11.怯える富豪と見える嘘⑦ロワク
ドミニク・クローヴィス→富豪の老人。
ロワク・モラン→コンサル。
ヘレナ→屋敷のメイド。老人の交際相手。
ライアン→ヘレナの息子。
ギョーム→屋敷の医者。
ギルベルト・エブァンス→ブリジットの兄。シスコン。
ルカ→ギルベルトの従者。
メリィ→ブリジットの専属メイド。
リオネル・モンフォール→リオ。 セルジュの後輩。真面目。
メリィはブリジットの手元の土を凝視しながら小走りで駆け寄った。
「見てメリィ!四つ葉のクローバーよ!」
ブリジットは嬉しそうにクローバーを丁寧に抜く。メリィは思わず足を取られブリジットの近くで転んだ。
「イタタタ。ブリジット様、今それですか……」
メリィが地面に手を置き立ちあがろうとした、その時、メリィは発見した。手の近くに足跡があるのを。
「ブリジット様、見てください!足跡です!」
その足跡はぬかるみを踏んでいたのでくっきりと残っていた。ブリジットは足跡に手のひらを使って測定する。
「平均的な大きさ、手のひら一枚半くらいね。でも投げ入れた犯人のものかしら?」
ブリジットは屋敷の外壁を見上げた。
「犯人は外壁から投げ入れた可能性もあるわ。敷地に入っていないかも」
ブリジットはあらゆる可能性を探る。
「確かに。しかし一応この足跡も証拠の一部としてください」
メリィは納得したが、ブリジットに食い下がる。
「あのー」
後ろから恐る恐る声をかけてくる人物がいた。メリィとブリジットはびっくりしてお互いの手をひしと合わせた。急な声かけをしたのはロワクであった。
「その足跡、私です。先ほど足を取られたので」
バツが悪そうにロワクが頭を掻く。
「へ?」
メリィが鳩が豆鉄砲を食ったような顔をした。
「あらあら、メリィ。その足跡は関係なかったことが判明したわね」
ブリジットがおかしそうにはなし、メリィはロワクに食ってかかる。
「ま,紛らわしいことしないでください!!なんでこんなとこにいるんですか?!」
「すみません。部屋にこもっていると気が滅入るので、友人への返事を考えながら木陰で休んでいたんです」
ロワクは手元にある便箋を握りしめる。
「あら、日光浴がてらですね。メリィも自分の間違い分かったのだから、もうロワクを責めては駄目よ。メリィに変わって謝るはごめんなさいね」
ブリジットは気安い感じで謝る。
「べ、べつに当たってません」メリィは顔を赤める。
「いえ、紛らわしいところにいた私がいけなかったんです。すいません、びっくりさせましたよね」
ロワクが恐縮したようにブリジットとメリィに謝る。メリィがはっとしたような顔をしたあとロワクに謝った。
「私もすいません。少し当たってしまいました」
メリィは勢いよくロワクに礼をした。
「素直に謝れたわね。メリィはえらいわ」
「えへへ……ありがとうございます」
ブリジットに褒められたメリィは嬉しそうに微笑んだ。ロワクがその光景をまぶしそうに見てつぶやいた。
「ブリジット様のような間違いをしっかり正して教えてくれる方が近くに一人でもいてくれたら……少し違った人生だったのかもしれません」
「どうしたの?」ブリジットはロワクの横顔を見た。
「文通は学生時代の友人なんですが、文通は仕事の相談ばかりで」
「頼りにされているのね」
「彼も社会に揉まれてしっかりとしているのですが、自信がないみたいです。あの頃、もっと私が勉強を教えていれば彼に自信をつけれたと思うことがあるんです」
ロワクは一瞬だけ目を伏せた。
「ロワクは優しいのね。でも人生なんて、どんな縁が未来を変えるか分からないものよ…ところでその文通相手って女性?」
「男性です!」
「あら?そんなはっきりいうなんて逆に怪しいわ」
ブリジットは口元に手を当て含み笑いをする。
ロワクって真面目よね。文通相手が女性だったらアプローチされてるんじゃない?
人の恋路って聴くとワクワクするのよね。ロワクは鈍そうだし興味深いわ。
ブリジットはチラリと文通の紙面をみた。差出人は男性の名前だった。
「本当に男の人なのね。つまらない」
ブリジットは急速に興味をなくなったので早々に屋敷に戻った。
懐中時計のなごりさえなかったけど、四つ葉のクローバーを手に入れたからまあいいか。次の手掛かりを探しに行きましょう。
ブリジットは四つ葉のクローバーを大切そうにハンカチで包み手のひらに乗せた。
*
屋敷に戻ると、リオが戻っていた。ちょうど玄関で鉢合わせた。
「あらリオ、戻ったのね」
リオが嬉しそうにブリジットの近くに迫る。
「はい!この土地は平和なので事件がほとんどありません。今回は事件にかかりっきりでいいと言われました!」
「そう」
「ブリジット様一緒に捜査しましょう。いやー、街でブリジット様を見かけた時からブリジット様に声かけたかったんです!」
リオは嬉しさを隠せない様子で身を乗り出した。
「うん?」
ブリジットは街で感じた視線を思い出した。
待って。もしかしてあの街での視線は…
「もしかして街で感じた視線はリオ?」
「はい!ブリジット様と一緒に捜査できるなんて光栄です。ブリジット様とまたお話ししたいと思ってたんです!」
「リオは人懐っこいのね。じゃあ早速ヘレナに聴取しましょう」
「ヘレナさんに?」
ブリジットはヘレナに聴取する事情を話した。リオはふんふんと頷く。
「なるほど。さすがブリジット様。 セルジュさんが鋭いと言っただけある」
リオがブリジットに尊敬の眼差しを向ける。
「わかりました。聴取しにいきましょう」
リオはブリジットの手を引いていく。メリィがその光景を渋いものを食べたあとのような顔をして後を追った。
「ブリジット様、リオは懐いているのではなくアプローチしてるのでは」
後ろでメリィがぶつぶつつぶやいていたが、リオとブリジットの耳には入らなかった。




