27.激安物件と見える嘘④ジョセフィーヌと会う
物件を出たあと、セルジュと近くの大きな公園に戻った。教えてもらうハンバーガー店が公園の近くらしい。
「ああ、あんな好条件の格安物件もう出ないわー」
セルジュが嘆く。
「まあまあ、ここは郊外にしたら格安になりますよ」
ブリジットがセルジュを励ます。
「事件起きてから中々現れない警察ってよくないだろ。郊外はなし、王都で探してる」
セルジュなりのこだわりをブリジットに話す。
「あらあら、意外に真面目」
「一応王都なら住居手当が入るしな」
ブリジットは呆れた顔でセルジュを見た。
やっぱり。そうだと思った。
*
二人でゆっくり歩いていたが、すぐに公園に着いた。
公園は大きく、たくさんの木が茂っており比較的日陰もあり過ごしやすそうだ。
ベンチには座って休憩をしているご婦人もいた。
「おーい、ブリジット、セルジュ」
またまた、後ろから声をかけられた。明るく大きめの声であった。
振り返ってみると声をかけてきたのはフィンだった。
「げっ。ジョセフィーヌだ」
セルジュがフィンの足元を見て嫌そうな声を出す。
フィンの手にはリードがあり、繋がれているのは白色の犬、犬種はフレンチブルドッグだ。
黒々とした大きい瞳に可愛い顔、コロコロとしたボディをもっている。
セルジュの発言にフィンがむっとする。
「げってなんだよ。ジョセフィーヌに失礼な」
セルジュが近づいてきたフィンに抗議する。
「おい、近づけるな。ジョセフィーヌ、めっちゃ唸ってるだろ。私を噛もうとしてるんだって」
ブリジットはジョセフィーヌと呼ばれている犬に目を向けた。
確かにセルジュに対して唸っている。
ジョセフィーヌは前足に体重をかけて今にも飛び出しそうに踏ん張っている。
ブリジットはしゃがんでジョセフィーヌと目を合わせた。
途端、ジョセフィーヌは唸るのをやめて黒々とした目をブリジットにむけた。
ジョセフィーヌはブリジットに興味を持っているみたいだ。
セルジュがブリジットに警告する。
「ブリジット。逃げろ。そいつは思ってるより凶悪だぞ」
なんかあった?セルジュ。
フィンがブリジットに注意をうながす。
「ブリジット。ジョセフィーヌは人見知りが激しいから吠えられるよ」
「あら、案外大丈夫みたいですよ」
ジョセフィーヌがブリジットに近づいてふんふんと匂いを嗅ぎ、小さい尻尾がぶんぶんと振る。
ブリジットに友好的みたいだ。
「嘘だろ。ジョセフィーヌは俺以外の初対面には吠えるか唸るかするのに」
フィンが驚きの声を出す。
そして、ジョセフィーヌは自分からブリジットの足に体をすり寄せた。
「フィン、これは」
ブリジットは躊躇った声を出した。
「これはジョセフィーヌが撫でてもらいたいってことだ。ブリジット、ジョセフィーヌをなでてみて」
フィンがジョセフィーヌの気持ちを代弁する。
「じゃ、じゃあ」
ブリジットはしゃがんで恐る恐るジョセフィーヌの頭をそっとなでた。
ジョセフィーヌの尻尾がちぎれるのではないかと言うほど小さな尻尾が振れる。
「ジョセフィーヌはブリジットが大好きみたいだね。ジョセ、ブリジットを気に入ったの?」.
フィンが嬉しそうにジョセフィーヌに話しかける。
「嘘だろ」
目を開いて驚くセルジュ。
「まあ、光栄ですわ。ジョセフィーヌちゃんはとってもかわいいですから」
「ジョセフィーヌは慣れてきても無視がデフォルトなのに。
こんなになつくなんて俺か飼い主並みだね」
フィンが感心した様に呟く。
「人の選り好みが激しい犬なのに…」
セルジュが今の状態を信じられないと言わんばかりにブリジットとジョセフィーヌを交互に見た。
ブリジットがジョセフィーヌを撫でながらフィンに尋ねる。
「ジョセフィーヌちゃんってフィンが飼っているわけではないですね」
「ああ、ジョセフィーヌを飼っているのは上司なんだ」
「フィンはある意味世渡り上手なんだ。上司に好かれてるからな」
ブリジットがジョセフィーヌを撫でていたら近くから驚きの声が上がった。
「あら、ジョセフィーヌちゃんが唸ってないし撫でさせてる!!」
先ほどベンチに座っていた婦人だった。
婦人の手元にもリードの紐が握られていた。茶色のポメラニアンだ。
ブリジットは婦人の飼い犬のポメラニアンを見た。
あら、こちらのポメもかわいい。
ブリジットは手元にいるジョセフィーヌに目をむけた。
それにしてもジョセフィーヌちゃん、もしかして実は凶悪犬!?この婦人にも唸ってたの?!




