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ニルヴァーナ -Nirvana-  作者: 夜華カナタ


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33/35

第33話 器の完成

最終フェーズ、始まりです。

 カウントダウンが零を刻んだ瞬間、これまでとは違う感覚が澪を包んだ。


 光ではなく、意識そのものが引っ張られるような、奇妙な浮遊感。


 気づけば、澪たちは白く発光する、輪郭のない空間に立っていた。床も壁も天井も判然としない。まるで、現実とゲームの境目そのものに放り出されたようだった。


「――ここ、今までと違う」


 環が、辺りを見回しながら警戒を強めた。


「森でも、廃墟の街でも、廃教会でも、施設でもない」佐伯が、低く唸る。「一体どういう場所や」


 その時、澪の頭の奥で、何かが軋んだ。


 〈……澪〉


 聞き覚えのある声が、遠くから響いてくる。


 〈私の力、ちゃんと役に立った?〉


 小春の声だった。


 〈――あんた、まだそんなこと気にしてるの〉


 続いて、レイの声。


 澪は、思わず頭を抱えた。二人はもういない。それなのに、その声が、確かに自分の中から聞こえてくる。


「――澪!」


 環の声に、澪は我に返った。


「大丈夫?顔色、悪いよ」


「……なんか、頭の中に、色んな声が」


 その言葉に、全員の表情が強張った。


 〈施術の準備が、整いました〉


 無機質な声とともに、空間の奥に、御堂の姿が浮かび上がった。今度は、通信映像ではない。本人が、そこに立っていた。


「――ようこそ、最終段階へ」


「あんた……!」


 大和が、拳を構えて前に出る。


「焦る必要はない。ここでは、私に危害を加えることはできないよ。この空間自体が、私の管理下にあるからね」


 御堂は、澪へと視線を向けた。


「水無瀬澪。君の中には、これまで失われた者たちの、可能性の残滓が蓄積している。小春、レイ、そして環の代償――すべてが、君という器の中に沈殿している」


「――やめろ」


 澪の声が、震える。


「これから、それを一つの形に凝縮させてもらう。完成すれば、君はもう、無数の願いを内包した、完全な存在になる」


 御堂が、静かに手をかざす。


 その瞬間、澪の視界が激しく歪んだ。


 頭の中で、小春の声、レイの声、そして数えきれない断片が、一斉に渦を巻き始める。自分が誰なのか、その輪郭が急速に薄れていくのを、澪は感じた。


「――澪、しっかりして!」


 環の声が、遠くから聞こえる。


「澪ちゃん、俺たちの声、聞こえてるか!」


 佐伯の声も。


「澪さん!」


 陽と大和の声も。


 だが、その声さえも、渦の中に飲み込まれていくようだった。


 自分は、誰だったのか。


 何のために、ここにいたのか。


 答えが、少しずつ、遠ざかっていく。


 崩れていく意識の中で、澪はそれでも、必死に何かにしがみつこうとしていた。

第33話、いかがだったでしょうか。


ついに最終フェーズが始まりました。御堂の目論見通り、澪の意識が危険な状態に陥ってしまいました。次話からは、いよいよ最終クライマックスに突入します。


ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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