷丸の同類(異世界好き)がおりまして、同好の科学者を集めて資金を出し合い、図らずも雷丸の当初の計画通り上限無しで開発されました」

「すごいのは理解できましたが、狙われるほどの物なのですか?」


 機械に詳しくない緋桜には現行の二世代上と言われていまいちピンとこなかった。


「売り方さえ間違えなければ、確実に数億円単位でお金が動きますね」

「数億ッっ!?」

「おそらく戸井原がつながりのある軍事企業なら、さらにその上に金額を提示してくるかもしれません」

「さらに上ッ!!」


 あまりの金額に喉を詰まらせた緋桜が咳き込んだ。


「御頭様に進言、今すぐ売り払うべき」


 ほとんど会話に加わっていなかった清がズズズと雷丸に強い口調でせまるが。


「いやだね」


 コンマ一秒でのお断り。


 雷丸は数億の金額にも一切の迷いを見せない、こんな時だけ無駄に男前の忍一族の長。


「せっかく夢の冒険者ギルドが動き出したのに、心臓とも言えるギルドカードを売るなんてもったいない、俺は金で夢を売ったりはしない」

「戸隠峰としても、このシステムが一気に市場に流れますと大きな混乱を招く恐れがあるので控えてもらえるとありがたいです」


 進みすぎた技術は受け入れ態勢を整えなければ毒にしかならない。


「そもそも開発したのは戸隠峰だしな、細かいことは亜雪に任せてもいいか」

「雷丸らしいですね。責任を持って管理したいのですが」

「その数億のシステムがさっきのおっさんに狙われていると」


 目的は金か軍事利用かはわからないが、とにかく狙われていること亜雪は考えているようだ。先程戸井原が言っていた『例の件』と何か関係があるのかもしれない。


「開発に関する資料やデータを保管する専用の金庫を現在作らせています。完成しだいギルドカードに関する全ての物や情報を移す予定になっているのですが」


 専用の金庫、戸隠峰開発チームの総意で進みすぎた技術はその時期が来るまで封印するが決定していた。


「なるほど強力すぎる殲滅魔法は対抗魔法ができるまで封印するのと同じ理由か」

「雷丸様、なんでも異世界と絡めないでください」

「狐賀忍軍も精製した毒は解毒剤ができるまで封印」

「清も対抗しないでくれ」


 依頼を聞いているだけなのに緋桜の疲労が蓄積されていく。


「それで依頼の話しですが金庫の完成までに一週間ほどかかってしまうのです」

「それまでの警護が俺たちに依頼したい仕事か」

「はい」

「いいぜ、その依頼引き受けた」


 ギルドカードシステムの警備なら狼弧にとっても無関係でいられる代物ではない。


「警護ですか、やっと忍らしい仕事がきましたね」


 巨大な屋敷の警護、戦国時代の小さな城以上の面積をもつこの屋敷、忍としての力が最大限に活用できる。とこの時の雷丸や緋桜たち忍娘は思っていた。







 依頼を引き受けると決めた雷丸たちはギルドに引き返すことなく戸隠峰の屋敷に泊まり込むことに決めた。

 雷丸がいれば護衛の名目で忍たちを迅速に呼び寄せることができるからである。今週の長護衛役は清が率いる弧乃衛忍軍、狐賀の忍から選りすぐりの三十名が夕方ごろに到着する。

 泊まり込みのために用意された客間は一流ホテルのロイヤルスィートクラスであった、ベッドには天井が当たり前のように付いている。

 その豪華すぎる部屋の片隅で、雷丸は書き上げたばかりの紙を清に渡した。


「このローテーションで回すように伝えてくれ」

「御意」


 ギルド内での役割が書かれたローテーション表、清がギルド本部に連絡を取るため一旦下がっていく。ギルドに残った緋桜の部下である御側衆が中心となってギルドマスター不在のギルドを運営させていくことになっていた。


「夏休みが終わったら俺も学校に行かないといけないからな、ギルマス不在の予行練習だと思えばギルドを任せるのはちょうどいい、緋桜もギルドに戻ってよかったんだぞ」

「いえ、たとえ今週の当番が弧乃衛忍軍だとしても御側役筆頭であるこの私が、雷丸様の側を離れるなどありえません」


 当然とばかりに雷丸の側に控える御側衆筆頭。


「本当は忍らしい警護の任務をやりたかっただけだったりして」

「そ、そんなことはこれっぽっちも考えたことなど、あるわけないです!」


 手を大きく左右に振り全力で否定する。


「それに、清一人では雷丸様の身のまわりのお世話をするのは大変です、ここは普段から慣れている私が残るのは最善の策と言えるでしょう。私は御側役筆頭ですから」

「俺は寝たきりの老人扱いか」

「寝たきりの方が問題を起こさないでくれてありがたいかもしれません」


 名案だとばかりに天井付きベッドを見つめる。柱付きのこのベッドなら縛り付けるのに苦労はないだろう。


「おいおい」

「半分は冗談です」

「半分は本気かよ」


 緋桜は慌てた雷丸を見てクスリと笑った。これくらいの言葉責めは普段の苦労を考えればまだまだお釣り来るお遊びだろう。


「さて冗談はここまでにしましょう。雷丸様、深夜の警備に参加するつもりでしたら今のうちにお休みください」

「よくわかったな」


 雷丸は忍ではない、当然夜の警護には参加する義務はないのだが、めったに体験できないリアルでの警護依頼、参加したいと考えていた。


「このような特殊な依頼で雷丸様が大人しくしているとは思えませんので」


 異世界絡みでなければ、雷丸の事を正確に把握してる緋桜であった。

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