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現代の忍ギルドは忍ばない  作者: 江山彰
第二章『集団戦への参加は、調査です。仕事です。本当です』
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二十三の巻『抱いて、記念写真』

   二十三の巻『抱いて、記念写真』



 冒険譚風報告もクライマックスを語り終え、テンションもだいぶ収まった雷丸が戦利品の話になった所で今度は亜雪のテンションが上昇した。

 テイムした月光熊の子どもが見たいと言いだしたのだ。


「かわいい、動くテディですよ」

「ミュー」


 ギルド本部も結界内なで呼び出すのに障害はなくリクエストに応え召喚したら、その容姿は亜雪のドストライクであったようだ。リトルウルフの時よりも興奮度のレベルが二段階は高く満面の笑みで小熊を両手で包み込むように抱き上げた。


「かわいいです。なぜ私は召喚士を選ばなかったのでしょうか、今からでも転職を、ですがそれではせっかく専用にカウガール衣装を作ってくれたスタッフに申し訳ありませんし」


 義理と誘惑の天秤に悩まされている。


「雷丸、サブ職業のシステムはありませんわよね」

「今の所、その設定は考えていないな」


 一次職すらまだ完全になじみ切っていないのに、二つ目なんてまだまだ計画にも上がっていない。


「そうですか、そうですよね」


 落ち込む亜雪を、抱えられた小熊が慰めるように小さな舌でペロリと亜雪の鼻先をなめた。


「あ~、慰めてくれるのですね。雷丸、次は私と冒険に行きましょう。最強の月光熊に育てるのに協力をいたします」

「あ、ありがとよ」

「夜になると、この鬣が光るのですよね、今晩雷丸の部屋に泊めてもらっていいですか?」

「な、何を言っているのですか!?」


 緋桜は音速を超える速度で雷丸に迫る亜雪との間に自身の体を割り込ませた。


「な、なんてことを、大富豪である戸隠峰のお嬢様が、はしたないですよ!!」

「一応、婚約者ですので部屋のお泊りくらいなら」

「こ、婚約者!?」

「その話まだ残ってたのか。伊古代が廃れた時に無くなったと思ってたけど」

「確かに親戚の一部から婚約の解消との意見はでていますが、雷丸はお爺様のお気に入りでしたので睨みを利かせて抑え込んでくれました、現状は保留中でしょうか」


 解消はされていないが、婚約者と堂々と名乗るには微妙な関係。


羅雪(らせつ)のじっちゃんにはいろいろな話を聞かせてもらったな」


 亜雪の祖父、戸隠峰羅雪は本物の冒険家であり、世界各地の秘境を旅してまわっている今でも現役の冒険者だ。幼い頃の雷丸は羅雪の冒険話を聞くのが大好きであった。雷丸が異世界冒険に憧れるのは羅雪の存在が幼いころに大きな影響を与えていたからかもしれない。


 羅雪も自分の冒険話をキラキラした瞳で聞いてくれる雷丸を孫同様にかわいがっていたことは当時をしる人物なら知らない者はいなかった。


「とにかく、保留中ならダメです、護衛を預かる御側役筆頭として承認できません」

「今週は弧乃衛が護衛の当番」

「関係ありません」

「……いつもよりも緋桜さんが冷たく感じます」

「そ、そんなことはありません。私はいつもと変わりありません」

「素直じゃない」


 意見を切り捨てられた清がボソリとツッコミをいれる。


「私のどこが素直じゃないというのですか!」

「怒鳴る、本音を隠した証拠」


 ギラリと清を睨みつける、一般人なら成人男性でも逃げ出しそうな鋭さを持った眼力を清は軽く受け流された。


「とにかく、雷丸様の部屋への泊は認められません」


 今の話題に口では勝てないと悟った緋桜は話を元に戻す。


「お~い緋桜、スポンサー様なんだから丁寧に対応しようぜ」


 このギルド本部の建物も裏山異世界の土地もすべてが戸隠峰から雷丸に貸し出されている物である。よほどのお願いでもない限り要望は聞き入れる方針のはずだったのだが。


「だからなんですか?」


 緋桜にとっては、雷丸の部屋への泊はよほどのことであるらしい。


「まさか雷丸様は、まだ学生の身分でありながら亜雪様と同衾したいと、そう仰るのですね」

「いや、仰りませんです、学生の身分で同衾などありえません」


 キレイに整った眉を吊り上げて迫る緋桜の迫力に、雷丸は軍人のように背筋を伸ばして否定した。


「仕方がありませんね今回はあきらめます。別のお願いもあるのに緋桜さんに機嫌を損ねられても困りますし」

「別のお願いですか?」

「ええ、ですがその前に、みんなで写真を撮りましょう」

「写真?」

「この子と記念写真ですよ、お泊りができないのであればそのくらいはかまいませんよね」

「写真くらいでしたら」

「せっかくですし皆で写りましょう。雷丸、ほかの子たちも召喚してもらえますか」

「お安い御用だぜ、ついでにシャッターもまかせろ」


 召喚ポーズを決めた雷丸が子狼と子狐を召喚すると事務所に置いてあったデジカメを構える。


「さぁお二人も抱っこしてください」

「ちょ亜雪様!?」

「ッ!?」


 亜雪は緋桜にリトルウルフを清にリトルフォックスを抱えさせる。断る暇もなかった二人は腕の中に収まった小さな存在を意識して彫像のように固まってしまった。

 幻術だとはわかっている。緋桜にも清にもそれはわかっている。だが、そのモデルとなった存在を知っている二人は平常心ではいられない。


「二人とも表情をもっと柔らかくしろよ」

「……努力はしているのですが」

「こ、これが限界」


 緊張でガチガチ、月光熊と対峙した時ですら涼しい顔をしていた緋桜たちが腕の中の小さな存在に対して一切の無礼がないよう全神経を集中させ精神をすり減らしているのが、カメラ越しでも雷丸に伝わってきた。


「しかたないな、撮るぞ」


 何を言っても無駄だと察した雷丸がカメラを構える。

 固まっていた緋桜の喉をリトルウルフがペロリと舐め、緋桜がヒィと悲鳴をあげた所で無残にもシャッターがきられた。


「……撮りなおすか?」

「いえ、けっこうです」


 丁寧にかつ慎重にリトルウルフを降ろすと、すべての力を使い切ったボクサーのように燃え尽きてうな垂れた。

あと1話で2章完結予定です。

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