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幻界星霜 ウィスタリア ー幾度も移り行く転生者ー  作者: 弓削タツミ
ー商隊と一般人の旅ー
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105.パステルの森

ーーーパステルの森に捕まってから一週間程経過しました。

特に何の進展も無く森を彷徨っていた私達はなるべく外を彷徨かない様に警戒し、それでも必要な場合は外に出て水や食料を調達し、かわいい動物達と死闘を繰り広げたりしなかったり。

とにかく皆可愛らしい森の雰囲気とは真逆に必死でした。


ですが、スラたん(スライム)の見た目だけ全く同じに見えるのはどう言う事なのでしょうか?

かわいい顔が着いた魔物だからですかね?


とは言え、特に何の手掛かりも無く、何時もの様になる様に任せて進むのも何なので、外に出られる場所を探して少しずつ外周を回ってみたり、逆に中心に向かって走ってみたりして居たのですが、トラックの燃料が切れないのはどう言う事なのか気になります。

いえ、今はそんな事を気にしている場合じゃないのは理解してますよー?

だって、外周周っても何故か内側に戻って来てますし、中心に向かっても何も有りませんし。

シャリアさんやマックスさん達がトラックに給油してる様子もここずっと見てませんし。

しかも森に目印を付けて走り回った所、大体直径にして五十キロメートル四方という狭さ。

捕まえる時だけ広がるんですかねぇ?



何処をどう周っても何の脱出の手掛かりも掴めないので、シャリアさんも商隊の皆さんも、随分と苛々して居ました。




森の中の広場で食事の為にキャンプを設営した時の事でした。


「だあああもうっっっ!!!フザッッッケンな!!!俺様が可愛くなっちまったらどうしてくれやがる!!!」


山賊ライネルさんが木々を蹴りながら苛々感マックスで叫んでました。ーーーあ、マックスさんは別に苛々してませんよ?


「流石の俺も限界っす。………姐御、俺が魔物になっちまっても、俺は姐御を愛してるっすから…」


やっぱりマックスさんも苛々してました。しかも何やら錯乱してるみたいです。


「はいはーい、子供達の前で錯乱しない!………っつーか、マジでヤッベーわね?…もういっそのこと元凶の魔物とか出て来てくれたらソイツぶっ殺して脱出して終わりなんだけどねぇ。」


物騒な思考のシャリアさんはいつも通りでした。


「姐御、最悪俺が森の外との境界で爆弾持って自爆するんで、結界みたいなのが弛んだ隙に脱出して下さいっす。」


えぇー…。多分それ意味なく終わっちゃいますよー?


「それは最後の手段よ。」


え?それマ?


「はいはい皆落ち着きなさいな。今日は豆とクズ野菜のスープよ。しっかり食べて元気出しなさい!」


こう言う時もブレないシェリーおばさんでした。

うーん、何故こうもドッシリ構えて居られるんでしょうか?


「ほら、エルキュールちゃんも皆を呼んでらっしゃい?」

「はーい、シェリーおばちゃんって凄いよねー?」


シェリーおばさんは、私の言葉にキョトンとして居ました。

「だって、こんな状況なのに全然慌てて無いじゃん?どうしてなの?」

そんな質問に、シェリーおばさんは笑って答えてくれました。

「そりゃあんた、あたしはねぇ…シャリアちゃんの事もマックスちゃんの事も、信じてるからさ。………だからきっと大丈夫。元気になったら皆で良い方法を見付けられるわよ。」

なるほど、信頼してるからなんだー。


「うん、私も皆で力を合わせたらきっとこんな森なんか抜けられるって信じてるよ!」


私は精いっぱいの笑顔でおばちゃんに返しました。



ーーー

ーーーーー



私がシャルロットちゃんや沙霧ちゃんに呼び掛けて、両手に二人の手を握って引き連れて居たのですが…。

沙霧ちゃんがずっと暗く落ち込んでるのがとても気掛かりでした。


「沙霧ちゃん?大丈夫?」


ついつい尋ねてみましたが、ビクッと身体が跳ねたっきりフルフルと涙目で首を横に振って終わりました。

「さぎりちゃん、ずっとこう…。」

シャルロットちゃんがそう教えてくれると、その震える手を握ってニコリと微笑み掛けて見ました。

「沙霧ちゃん、怖ーい事が有っても、エルクさんが守ってあげるから安心してね?大丈夫!おねーちゃんに任せなさいっ!」

沙霧ちゃんは余り変わらず震えたままだったので、一度手を離し、ギューっと抱き締めてみました。


「あの………エルクさん………そう言う事ではなく。………きっと私はここから出ても出なくても、酷い目に遭う事が確定してて………。」


…要領を得ません。

一体何が沙霧ちゃんをここまで震え上がらせて居るのでしょうか?


