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10.悪意ある食卓と見える嘘⑥友情?

ジェフ・ラザフォード→年配の男。傲慢。

リサ・ラザフォード→ジェフの妻。

メーガン→ジェフの秘書。ジェフの不倫相手。

イブ・ラザフォード→ジェフの娘。

ハリー・ラザフォード→イブの夫。娘婿。

若者二人→ジェフに会社を潰された家の息子。ウーズリー家?


アレックス・ブライト→アレク、端正な顔立ちに完璧なエスコートを見せる色男。

フィンバート・グレンドール→フィン、好青年、警察、アレクの知り合い

セルジュ・ノクス→フィンの相棒、鑑定官、アレクの知り合い

 

 ラザフォード家に向かう際、フィンが乗ってきた馬車にブリジットは一緒に乗った。


 冬のやるやかな朝日が馬車のガラス窓から入る。外に出ると冷たい風が吹いていた。


 馬車は見た目は茶色で地味だが、がっしりとしたつくりであった。


 馬車のなかは見た目より広く、暖房の魔道具が備わっているのか暖かい。


 クッションもしっかりとした厚みがあり身体を包み込んでくれる。最新式の車輪を搭載しており、揺れもほとんどない。

 


 これ、絶対高い。地味なのに高い。上流階級のお忍び用の馬車だわ。



 フィンってもしかしてかなり上の階級… 上流階級の警察官は珍しい。というか、ほぼ聞かない。


 私、社交はほとんどしてないからツケが回ってきたな。フィンは気さくなひとだが、身分が上なのかも。


 まあ、でも本人が言わないならこちらも態度変えないとこうっと。



 ブリジットは意外とフィンの身分が高いことに驚きながら、そのことは表情に出さないよう注意した。


 フィンはそんなブリジットの様子に気づかず何やらそわそわしている。



 そして、フィンは意を決してブリジットに問いかけた。


「ブリジットさんってアレクと付き合ってる?」


 ブリジットはフィンに敬称なしで呼ぶようお願いし事実を述べた。


「さんはなしでいいです。ご飯を食べに行っただけです」


「じゃあブリジットって呼ぶね。なんか照れる」


フィンは照れたように笑い考えを巡らす。


(付き合ってないのか。でも、アレクが食事をするなんてかなり気に入ってるはずなのに。よし、ここはフィン様が一肌脱ごう)


「アレクはいいやつなんだけど、顔が整ってるから怖い印象うけるよね。おまけに眉が異常に濃いから、ちょっと動くだけで怒ってるみたいに見えるよね」


 フィンは笑いながら慌てていう。


「でもさ、アレクって実は優しいんだよ。気遣いもするし」


「……気遣いは素晴らしかったです」


アレクの昨日の気遣いを思い出して、たしかに優しいとブリジットは思った。


 フィンは嬉しそうにうんうんと頷きながら


「そうでしょ。そうでしょ」


と言う。フィンはさらに身を乗り出す。


「誤解されがちだけどブリジットに知って欲しい。アレクはいいやつなんだって」


「……たしかに」


フィンのことすごく心配してたし。


「やっぱりわかる人にはわかるんだね。あんな派手な見た目してるけど真面目だし」


 ブリジットはアレクの意外な点に驚く。


「真面目なんだ…」


 フィンはにこっと笑い一生懸命アレクのいいところをプレゼンする。そして、誇らしげに答える。


「すごく思いやりのあるやつだから」


(よし、いい感じ)


フィンは内心で拳を握った。


(アレク、借り一つな。ブリジットにアレクの良さ伝えたよ。俺って恋のキューピッドじゃん )


ブリジットはそんなこととは知らず、少しだけ頬を緩めた。




 フィンはアレクのこと大好きなのね。アレクもフィンのこと大事にしてるし相思相愛の仲良しだね。



「フィンとアレクって素晴らしい友情で仲良しですね」


フィンはしばらく黙った。


(……友情?なにか違う気もするけど)


まあいいか、とフィンは思った。


(とにかく印象は良くなってる)


 一方ブリジットは、満足げにうなずいていた。




 とても微笑ましい。

 恋愛ではないが、こういう関係も素敵だわ。いい男友達ですわ。




 ラザフォード家は大きな屋敷であった。頑強で白く大きな門が家の周りを囲んでいる。


 門の両脇には石造りのライオン像が置かれていた。前足をそろえて座り、口を開き威嚇している。


 若干成金趣味な家だわとブリジットは思った。


 ライオンを置く時点で成金感が出るよね。本当の金持ちはもっと質素で上品でセンスがいい。


 人の趣味だからなんとも否定できないが、ブリジットがこの家の主人なら毎日帰るたび恥ずかしいだろう。

 

 ライオンが「おかえり」と威嚇してくる生活は、精神的に落ち着かない。






 ラザフォード家の門の前にぽつんと小柄な人物が立っていた。

 馬車から降りたフィンがその人物に気づき小走りで近づく。


「セルジュ、お待たせー」


「遅いです」

セルジュは淡々とした声だったが、見知った顔のフィンを見つけ表情が緩む。


 大きな屋敷の門前で一人で立っていたせいか、フィンの姿に少し安心したようにも見える。



 小柄な姿と顔のパーツと嬉しそうな姿より、ブリジットにはセルジュが柴犬のような印象を受けた。


 柴犬セルジュがフィンと一緒に来たブリジットに気づくと眉をわずかに寄せた。


「……なぜ彼女がいるんですか」


 セルジュが低い声を出した。


 フィンが胸を張り返答する。


「捜査協力です!」


 セルジュは一瞬黙り、静かに言った。


「却下です」




 早い。返答が早い。

 考える気すらないらしい。



「危険です。責任も取れません。連れてくるべきではない」


 やっぱり正論で返ってきた。


「じゃあ僕が責任を取ります」


「あなたが?」


セルジュの目がわずかに細くなりフィンを見る。

フィンは食い下がって言った。


「はい。しかもブリジットはアレクが捜査に加わるのをすすめたんですよ」


セルジュは思いっきりため息をつく。


「仕方ありませんね。あなたもアレクの信頼をうらぎるようことはしないでくださいよ」


『アレクの信頼をうらぎるようなことはしない』


 声が文字として浮かぶ。



 嘘




 どうしてセルジュが嘘を…。セルジュはこの事件に何か隠しているの。




 ブリジットはセルジュに疑いのまなざしをむけた。

 

 セルジュはテリトリーに入ってきた新参者に対するように目を細め警戒の姿をしている。




 うん、やっぱり柴犬。警戒心が強いな。



 ただし、


 この柴犬、


 何かを隠している。



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