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9.怯える富豪と見える嘘⑤ライアン

ドミニク・クローヴィス→富豪の老人。

ロワク・モラン→コンサル。

ヘレナ→屋敷のメイド。老人の交際相手。

ライアン→ヘレナの息子。

ギョーム→屋敷の医者。


ギルベルト・エブァンス→ブリジットの兄。シスコン。

ルカ→ギルベルトの従者。

メリィ→ブリジットの専属メイド。

リオネル・モンフォール→リオ。 セルジュの後輩。真面目。


 ライアンはギョームと共に応接間入ってきた。ライアンは入ると同時に身の潔白を訴え始めた。


「俺じゃない!俺はキッチンにいた。キッチンにいたのは皆が把握している」


「ライアン、落ち着いて。話を聞くだけよ。あなたが犯人とは思ってないわ」


ヘレナがライアンに近づき背中を撫でる。ギョームが肩をすくめる。リオがライアンに詳しく聞いた。ブリジットもうんうんと頷く。


「関係者を集めた時、なぜ応接間に来なかったのですか?」



 ほんとそうよ!関係者は集まれと言われていたのに。あえて、集まらないなんて後ろ暗いことがありますと言っているようなものよ。



 ライアンは不貞腐れたような顔をし怒鳴る。


「俺は朝の仕込みをしていた。なので関係ないと思っていた。なんでも悪いことは俺だとお前らは思っているんだろ!」


 ライアンはギョームとロワクを指差す。


「昔の俺とは違う!母さんの足を引っ張らないと言っているだろ!!」


「どうだかな?お前の小さい頃から俺たちはお前を知っている。鼻垂れ小僧のときからな。

ロワクはライアンによっていじめられていた、お前はロワクを井戸へ突き落としたこともあるだろう!!」


 ギョームが苛立ちを込めて吐き捨てる。ロワクは一瞬固まった後、無言のまま眼鏡の端の蔓を触る。ライアンは呆れたようにぼやく。


「ロワクには謝った!昔のことをいつまで言うんだ!ギョームじいさんも昔の俺の悪戯なんてかわいいものだよ!いつの話だよ」


 ライアンの額には汗が滲む。

「わしは忘れんぞ!!お前の被害にあった子達が何人もいたことを!!」


 ギョームが拳を握りしめた。ブリジットは言い合いをどうすることもできず話が収まるのを待つ。



 ギョームは私怨が含まれてそう。一体ライアンは何をしたんだろう?



「信用できませんから」ロワクがライアンに吐き捨てる。


「ギョームさん落ち着いて。私がいい聞かせますので」


  ヘレナが青ざめながらライアンを背中に隠しかばう。ライアンの身体は大きくヘレナの体では充分隠しきれていない。

 ギョームはライアンを睨む。言い合いを収めるように、ギルベルトがパンと手を叩き空気を一変させる。


「さて、今回はドミニクについてだ。ライアン、ドミニクは君を恐れていたのか?」


「ライアン、ギルベルト様の質問に答えろ」


ルカがライアンに圧をかける。ライアンはギルベルトの返答に対して丁寧な言葉を使おうとしている。


「ドミニク様は恐れていた!!で、でも俺ではない!いえ、俺ではありません!何かに怯えてたんだとお、思います!」


「ほう。何に?」


ギルベルトが興味深そうにライアンを見つめた。ライアンはギルベルトとルカに気圧され、吃りながら答える。


「わ、わ、わかりません」


 ブリジットはライアンの言葉に文字が浮かばないのを確認した。



 嘘じゃない。


 なら、ライアンですら知らない恐怖がドミニクを追い詰めていた。じゃあドミニクは何に恐れていたの?



 ライアンは急に思い出したのか叫んだ。


「そうだ!ドミニク様は最近誰かにつけられていると言っていた!」


「刑事さん。確かにつけられている監視されているから夜も寝られないといっていたので、ドミニク様に睡眠薬の処方をだしました」


 ギョームも思い出した事柄を報告する。

 そしてまた思いついたのか、罰が悪そうに新しい情報をリオに伝えた。


「ここ数日前だ。ドミニク様の部屋をあらされたのは!」


 リオが眉間に皺を寄せる。


「部屋を荒らされた?被害届は出ていないはずです」


「何も盗られていないから被害届は出さないと言っていました」


『何も盗られていない』

 浮かぶ言葉。


 ヘレナの嘘?


 ブリジットは浮かんだ言葉に胸の内で疑問を抱く。



 何を盗られたの?でもなぜかドミニクは被害届を出さなかった…そしてヘレナは盗られていることを知っている。



 会話は進んでいく。


「そうだ!ドミニク様が怯え始めたのは庭に物を投げ込まれた時からだ! 

ヘレナどうして言わないんだ?老人のわしはすぐ忘れてしまうが君はしっかりしているから覚えているだろう」


「ドミニク様があまり騒ぎ立てないでくれと言われましたから」


 ヘレナがドミニクの様子を話す。


「ドミニクが捨ててくれ、この話は二度としないでくれとすごい形相で言われました。

私はドミニクに何かが取り憑かれたのかと思い怖くなりすぐに捨てました」


 ヘレナがその時のことを思い出したのか体を震わせる。思いだしても恐ろしいようだ。ギョームとヘレナの間に入り、リオがヘレナに尋ねた。


「つまり嫌がらせが続いていたということですね。投げられたものはなんだったのですか?」


「新聞に包まれた懐中時計です。捨ててからは私はドミニクの様子も落ち着いたと思ってたのです」


 ブリジットは懐中時計に興味がわいた。



 懐中時計?呪いの懐中時計?形相が変わるなんて。それとも時刻に意味がある?だれかの遺品?


 ああ、だめだめ。好奇心は猫をも殺すというもの!でも少しだけ見てみたいわ。


 だって呪いのアイテムってひとを惹きつける要素もあるもの!!不謹慎かしら?でもごめんなさい、どうしてもどうしても止められないわ!好奇心が収まらない!!噂の懐中時計見てみたい!!



 ブリジットの変化に気づいたメリィが心配そうに制した。


「ダメですよ、ブリジット様。危ないですから」

「バレたか。でも見てみたいわ」


 ブリジットはメリィをチラリと見て、いたずらっ子のように舌を出した。





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