「いえ、その…。私からの定時連絡が無いので、私に何かが起きたーーーと判断した若君が、スロートリングを襲撃している夢ばかり見て、恐ろしくて恐ろしくて…。」


あ〜〜〜〜〜…



ーーーーーーー

ーーーーー

ーーー



「シャリアさん!!今すぐ!!!今すぐここから脱出しましょう!!!」

「今その計画を立ててる所よん。」


私の勢いに普通に返すシャリアさんでしたが、私が沙霧ちゃんから聞いた情報を話すと、何でもないかの様にシャリアさんが答えてくれました。


「そりゃそうでしょうねぇ?だって普通に考えたら信頼してる部下に不手際が起こったら、戦争一直線でしょう?ま、警告位はしてるかもだけど。ーーーで、戦争を仕掛けたのに、あの子が普通に帰って来たらどうよ?折角の戦争の建前が丸潰れ、あの馬鹿勇者は戦犯扱い。それならいっそのこと沙霧ちゃんを始末してこのままスロートリングに攻め込む方が手っ取り早いじゃない?」


そんなシャリアさんの言葉にあわあわと怯える私でしたが、続けてくれました。


「ま、流石にそこまで短絡的な馬鹿じゃないって信じたいけれど、でも戦争狂ウォーモンガーっぽいじゃない?あの馬鹿。って言うか馬鹿。馬鹿丸出しだ!!」


おおう…シャリアさん、竜の勇者さんに対する憎しみが激しいよぅ。


「まぁまぁエルちゃん、ちゃーんと作戦は考えてるから、シャリアおねーさまを信じなさい?」


いや、いつもシャリアおねーさまを信じて酷い目に遭ってるんですが!?


「ぐぎぎぃ………信じ…るけどぉ…。」

「あら?久し振りに聞いたわね、それ。」


とにかく、シャリアさんには考えが有る様で少しだけ安心しました。


「あ、エルちゃんにも力を貸して貰うから、明日までしっかり食べて休んで置いてねん?」


私が力になれる?

珍しい事もあるものだなぁ〜と思いながら、今日はとにかくゆっくりと休む事にしました。


ーーー

ーーーーー



翌日の朝の事でした。

私の布団がふっくらと膨れてるので何かと思い、恐る恐る捲りあげて見るとそこにはーーー。



フルフルと震える沙霧ちゃんが私の胸に顔を埋めてました。

いつもはシャルロットちゃんと寝たがるのに、珍しい事もあるものだなぁと思いながら髪を撫でて居ると、突然。


「お母様…」


………!?

えぇー…。私って何人のお母さんに似てるんですかね?

まぁ役得?的に考えてそのまま撫で続けて見ると、顔を上げて私と視線が合っちゃいました。

しかし、特に変わらない様子でそのまま擦り付いて来て、何と無く察しました。

きっとこの子は、この森から出られなかった時の事を…。

この森から出た後に外で起きてるだろう光景を思い浮かべて震え上がって居たのかも知れません。

「ねぇ沙霧ちゃん?もしもこの森から出られたら、私やシャルロットちゃんと一緒にいつかお出掛けしない?」

すると顔を上げて私を見詰める沙霧ちゃんは、黙って私の話を聞いてくれてました。

「私の故郷、岩門ロックアーチって言うんだけど、のどかな雰囲気で凄く過ごしやすいんだ。……もし、シャルロットちゃんや沙霧ちゃんが良ければだけど、いつか一緒に町を散歩してみない?」

沙霧ちゃんの頭を撫でながら言う私に、擦り付いて頷く沙霧ちゃんが可愛くて仕方無かったのです。

ーーーどうしても私はこの子を敵として見られないんですよねー。


「それでヤバ渋いおじさまが店長をやってる喫茶店が有ってー…。………どこもアリシアと行った場所ばっかりだ。」


ふと、私の心に寂しさが沸き起こりました。

沙霧ちゃんは急に止まった私の話に、ふと顔を上げましたが、いつの間にかポロポロと涙を零してる私に指で掬ってくれました。


「エルクさんも…怖いんですね。」


何が?と、問い掛けた気で居て、問えてない気がしました。


「大丈夫です。………きっとまた、獣神の勇者殿と一緒に、町を歩き回れますよ。」


そう言って、沙霧ちゃんが私の唇に人差し指を当ててニコリと微笑み掛けてくれました。


「うん、…優しいね?沙霧ちゃんは。」


逆に励まされてしまった私は、にへへと笑いながら、沙霧ちゃんの頭をもう一度ギューっと抱き締めました。

なんか私ってば小っちゃい子達に励まされてばっかりだなー。




ーーー

ーーーーー




ーーーーその後、シャリアさんに寄って纏められたメンバーで、パステルの森からの脱出計画が開始されたのでした。

小さい子達に駆け寄られたい系女子、エルキュールさん。

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