9.悪意ある食卓と見える嘘⑤ 危険なことはありません、たぶん
ジェフ・ラザフォード→年配の男。傲慢。
リサ・ラザフォード→ジェフの妻。
メーガン→ジェフの秘書。ジェフの不倫相手。
イブ・ラザフォード→ジェフの娘。
ハリー・ラザフォード→イブの夫。娘婿。
若者二人→ジェフに会社を潰された家の息子。ウーズリー家?
アレックス・ブライト→アレク、端正な顔立ちに完璧なエスコートを見せる色男。
フィンバート・グレンドール→フィン、好青年、警察、アレクの知り合い
セルジュ・ノクス→フィンの相棒、鑑定官、アレクの知り合い
ブリジットは神経が図太いのか昨日の騒動があったが、ぐっすり睡眠を取れた。
メイドのメリィから来客を告げられたのは、朝食を終え、気分転換に散歩へ出ようとした時だった。
「お嬢様、玄関にお客様がいます」
「今日は来客予定はないはずなんだけど…」
ブリジットは訝しげにメリィに尋ねた。
「はい……アレク様とはまたちがった魅力を持った男性がお嬢様を訪ねております。ご用件はあって話すと。あれはお嬢様に一目惚れをして求婚しにきたに違いありません」
メリィの的外れの予想が炸裂する。
「メリィ、私はそんなにモテモテではないわ」
ブリジットが恥ずかしそうに正す。
「そんなことありません。私、他の家の使用人仲間にお嬢様の素晴らしさをひろめてますから」
「えっ」
「お嬢様は聡明で全てを見通す頭脳を持っており私たちを災厄から救う女神様の血を持たれた貴きお方だと」
「えっっ」
どうしよう。メリィの私の像がかけ離れている。
文字は浮かんでない、真剣に思ってるってこと?!
やだ、私のメイド、他の家の使用人から距離おかれてるんじゃない?
やばい、やばい。強信者を生み出してる。
私、この子に何したの?!
そりゃ、家に来た嘘はき商人とか嘘つき預言者や霊能力者を追い払ったよ。
だって嘘つきってわかるから。
ブリジットの誤った認識をもつメリィを正したい気持ちぐっとこらえて、余裕のある威厳ある主人を装いにこやかに笑った。
その笑顔はひきつっていたかもしれない。
「ほほほ、ありがとう。メリィ。私は早速来客者に会ってくるわ」
ブリジットはメリィの誤解をそっと見ないふりをした。
そして、来客者のいる玄関に向かいメリィから距離をとった。
ブリジットが玄関へ向かうと、そこにはにこにこ笑うフィンが立っていた。
「おはようございます!」
朝から元気である。なぜ彼が私を尋ねる?
ブリジットは頭の中の疑問を一旦おいて
「おはようございます……」
と挨拶を返した。
「ブリジットさん。今日から捜査一緒に頑張りましょう。でも民間人が捜査に加わることバレたら怒られるので内緒で」
フェンは屈託なく笑って答えた。
「い、いっしょに…」
善処するって言ったよね。善処って了承の意味だっけ…
ブリジットの微妙な反応に気づかないフィンは嬉しそうに反応する。
「ブリジットさんは聡明だそうですから一緒に捜査してくれてこれで安心です。解決も近いですね。早速ラザフォード家に聞き込みましょう」
フィンは胸を張った。
私は不安しかないです。
フィンが目を輝かせ声を掛けた。
「さあ,行きましょう」
決定事項なんですね、拒否権ないんですねとブリジットは思ったが、フィンにいっても無駄な気がしたので、「まあいいか」と諦めた。
フィンの捜査では解決は遠そうだし、ブリジットもこの事件には興味がある。
「はい、行きましょう」
フィンは嬉しそうに頷いた。
「安心してください。危険なことはありません。たぶん」
『危険なことはありません。たぶん』
浮かび上がる声。
嘘だ。
ブリジットは固まった。
フィンは爽やかに笑う。
「では出発です!」
今から体調不良になれないかしら。




