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7.怯える富豪と見える嘘③事件?!

ドミニク・クローヴィス→富豪の老人。

ロワク・モラン→コンサル。

ヘレナ→屋敷のメイド。老人の交際相手。

ライアン→ヘレナの息子。

ギョーム→屋敷の医者。


ギルベルト・エブァンス→ブリジットの兄。シスコン。

ルカ→ギルベルトの従者。

メリィ→ブリジットの専属メイド。

リオネル・モンフォール→リオ。 セルジュの後輩。真面目。

 

 ブリジット一行は、朝早くから噂の近隣の老人を訪れた。問答無用で屋敷へ押しかけると、執事に主人を呼ぶよう告げ、ブリジットたちは玄関ホールで待った。執事の叫び声が屋敷に響いた。


「ご主人様!!ご主人様が!!」


 ギルベルトが叫び声に反応し、部屋へ駆け出した。ルカはギルベルトのあとをすかさず追う。ブリジットもだいぶ遅れて追いかけた。メリィがアシストしてくれた。


 ブリジットが老人の部屋に入った際、老人はベッドぎわで倒れていた。血の吐いた跡があった。苦悶に顔をゆがめたまま、微かに体を震わせていた。年配のメイドが涙を流し老人に縋りつきながら必死に呼びかける。近くには腰を抜かした執事がいる。


「ドミニク様。目を開けてください。ドミニクー!!」


ギルベルトが老人に近づき、息を確かめ、ルカに指示を出す。

「毒物を取った可能性がある、ルカ。水だ。吐かせるんだ」


「ギルベルト様、水です」


 ルカがすかさずギルベルトに水差しを渡す。ギルベルトは老人の口をこじ開け水を流し込んだ。老人は水を吐き出す。


「ごほっ」


「もっと水が必要だ。執事は医者に連絡、メイドは水を」


 ギルベルトが的確に指示を出す。執事とメイドが指示に従う。ドミニクが途切れ途切れにつぶやく。


「ゆ、ゆるしてくれ…」


『ゆるしてくれ』

浮かぶ言葉。…嘘。


ブリジットは目を見開く。


 これは誰に向けた嘘?


 扉の前にいるブリジットは部屋を見回した。老人の寝室には大小さまざまな金庫がいくつも並んでいた。寝室に置くには多すぎる数だ。金庫はしっかり閉められている。

 ベッドサイドのサイドチェストにはガラス製の薬瓶が何種類か置かれている。そのうちの一つの瓶は開いたままだ。中には白い錠剤がいくつか残っている。



 老人の寝室にしては金庫の数が多くない?


 薬瓶の様子から薬を飲んだ直後だったのだろうか。


 ブリジットは薬瓶に目を留めた。なんの変哲もない白い錠剤だ。



 老人ドミニク、彼に何があったのだろう?彼は何かに怯えていた。彼は誰かに殺されたのだろうか?



 ブリジットは屋敷へ向かう前のことを思い返した。


「お兄様ー。おはようございます!」


「おはよう、まだ朝食もまだなのにはやいね。しかも支度も終わってる」


ブリジットは兄ギルベルトに挨拶をしに応接間に入った。ブリジットの支度の速さに首を捻りながらギルベルトは対応した。

 ギルベルトも支度がし終わっていた。ギルベルトはゆったりとソファに座り新聞を読んでいた。近くにはルカが控えている。ブリジットは昨日の夜思いついた案をいち早く伝えたかったのだ。


「昨日の老人の話なんですが、貴族だからいきなりいっても話聞かないような気がします」

 

 ブリジットはギルベルトに近づく。後ろにはメリィが続く。


「朝早くから突撃しましょう」


 ギルベルトの隣に座りながら、ブリジットがにっこり笑う。ギルベルトは新聞をルカに渡す。ルカは新聞を折りたたむ。ギルベルトはブリジットに朝の挨拶に頬にキスをする。ギルベルトはブリジットのわがままに仕方ない子だと言わんばかりに苦笑する。


「突撃のしたほうが、うやむやのうちに屋敷に入れるが。突撃は迷惑だろう。何より、突撃する理由がないだろう」


「そこなんですが、私達がたまたま訪れたこの地でお祖父様の知り合いだった老人がいると知っていてもたってもおられずに会いに来たにしません?」


「お祖父様は知り合いが多いからな」


 ギルベルトが顎に手を当て考え始める。 ブリジットが持論を展開する。


「どうせいつ行っても老人にとって迷惑です。助けが欲しければ早い方がいいし早く処理しましょう」


 ギルベルトが諦めたように頭を振る。ブリジットの案に乗るようにしたようだ。


「処理は早いほうがいいか」


 ギルベルトがルカに指示を出す。


「ルカ、ブリジットの案を通せ。朝から尋ねにいくぞ」


 ルカが慌てて折り畳んだ新聞を小脇に抱え、ギルベルトに意見する。


「なかなか強引だと思いますが」


メリィは不思議そうな顔をしながらルカを見た。


「何か問題でも?ルカ?」


 メリィの生活はブリジット中心。ブリジットが行くといくならいく。そのルールは絶対だ。この中で唯一の常識的感覚を持つルカだけが突撃案にひいている。


「やっぱりブリジット様もギルベルト様も貴族だ。さすがな傍若無人」


 引きながらルカは了承する。そして、ギルベルトの要望を通せるよう算段を練るために足早に部屋を去った。


「しばしお待ちを」


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