30.激安物件と見える嘘⑦悪巧み
アレックス・ブライト→アレク、端正な顔立ちに完璧なエスコートを見せる色男。
フィンバート・グレンドール→フィン、好青年、警察、アレクの知り合い
セルジュ・ノクス→フィンの相棒、鑑定官、アレクの知り合い。柴犬みたいな男。
イザベル→大家の妻。フィンの犬友達。
リリアン→イザベルの飼い犬。ポメラニアン。
フィンとセルジュとブリジットで、簡単な作戦を立てた。
「もう少しでイザベルさんがきますよね。いいですか、さりげなく伝えるんですよ」
ブリジットはフィンに演技指導する。
「リリアンちゃん待って。
あいかわらずジョセフィーヌちゃんが好きなのね。ジョセフィーヌちゃん見かけると走り出して」
噂をしていた大家の奥さんイザベルがリリアンを連れて小走りで現れた。
イザベルはリリアンによって走ったので息が弾んでいる。
「イザベルさん、こんにちは」
ブリジットが挨拶を交わす。
「ブリジットさん、こんにちは。あらフィンさんやセルジュさんもこんにちは」
ブリジットが世間話の程でイザベルに話しかける。
「イザベルさんはあの物件の住人と挨拶されました?」
イザベルは少し首を傾げた。
「いいえ、挨拶はしていません。知られているんですか?どんな方でした?」
「ピンクの髪で女性の方でした。
ちょうどあの部屋、女性むけの内装でしたので、ちょうど良かったかもです」とブリジット。
「そうなんですね」
イザベルの眉がわずかに動く。
セルジュが何気ない調子で続けた。
「そういえば、ご主人をジュエリーショップで見かけました。
お連れの方もピンクの髪でしたね。ピンクの髪の人は親戚の方ですか?」
「いいえ、ピンクの髪の人は親戚にはいません」
イザベルは口元に手を当てる。
「……まさか…でも…」
フィンはさりげなく口を挟んだ。
「ここ数日、大家さんがあの物件の出入りしているのを見ましたよ。ピンクの髪の女性も出入りしているみたいです」
ブリジットはすかさず話をアシストする。
「でも、入居者の方って、まだ引っ越してないらしいですよ」
「ええ…そのはずです…」
イザベルの表情が固まりかける。
「じゃあ…あの部屋、誰が誰と使っているのかしら…」
ブリジットはシャム猫みたいな笑顔を浮かべた。
イザベルはしばらく動かなかった。手を口に添えて考え込んだ。
しばらくして顔を上げた。
「…そういうこと」低く、確信に満ちた声をだして。
イザベルの口元が、ゆっくりと歪む。その笑みは夜叉のようだった。
「少し旦那と話しあってくるわ」
静かな声だったが、逆に底冷えする迫力があった。
フィンとセルジュは黙ってこくこくと頷いた。
ブリジットだけが楽しそうにイザベルにエールを贈った。
「グーデンモルゲン」
いい朝になりそうね。
*
天気のいい日、あの公園に散歩に行った。またまた声をかけられた。
「おーい、ブリジット」
セルジュだった。
なにこの公園?!セルジュほいほいなの?!
ブリジットは露骨に顔をしかめた。
「あからさまに嫌そうな顔やめてくださる?」
「何よ。もう面倒ごとはお腹いっぱいよ」
「すごかったらしいですよ。往来で揉めて最後は大家が道端で土下座したとか」
「へぇ」
ブリジットの溜飲が少し下がる。口元がわずかに緩む。
「おかげで、私はあの部屋を無事借りれました。ブリジットさまさまですよ」
「まあ、よかったんじゃない」
「お礼に私のできることはなんでもしますよ」
「なんでも」
ブリジットの目がきらりとひかる。
「か、かなえられるていどですよ!」
セルジュがたじろぐ。
「じゃあ一つだけ。前回あなたは私に嘘をつきました。その嘘の理由を教えてください」
ブリジットはさらりと言った。
「へ?」
セルジュが鳩が豆鉄砲を食ったような声を出した。
今週は土日は18:30更新にしてみます。




