総括
「なるほど、そーゆーことがあったのね。うむ。わかった」
というと、会田鉄男は紙フキンで口を拭いた。
「でも、あんまり、ふじわらしのぶさんのエピソードと、俺のエピソード関係ないような……。何か、書くことないから無理やり水増ししてないか」
「いや。これは非常に大切なエピソードであり、何ならこの物語の主題でもあるほどなんだ。つまり、創作の起源とは何かということと、深く関係しているし、ある種のメンタルヘルスの悪さと、創作ってすごく結びついているんだよ。そして、小説家として、俺は、お前さんの四代前まで遡って、一言、総括の言葉を贈ることができるようになれたね」
「ふうん。何」
「ま、総括というよりも、あるある、ってことになるけどね。だが、このあるあるがわかることによって、お前さんの長年のトラウマというか、家族たちの生命の燃焼が見事に、一言で収納箪笥の中にキッチリ入れるように、区分けされてゆくと思うよ」
「ふうん。で、その総括って、何」
「それを、言いたいんだけど、もうちょっと待ってくれ。俺の中でも心の準備がある。果たして、この答えで合っているかどうか。合っていないかどうか。合っているなら、どう合っているのか。どこに向かっているのか。どういうシステムが作動するのか。未来への意義などを今、頭の中で考えている」
「つまり、あるある、言いたいってことか」
「うん。言いたいけど、もうちょっと溜めたほうがいいかもな。会田の家系に特徴的なのは、ある種の天才性だと思うんだよ。病気と天才は紙一重。と言うけど、まさに、統合失調症者の社会的な役割の意義があると思う。ある人が言っていたが、炭鉱のカナリアに近い。真っ先に、突飛惜しもない行動を取って、周囲に警告を発するんだ。それが、多分、血筋としての統合失調症者の宿命というか、役割なんだな。天才とは、魁る。ってことだからね。そして、血筋として、一つの傾向があるわけでしょ!あんたの家系には。一つのメッセージがあって、それを受信したわけよ。それが、今、あるあるとして、俺の口から出るってことだ」
「はい。わかったから、早く言えよ」
「じゃあ。身構えてくれよ。ショックアブゾーバーを、お前の心中に形成して、聞いてくれよ。では、言います」
私は、しばらく目を閉じてから深呼吸をして、カッと目を開けてあまり客のいない店内で、そんなに大きくならないような声で、言い放った。
「アメリカに渡りがち!!」
会田鉄男は、その言葉を目を閉じて噛み締めて、そしてこう答えた。
「薄」




