第28話 生きていた男
あの人との再会です。
施設の奥、鉄格子で仕切られた一角を見つけたのは、偵察に出ていた陽だった。
「――みんな、来て!誰かいます!」
その声に、全員が駆けつける。
薄暗い監禁室の奥、痩せこけた男が、壁にもたれるようにして座り込んでいた。
「――獅子堂?」
環の声が、驚きに震えた。
森で影の群れの囮になって消えて以来、姿を見せていなかった男が、確かにそこにいた。頬はこけ、目の下には濃い隈があったが、間違いなく獅子堂だった。
「……お前ら、まだ生きてたのか」
獅子堂は、力なくそう吐き捨てた。かつての威圧的な雰囲気は、見る影もなかった。
「その台詞は、こっちの言葉です!」
大和が、鉄格子に駆け寄った。
「無事で……いや、無事じゃないですけど、生きてて良かった!」
大和の声に、獅子堂は一瞬、戸惑ったような顔をした。
「――お前、そんな顔するようになったのか」
「獅子堂さんのおかげです」
その言葉に、獅子堂は苦笑いを浮かべ、そして観念したように口を開いた。
「森で囮になった後、しばらく逃げ回ってたが、力尽きて捕まった。それから、ずっとここにいる」
「捕まって……何をされたんですか」
澪の問いに、獅子堂は自嘲するように笑った。
「色々だ。検査、採取、実験。まるで道具みたいな扱いだった」
その言葉に、佐伯が眉をひそめた。
「――御堂って男、知ってるか」
「知ってる。あいつがここの責任者だ」
獅子堂は、低く続けた。
「あいつの目的、俺にもよく分からんが……特定の参加者のデータに、異様なくらい執着してた」
「特定の参加者?」
「名前までは分からん。だが、何度も『繋がる力』がどうとか、口にしてたのは覚えてる」
その言葉に、澪の胸が、鋭く痛んだ。自分の能力を指しているとしか思えなかった。
「――他にも、参加者が捕まってる可能性は?」
環の問いに、獅子堂は頷いた。
「たぶんな。俺の他にも、何人かここに連れてこられた気配があった」
その情報に、澪たちの間に、新たな緊張が走った。
「――ここから出す方法、考えなあかんな」
佐伯が、鉄格子の鍵穴を確かめながら言う。
「頼めるか」
獅子堂の声には、これまでの傲慢さの代わりに、素直な弱さが滲んでいた。
「もちろんです」
大和が、力強く頷いた。
「今度は、俺が守る番です」
その言葉に、獅子堂は驚いたように大和を見つめ、それから、初めて心から安堵したような表情を見せた。
「――変わったな、本当に」
鉄格子の向こうから、施設のどこかで、けたたましい警報が鳴り始めた。
「――澪ちゃん、逃げる準備しといたほうがええかもしれん」
佐伯の声に、緊張が走る。
新たな脅威の予感を残しながら、この物語は、まだ終わりが見えない道のりを続いていた。
ついに獅子堂との再会が果たされました。彼が抱えていた情報は、澪の運命に深く関わるものになりそうです。次話は、施設からの脱出劇になる予定です。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。




