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ニルヴァーナ -Nirvana-  作者: 夜華カナタ


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24/25

第24話 誰も欠けずに

誰も欠けずに終えられた、初めてのフェーズです。

崩れかけた教会の中に、朝の光が差し込んでいた。


〈第3フェーズ、終了を確認〉


〈生還条件判定を実行します〉


〈水無瀬澪:生還条件達成〉

〈七瀬環:生還条件達成〉

〈遠野陽:生還条件達成〉

〈大和:生還条件達成〉

〈佐伯:生還条件達成〉


システムログが流れるのを、五人は無言で見守っていた。


「――全員、生き残った」


陽が、絞り出すような声で呟いた。


「小春さんが脱落してから、初めてですよね。誰も欠けなかったの」


その言葉に、誰も、すぐには何も言えなかった。


これまでの二つのフェーズでは、必ず誰かを失ってきた。だから、五人揃って迎えるこの朝が、どこか現実味を持たないもののように感じられた。


「――終わったんだ、今回は」


大和が、そう言ってから、少し照れたように笑った。


「なんか、実感が湧かないですけど」


「私も、正直まだ信じられない」


環が、自分の手のひらを見つめながら答えた。あの力は、もう戻らない。それでも、その声には、悲愴さよりも静かな落ち着きがあった。


朝食を分け合う間、佐伯はずっと大和の様子を窺っていた。やがて、意を決したように口を開く。


「――大和、話がある」


「なんですか?」


「森で影に襲われた時、俺が庇うたやろ。あの時の代償で……お前の記憶、一部消えてしもたんや」


大和は、一瞬きょとんとした顔をした。


「……そうだったんですか」


「悪かった。黙ってて」


佐伯が頭を下げようとするのを、大和は慌てて止めた。


「待ってください、佐伯さんは謝ることないです」


「せやかて」


「俺、佐伯さんに庇ってもらって、生きてます。それで何か忘れたとしても……それは、佐伯さんのせいじゃないです」


大和は、少し困ったように笑った。


「それに、忘れたことが何なのかも分からないのに、悲しみようがないですよ」


その言葉に、佐伯はしばらく黙り込んでから、ようやく小さく息を吐いた。


「――お前、ほんまにええ奴やな」


「佐伯さんに似たんですかね」


「調子乗るな」


そのやり取りに、澪と陽が、思わず小さく笑った。重かった空気が、少しだけ和らいでいく。


昼を過ぎた頃、システムから帰還のカウントダウンが表示された。この教会での時間も、もうすぐ終わる。


夕方、澪は一人、崩れた祭壇の前に立っていた。


〈外部接続を検知しました〉


〈メッセージ受信:1件〉


視界に、見慣れた文字が浮かぶ。


「よく、ここまで来たね。次は、これまでとは違う段階に入る。覚悟しておいて」


差出人の情報は、やはり無かった。だが、その言葉の奥に、これまでとは違う緊張が滲んでいるのを、澪は感じ取った。


「――千夏さん」


呟いても、返事はなかった。


ただ、そのメッセージだけが、しばらく視界の隅に残り続けていた。


〈次フェーズ:開始まで残り 24:00:00〉


新しいカウントダウンが、静かに始まる。


誰も欠けずに終えられた、初めてのフェーズ。


だが、千夏の言葉が予告する「これまでとは違う段階」が、どんな形で自分たちの前に現れるのか、澪にはまだ、見当もつかなかった。


===== 後書き =====

第24話、いかがだったでしょうか。


誰も脱落せずに終えられたのは、この物語では初めてのことでした。


次からは、いよいよ「真相」編に入ります。玲司の真意、千夏の告白、佐伯の正体、そして獅子堂の消息――積み重なった謎が、少しずつ明らかになっていく予定です。


ここまで読んでいただき、ありがとうございました。


誰も脱落せずに終えられたのは、この物語では初めてのことでした。


次からは玲司の真意、千夏の告白、佐伯の正体、そして獅子堂の消息――積み重なった謎が、少しずつ明らかになっていく予定です。


ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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