21.悪意ある食卓と見える嘘①⑦ダメすぎる本のラインナップ?
ジェフ・ラザフォード→年配の男。傲慢。
リサ・ラザフォード→ジェフの妻。
メーガン→ジェフの秘書。ジェフの不倫相手。
イブ・ラザフォード→ジェフの娘。
ハリー・ラザフォード→イブの夫。娘婿。
若者二人→ジェフに会社を潰された家の息子。ウーズリー家?
アレックス・ブライト→アレク、端正な顔立ちに完璧なエスコートを見せる色男。
フィンバート・グレンドール→フィン、好青年、警察、アレクの知り合い
セルジュ・ノクス→フィンの相棒、鑑定官、アレクの知り合い。柴犬みたいな男。
ブリジットは午前中に王立図書館に行った。
王立図書館は街の中心にそびえたち、王宮とつながっている。
そのため入る際は厳重な警備を通らないといけない。また、貴族以上の身分がないと原則入れない。
警戒体制の強い警備をぬけ 、ブリジットは無事入ることができた。王立図書館は、この世のすべての本が収められていると噂される場所である。
天井まで届く書架が並び、床から上まで隙間なく本が詰め込まれている。
ブリジットは図書館の中を見回した。
相変わらずすごく広い。迷路のよう。
エマの体調のアドバイスだから、医療・薬学の分野ね。
ブリジットは奥へ奥へと進んでいく。人気のない分野のせいか、奥に進むたびに人が減っていった。
ついに医療・薬学分野の棚周辺にはひとっこひとりいなくなった。
人がいなくて選びやすいわね。さあ早速本を選びましょう。
ブリジットは気づいてなかった。
一般的に健康分野は家庭医学で、医学・薬学は専門的であることに。
書棚の前に立ち、参考になりそうな本を手に取っていく。ブリジットはエマを考えながら本を選んだ。
エマは庭に咲いた花とか珍しいとかいって食べるかも。食べたらいけない毒草系も入れるか…
途中、事件も思い出し事件に参考になりそうな本も入れた。
『家庭にある毒草一覧』
『薬の辞典』
『食の食べ合わせ』
『薬と食の相互作用』
『毒草図鑑――毒性と摂取量』
我ながらひどいラインナップね。知り合いには見られたくない題名のラインナップだわ。
ブリジットは肩をすくめた。
両手いっぱいに本を抱え、ゆっくり読めるスペースを探す。
椅子は見つからない。ブリジットは、さらに奥へと進んでいった。
ブリジットはようやく空いている席を見つけた。
ようやく、座ることができた。よかった。
近くにある分野は政治経済。人は少ないが、数人はいる。ブリジットは本をテーブルに置く。
本を開いて読み始めたところで、テーブルの向かいに人の気配がした。
相席希望者ですかね?ここ、たくさん本があるわりに椅子が少ないですからね。
ブリジットが本から顔を上げた。 テーブル越しにいる人物はアレクだった。
「ブリジット、人を殺そうとしているのか?」
眉を顰めブリジットの選んだ本のラインナップをみている。
「え?」
ブリジットが慌てて手でテーブルに置いてある本を隠す。が、遅かった。
「なかなかなラインナップだな」
アレクが吹き出した。
「違います!いえ違わないですけど、ただの知識として……」
「事件のためだろ。知ってる」
アレクはおかしそうに言う。
「じゃないとやばい令嬢だ」
アレクの発言にブリジットが恨めしげにアレクを見た。
アレクは声を出して笑い出した。ツボに入ったのかアレクの笑いはおさまらない。
笑いじょうごですか!
