19.悪意ある食卓と見える嘘①⑤嫌か?
ジェフ・ラザフォード→年配の男。傲慢。
リサ・ラザフォード→ジェフの妻。
メーガン→ジェフの秘書。ジェフの不倫相手。
イブ・ラザフォード→ジェフの娘。
ハリー・ラザフォード→イブの夫。娘婿。
若者二人→ジェフに会社を潰された家の息子。ウーズリー家?
アレックス・ブライト→アレク、端正な顔立ちに完璧なエスコートを見せる色男。
フィンバート・グレンドール→フィン、好青年、警察、アレクの知り合い
セルジュ・ノクス→フィンの相棒、鑑定官、アレクの知り合い。柴犬みたいな男。
重くなった空気を変えるようにフィンが明るく振る舞った。
「じゃあ、ブリジット、家に送るよー」
「ああ、ありが」
「いらん」
ブリジットが返事する前にアレクがフィンの誘いを断る。即答である。
「俺だけで大丈夫だ。ブリジットはフィンに似てきたとセルジュが言っていたから悪影響だ」
「そんなわけありません!」
「そんなことない!」
あれ?フィンと意見が合う。影響受けているのかな…
ブリジットは不安を抱いた。
「ほら。やっぱりろくでもない芽は摘んどくにかぎるからな」
とアレクはわけ知り顔でうなる。
フィンって影響を受けさせる人なのかしら。嫌だわ、フィン化。フィンは優しいけど、フィンになりたいわけではない。
ブリジットはフィンから一歩離れて少し距離をおいた。
「いや、でも。ブリジットの意見を聞きたいし…」
フィンは名残惜しげにブリジットを見る。
フィン寂しがりや?一人が嫌なのかな。それとも私をおばあちゃんの知恵袋みたいな位置にし始めてる?
「お前は別の調べ物があるだろ」
とアレクがピシャリと言った。
「それをいうならアレクこそ仕事があるじゃん。俺がブリジットを送っていくから安心して」
フィンが胸を張った。
「いや、仕事は後でいい。今はこっち優先だ」
「わかった…ブリジットのことはまかせるよ。じゃあブリジットまたね」
フィンはアレクにしぶしぶ言って引き下がる。ブリジットには下手くそなウィンクをした。
フィン、口も片側が上がってそれはウインクではない。ただの陽気な顔よ。
*
アレクと馬車で二人きりになった。
馬車の中は沈黙が続いた。
ブリジットは、アレクが隣にいるとそわそわふわふわして少し落ち着かない。だが、沈黙にいづらさを感じてアレクに声をかけた。
「すみません、お忙しいのに送っていただいて」
「別に問題ない」
しばらく沈黙が続いたあと、アレクが口を開いた。
「嫌か?」
え?
アレクは眉を寄せて眉間に皺を寄せて尋ねる。
「フィンとのほうが良かったか?」
「い、いえ……その……」
「忖度しなくていい」
アレクが静かに言った。
そんたく?
ブリジットは今思っている自分の気持ちを正直に話した。
「わかりません。二人をよく知らないので。アレクといると少し落ち着かない」
アレクの眉間のしわはふかい。
「でも嫌ではありません」
何を言っているの私は。
沈黙が落ちる。
しばらくして、アレクが口を開いた。
「そうか。ならいい」
アレクの眉間の皺がなくなり口角が上がり笑った。
え?笑った?か、かっこいい。
ブリジットの心臓が跳ねた。
そのあと、アレクは馬車の窓から外をずっと見ていて馬車の中はまた沈黙が続いた。
今度の沈黙はここち良かった。
*
馬車が屋敷の前に着いた。時間があっという間に思える。恭しく御者が扉を開けた。
アレクが自然な動作でブリジットをエスコートして馬車から降りた。
「あっという間だったな」
ブリジットは、アレクの声に残念そうな声音が混ざっているように感じた。
アレクも残念と思っているのかな。私の願望…それとも…
「ええ」
ブリジットも同意する。
屋敷の扉についた。馬車を降りる際に触れた手が、離しがたかった。
だがブリジットは、そっと手を離した。
「……ありがとうございます」
少し固く大きな手だった。
「じゃあな、ブリジット。また誘う」
ブリジットが屋敷に入る直前、アレクが声をかけた。
ブリジットはアレクの誘いに小さい声で答えた。
「ええ、ぜひ」
*
出迎えたメイドや執事が声をかけたが、振り切っていそいで自分の部屋に戻った。
ブリジットは思わず扉の前に座り込む。
アレクの最後の誘いに対し変じゃなかったかしら。必死すぎてなかったかな。またの機会がある。またアレクに会える。
ブリジットはまたアレクに会えることになぜだが心臓がドキドキした。
心臓がドキドキする。
もしかして、不整脈?!なーんてね。
原因はアレク。あれこそ魔性。
次は心臓保つのかしら、わたし。
今夜は眠れそうにない。




