第26話 言えなかったこと
隠された真実を、一つずつ明かしていきます。
「――誰から話す?」
拠点として与えられた、白い小部屋の中。環が、重い沈黙を破るように口を開いた。
「言わなきゃ脱落する、なんて脅されて黙ってるのも、癪だしね」
「私、話します」
意外にも、真っ先に手を挙げたのは陽だった。
「私、実は――ここに参加した理由、ちょっと変なんです」
陽は、少しだけ苦笑いを浮かべた。
「私、現実だとわりと普通に、両親にも友達にも恵まれてて。希死念慮とか、そういうのとは無縁だったんです」
「――え?」大和が、驚いたように陽を見た。「じゃあ、なんで」
「双子の姉が、参加者だったんです」
陽は、静かに続けた。
「姉は昔から、生きることに苦しんでて。ある日突然、Nirvanaに参加するって言い出して。私、止めようとしたけど聞いてもらえなくて」
「――それで?」
「姉が参加する少し前に、私が代わりに応募したんです。姉のIDを使って」
陽は、そう言って肩をすくめた。
「馬鹿でしょう。でも、姉を一人で行かせるくらいなら、私が代わりに戦った方がましだと思って」
その告白に、全員がしばらく黙り込んだ。
「――それ、隠された真実として、十分すぎるくらいだね」環が、静かに呟いた。
〈対象者:遠野陽。真実の開示を確認〉
システムログが、あっさりとそれだけを表示する。誰かの重い過去が、無機質な一行に変換される様子に、澪は言いようのない気持ち悪さを覚えた。
「――次、俺も」
大和が、震える声で手を挙げた。
「俺、最近ずっと、何か忘れてる気がしてたんです。うまく言葉にできなかったんですけど……多分、それも隠された真実、なんですよね」
その言葉に、佐伯の肩が、わずかに強張った。
「思い出せないことがあるって不安なのが、俺の隠された真実です。情けないですけど」
〈対象者:大和。真実の開示を確認〉
システムログが流れる中、大和は、佐伯の様子がおかしいことに気づいた。
「――佐伯さん?」
佐伯は、しばらく俯いたまま、何かを堪えるように黙っていた。
「大和」
やがて、佐伯が顔を上げた。
「お前が忘れてること、俺は知ってる」
大和の目が、大きく見開かれた。
「――それだけやない。お前が、なんで俺にとって特別なんかも、まだちゃんと話してへんかった」
佐伯は、深く息を吸い込んだ。
「今から話す。ちゃんと、全部」
その言葉に、部屋の空気が、一気に張り詰めた。
第26話、いかがだったでしょうか。
陽の隠された過去、そして佐伯がついに大和に何かを打ち明けようとするところで、次話への引きとしました。それぞれの隠していた真実が、少しずつ表に出てきます。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。




