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私小説 2・0  作者: 角筆夫
会食
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兄貴


 で、鉄男の兄貴が統合失調症で、家の中で一人で喚いているのであった。鉄男や家族は、兄の振る舞いに散々悩まされたのだという。確か夜中に、眠れないので困ってしまって家から出て自動車の中にいた鉄男から、電話があったこともあった。もともとは、高校受験に大失敗して、浪人するハメになり、それが元で発狂したのだという。兄貴は、クラスの中で、自分の頭の良さを散々自慢したのだという。もう、そのくらいから発病していたのかもしれない。


 それからは、部屋に引き篭もって、喚き続ける日々だったのだとか。喧嘩っ早い鉄男とも何度も殴り合いの喧嘩をしたのだという。結局、精神病院に入院したのであるが、電気痙攣法みたいな治療法があって、それをやったのであるが、彼には合わなかったらしく、どんどん身体の調子が悪くなり、ついには死んでしまったのだという。それでも、三十歳くらいまで生きていたような記憶が私にはある。


 それから、数年後、鉄男の母も逝ってしまうのであった。ある朝、風呂の浴槽に入って死んでいたのだという。晩年、半分痴呆症のようになっていたのだという。それもこれも兄貴の介護疲れということもあったのだろう。生前、高校生の時に、私は鉄男の母と会ったことがある。何か疲れているような感じを受けた。それが何であったかはよく覚えていない。


「お前さんの家系を考えると、むしろ、お前が小説家をやった方が良いのかもしれないなあ」


と、私が言うと、鉄男は笑った。


「いや。俺は本を読むのが苦手なんだよ。字を追いかけると眠くなってしまう。お前の小説だって、俺の関係するところじゃないと読めないからな」

「まるで、ふじわらしのぶさんじゃないか」

「あ!似ているかもな。お前の小説によく出てくるから、知ってあるつもりになっているが、多分、彼も統合失調症の家系か、本人が統合失調症なんだろうな」

「あの小説とか、エッセイとか読むと、すごくわかるな。なんて言うか、未来派だからな。流石に、俺もあそこまでハッチャケルことはできないな」

「お前さんの小説は実は、論理的だからね。あそこまでの飛翔は無理だろうなあ」

「ヘルダーリンの『ヒューペリオン』を思わせるよな。彼の作風は」

「うん。まあ、でも、身内の人じゃないとあれは、何が描いてあるかわからんな。うちのオヤジの絵とそっくりだ」

「絵って深いよね。いや、芸術全般が、ってことかな」


 と私は天井を見上げた。天使と半裸の男女が空を舞う、ミケランジェロみたいな天井画が描かれてあった。今や、普通のレストランでもそういう洒落た装飾の天井があるのだ。


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