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13.怯える富豪と見える嘘⑨シゴデキですわ!

ドミニク・クローヴィス→富豪の老人。

ロワク・モラン→コンサル。

ヘレナ→屋敷のメイド。老人の交際相手。

ライアン→ヘレナの息子。

ギョーム→屋敷の医者。


ギルベルト・エブァンス→ブリジットの兄。シスコン。

ルカ→ギルベルトの従者。

メリィ→ブリジットの専属メイド。

リオネル・モンフォール→リオ。 セルジュの後輩。真面目。


 ブリジットは早めの夕飯をとった後、お風呂に入った。ギルベルトから帰りが遅くなるので先に夕飯をたべるようことづかったからだ。


 お風呂から出たらギルベルトが噂の懐中時計を手に入れたとメリィから聞いた。



 まあ?!なんて仕事が早いの!!さすがお兄様!!



 メリィとともに大慌てで髪を乾かしギルベルトの部屋に向かった。


「お兄様。入ります」


 ギルベルトに入室の許可をもらい部屋に入った。


「はやいな」


「人を怯えさせた懐中時計を見てみたくて!」


 ブリジットはワクワクを隠しきれない。

 ギルベルトは書類を見ていたが、一旦顔を上げルカに質屋に出したと言われている懐中時計を持って来させた。ルカがうやうやしく新聞に包まれた懐中時計を持ってきた。


「メリィから報告があった。ブリジットが懐中時計に興味を持ったと。ルカがすぐに質屋から問題の品を押さえた」


 ルカが片目をウインクする。問題の品をテーブルに置き、ギルベルトの手にしていた書類を引き取る。


「ライアンが質屋に持ってきた状態のまま保管してたらしいっす。包まれていた新聞もそのままらしいっす」

 

「まあ、完璧な状態ね!」


 ブリジットは感嘆の声を出す。


「質屋の親父も品を見て店先にだすか直すかどうしようか悩んでいたみたいです」


 懐中時計は数枚の新聞紙に包まれていた。


「うーん?」


ブリジットはテーブルに置かれた懐中時計をしげしげと見た。

 包まれた何枚かの新聞紙を取り払い懐中時計をだし手に取った。懐中時計は銀色で片手に収まる程度であった。



 時計自体は傷ひとつない。でも針だけが止まっている。懐中時計には恐ろしい絵やひとを惹きつけるような宝石もない。ただの特に特徴のない懐中時計た。


ブリジットは懐中時計の蓋にマークがあるのを発見した。


「このマーク、紋章ですかね?どこかの貴族の懐中時計ですかね?」


 ブリジットはギルベルトに見せるようにマークを指差した。ギルベルトは頷き同意を示す。


「たぶんな。覚えがないから廃止になった貴族かもな」


「この懐中時計が庭に投げ込まれてからドミニクはおそれはじめたんですよね?この懐中時計に恐れる要素があるのかしら?」


 ブリジットは浮かんだ疑問をギルベルトに投げかける。


「さあ。ドミニクには意味があったんだろうな」


ブリジットは出口の見えない問いと懐中時計の凡庸さにため息を吐く。

 そして、何気なくブリジットは包まれた新聞紙を手に取り新聞紙のしわを手で伸ばした。

 くしゃくしゃの新聞紙は三枚。最近の日付だった。新聞紙を並べてブリジットはあることに気がついた。


「あら。おかしいわ。この二枚は発行元、日付が上に表記があるのに、この一枚はない」


 日付表記のない問題の一枚はくしゃくしゃで水で大半がにじんでいた。だか、紙の上に日付けが書くところに文字自体がない。滲む以前の問題だ。

 一部の記事の内容だけが読み取れた。監獄から囚人が脱獄したという内容だった。


《数名の囚人が脱獄した。当局は脱獄ルート、囚人の捜索中。最も重い刑の囚人の名前はナバリ。強盗殺人の罪で終身刑で服役中であったが逃走。他にも凶悪な囚人たちが野に放たれてしまった。依然どこに身を潜めているか不明。皆さん最近の戸締りを気をつけましょう。治安が戻るまでは充分警戒を》


「お兄様、この記事なにか意味があるのかしら?」


 ブリジットがギルベルトに記事を渡す。ギルベルトは問題の新聞を手に取り確認する。


 その際ギルベルトは何かに気付いたのか眉を上げた。問題の新聞を持っている手と反対の手で他の二枚の新聞紙を親指と人差し指で触る。そしてギルベルトは判断を下した。


「この監獄の新聞はほかの新聞に比べて紙が厚いし日付、発行元が書いてないことからこれは偽の新聞かもな」


 ブリジットは目を見開いて驚く。首を片方に向けて困惑気味に答えた。


「それはなんのために?」


「わからない。でもドミニクにはわかった。彼には秘密があるのかもな。今回の事件は彼の秘密を解かなくては真相に辿り着けない気がする」


 ブリジットは口元に手を当て考え込む。



 まだまだわからないことばかり。

 懐中時計は呪いのアイテムではない。凡庸そのもの。そして包まれた新聞が偽新聞。


 この二つはドミニクにとって何を意味している?


 けれど、この懐中時計も偽新聞も、偶然一緒に包まれていたとは思えない。

 ドミニクに何を連想させたの?





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