ブリジットはアレクの手元をチラリとみた。『経済と統計』だった。
お、お堅い…
アレクが笑いを収めようと必死になっている。死にそうだといいながら。
そんなアレクの姿を見ていてブリジットもつられる。
「ふふふふ」
二人で笑いが止められなかった。結果、図書館司書にアレクとブリジットは図書館からおいだされた。
そのため、ブリジットは怪しげなラインナップの本は全て借りることになった。
またもや、 ブリジットは恨めしげにアレクを睨んだ。アレクはおかしそうに笑いブリジットの頭をくしゃりとなでた。
「わりぃ」
その仕草にブリジットはどきりとする。動揺を悟らせない様、アレクに話題を振る。
「いえ、アレクは今日は仕事ですか?」
「ああ、調べ物で図書館に来た。王立図書館と王宮はつながってるからな」
「アレクって王宮につかえてるんですね」
ブリジットと話していたが、アレクが右ポケットに入ってた通信機がブルリと震えた。通信機をみてアレクが、
「呼び出しだ。じゃあなブリジット」
そういってアレクはさっていった。
ブリジットはアレクのさっていく後ろ姿を見た。
あーあ、忙しいみたい。アレクとせっかく会えたのに…もう少し一緒にいたかったな。
ブリジットは屋敷に帰りアレクのことで悶々となり、昼食もあまり食べられなかった。
その様子を見て、メイドのメリィが有無を言わさず医師を呼んだ。
「お嬢様が食が細いなんて。
絶対病です。昨日の夜もデザートも食べませんでしたしお昼はほとんど食べてない。
お医者様をお呼びします」
「大丈夫よ」
ブリジットが主張したが、メリィが頑として従わなかった。
「いいえ、お呼びします」
メリィは廊下を走って呼びに行ってしまった。
メリィの後ろ姿を見ながら ブリジットは自分がメリィにどう思われているのか不安になった。
メリィにとって私ってどんだけ食い意地が張った子扱いされてる?
ねえねえ、メリィ。私の胃袋、鋼鉄の胃袋だと思ってる?
メリィにひっぱられて医師が慌ただしく来訪し、診察をする。
「体調は問題ありません。だが疲れが溜まったのだろう。今日は安静にしてゆっくり休みなさい」
メリィが心配そうに聞いている。
「お嬢様は重大な病なのです。見てください。この本を。きっと重大な病で世を儚んで毒をさがしておられる」
医師はちらりと今日借りた本を見て
「お嬢様は病でありません。また、この屋敷は毒草は植わってません」
と答えた。メリィはその発言にホッとして肩の力を抜く。
ブリジットは慌てて誤解を解く。
「ちがいます。あの借りている本は知り合いが食あたりと事件に巻き込まれたので借りたんです」
医師は澄ました顔でブリジットに注意する。
「そうですか。屋敷には毒草はないですけど。たべるのはおすすめしません。食あたりになりますよ」
もしかして私が屋敷の草を食べたか、知り合いが草を食べて食あたりになったと思ってる。ひどい誤解だわ。
ブリジットは毒草の件をこれ以上説明しても無駄だと判断し、別の疑問をぶつけた。
「知り合いが結核の初期の初期で薬を飲んでいるらしいですが何の薬かわかりますか?」
「ふむ、初期の初期なら、たぶんこの四種でしょう」
医師は置いてあった薬の辞典を開いて該当の薬名を指し示した。薬の辞典には薬の写真も載っていた。
オレンジ、白、黄色のカラフルな錠剤の写真だった。
イソニアジド、リファンピシン、ピラジナミド、エタンブトール。
セルジュのいってた4つの毛虫はこの薬四種に間違いないだろう。あのトイレのときにリサが落とした薬だ。薬名ってわかりづらい。
「結核薬は大体二ヶ月この四種を飲んで、あと四ヶ月は減らして二種になる。初期の結核薬は決まってるからの」
そのほか体調のことなどを話して医師は帰って行った。
ブリジットは安静にするように言われたのでベッドに入り本を読み始めた。
せっかく借りたので医師から教えてもらった結核治療薬の該当ページでも読むか。
『薬と食の相互作用』とか難しそう。読んでたらすぐ眠れそうね。




