31.激安物件と見える嘘⑧セルジュの嘘
アレックス・ブライト→アレク、端正な顔立ちに完璧なエスコートを見せる色男。
フィンバート・グレンドール→フィン、好青年、警察、アレクの知り合い
セルジュ・ノクス→フィンの相棒、鑑定官、アレクの知り合い。柴犬みたいな男。
ブリジットはセルジュに詰め寄る。
「セルジュ、あなたは前回の捜査で私が関与することを嫌がったのはなぜですか?」
「嫌がりましたっけ?」
しらを切ろうとするセルジュに追及の手を強めるブリジット。
「はい、嫌がりました。
前回の捜査の時にアレクを裏切ることになったらその際邪魔になるから、前回は私に捜査介入させたくなかった。ちがいますか?」
ブリジットは途中で言葉をきり、セルジュを観察する。
「あなたは私に嘘をつきました。
その嘘はアレクの信頼を裏切ることはないです。
これは、あなたが場合によってはアレクの信頼を裏切ることをするという意味です。」
「俺はそんな嘘を」
「私は、あなたが嘘をついているとしっかりわかります。どうしてかはご想像にお任せします。息づかい温度など。
私は観察が得意なので」
もちろん嘘だ。
観察から嘘とわかったと言ったほうがいい。
能力は隠したい。
セルジュが観念した様に息を吐き出した。
「はあ、よくわかったな」
「本当に鋭い女」
ブリジットは目を細める。
「前回はアレクを裏切らなかったみたいですが、
どうして裏切ることがあるのですか?
その理由を私は知りたい」
「わかった。だけどアレクとフィンには内緒にしろよ」
「理由によります」
「もしアレクがあの事件の犯人だったら俺は証拠をかくす」
「それは……」
ブリジットは驚きで言葉に詰まる。
「アレクもフィンもまっすぐだ。二人は法を破らない」
セルジュは視線を落とした。
「だが俺は違う」
セルジュの声が低くなる
「あいつらを守れるなら、俺は法を破る。
たとえアレク自身が、それを望まなくてもな」
「……それは、アレクの信頼を裏切ることになります」
「ああ」
「それでもだ」
セルジュは顔を上げなかった。
「重い友情ですね」
「うるせー」
「拗らせてますね。友達が少ないから。
でも私もその気持ち少しわかるので内緒にしてあげます。
せいぜい喜びなさい。貸しイチです。」
セルジュは呆れたように肩をすくめた。だがすぐに、真顔になる。
「貸しイチとか意味わからん。
でも改めて思った。ブリジットは恐ろしいやつだ。だから俺は絶対、アレクとの仲は認めない」
ブリジットは内心でぼやく。
小姑か…
「ふん」
「セルジュって猫かぶりはずれたら俺って言うんですね」
ブリジットが指摘すると、セルジュは一瞬固まった。
「げ、何のことですか。私にはわかりません」
あからさまに取り繕っている。
「いいですよ。俺で」
ブリジットがあっさり言うと、セルジュはむっとした顔をした。
「やだ。余裕のあるセルジュくんを装いたいから今後も一人称は私で行く」
「なんのこだわりですか」
「アレクとの仲は認めないが、仲良くはしてやる。ブリジット、お前は鋭い女だからな」
「結構です!!」
ブリジットの心からの叫びがまた出た。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
この一件は一区切りとなりますが、ブリジットの日常はまだ静かではいられないようです。
次は、新たな事件にてお目にかかれましたら幸いです。




