表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幻界星霜 ウィスタリア ー幾度も移り行く転生者ー  作者: 弓削タツミ
ー商隊と一般人の旅ー
109/138

106.パステルの森脱出・前編


「はい、今回はパステルの森、脱出の為に精鋭パーティーで編成しましたー!」


旅人を取って食うパステルの森と現実の森の境にて、シャリア一行は脱出を試みる為にパーティーを編成して居ました。

当然計画の進行を仕切るのは我等がシャリア商隊の主人、シャリアです。


「まずは調査の結果を説明するわよん?この森を発生させて居るのはどうやら森自身って見るのが正解みたいなのよ。何故なら原因となる魔物モンスターや建物、その他の物質や機材等が存在しないからよ。そうなる以上、核となる物を退治する手段は使えません。ーーーって言うか、今まででパステルの森についてそんな報告も無いしねん?」


シャリアの説明から、パステルの森とは生きてる森、まるで迷いの森の様な物だと言う事が判明されました。

そして恐ろしい事に、この森は麻薬物質の様な霧や塵や花粉等が舞っていて、幻覚や依存感を強めて逃がさなくする様です。

最も、その辺りはアスクレピオス医師による分析結果で判明した事なのですが。



シャリア一行はまるで生き物の体内に取り込まれた様な恐怖心を抱きました。



「そこで、森から出るには森があたし達を引き戻そうとする誘惑やら何やらに打ち克つ程の強い意志と、無限ループみたいになってる境界を歪める程の強烈な力が必要だと判断しました。」


つまり、早い話が境界に向けてとにかく超常的な力を叩きつけ続けて弛んだ瞬間に抜け出そうと言う力技な手段でした。

なんと言うか、結局成り行き任せか力押しな辺り、この一行は色々と変わらないのかも知れません。


「ーーーと言う訳で、編成なんだけど。正直言って今から発表するのは下手すると死人が出るかも知れない程に危険な役割よ?………それでもあたし達は皆の力を借りるしか無いの。………本当に申し訳ないけれど、あたしに力を貸して頂戴。」


なんと、あの横暴で凶暴、殺戮に快楽を見出してる様な自己中心的なシャリアが頭を下げてました。

これには流石のメンバーも驚きを隠せませんでした。一部を除いてですが。

皆の意見や納得もそこそこにシャリアは頭を上げると、真剣な表情で切り出します。


「まずは一番危険な境界を力付くで歪める役割に付くメンバーよ。はっきり言って、魔力持ち組がこれに当たる事になるわね。」


一人目はエルキュール=グラムバルク。

正直、魔力を持たないエルキュールは一番最初に名前が挙がるとは思わず、戸惑いを隠せてません。

理由としては、星蝕者の力を扱える様になって来た事と、その星すらむ力を持ってすれば境界の幕を打ち破る事が出来るのでは無いかとの予想からでした。


二人目は天沙霧アメノサギリ

エルキュールが作り出した道を確実にする為に、地面を焼いてトラックが走り抜ける道を作る試みでした。

余計な草や木々に足を取られては逃げ切れませんからね。


三人目はシャルロット。

作り上げられた道を氷の力でドーム状に囲い、麻薬物質の粉塵で塞がれるのを少しでも妨げるのがその役割でした。


「次に、寄って来るだろうと思われる魔物を退治する役割だけど…。」


一人目は当然自分こと、シャリアでした。

様々な銃器を使用する事で、近付く敵を寄せ付けません。相変わらずソードオフタイプのショットガンを二丁両手に振り回してヘラヘラ笑ってます。この人の方が余程怖いです。

因みに、ウィンチェスターM1887/1901のソードオフです。地味に好みが渋いです。ターミ○ーター2ですか?ですよね?

しかもシャリアは相変わらず精神感応デバイスの筋力増強型で無理矢理レバーポンプアップを両手で行います。怖いです。化物です。魔王です。

弾込めは一丁ずつ手動ですが。



二人目はマックス。

トラック上部に取り付けられた機関銃を用いて、近付く敵を掃討するのが役割です。

因みに取り付けられたのはミニミ軽機関銃で、ベルギーの国営銃器メーカー、FNハースタル社が開発した、5.56x45mm NATO弾を使用する軽機関銃です。

ベルト給弾式で、毎分725発。400〜800m程飛ぶ弾丸がループして戻って来たらどうするつもりなのでしょうか?とても恐ろしいです。これを撃てと命じたシャリアが。

それにしても、遂にマックスも工具のおじさんから進化しました。悪い方に。



三人目は何と、山賊ライネルです。

シャリアに預けられた新武器として装甲板が着いた鉤爪の様な剣と、装甲板が着いた三又のハンマーを両手に装備しています。

どうやら取り付いた魔物を駆逐する役目を与えられた様でした。

地味にこの人、シャリア商隊を裏切りませんね?謎です。




「最後に、運転手はシェリー、頼むわよ?アスクレピオスせんせーはいざと言う時に備えて置いて頂戴?」

二人は思い思いに頷き肯定しました。




エルキュールは遂に自分に役割を与えられた事に緊張からか、胸が高鳴るのを感じました。

ーーーしかし、やる気十分なシャルロットに比べて、不安そうな沙霧を見詰めると、その不安を取り除こうと少女の小さな手を握りました。


「大丈夫だってば。ここから出たら、一緒に色々出掛けるんだから…エルクさんを信じて?ね!」


沙霧は不安さこそ拭えない物の、それでも今は役割に准じる事に。エルキュールの暖かな気持ちに応える事に注力しました。


「それでは皆!!あたしの指示に従って行動する様に!!作戦開始よ!!」


シャリアの合図と共に、皆それぞれ配置に着きました。




ーーー

ーーーーー



トラックの前に佇むエルキュールがドワーフ金属の弓を構えてます。

その後方で待機しているシャルロットと沙霧は、唾を飲み込み、その成り行きを見守って居ました。


「ーーー心を静かに。………目標を見定め………。」


するとたちまち、エルキュールの右腕と左手が真っ黒なヘドロの様な物に覆われ、それはそのままドワーフの弓を侵食して行き、黒く凶暴な、命を喰らう禍物へと変わって行きました。

そして、左手から生み出した、黒き矢を森の境界へと射放ちましたが…。


結果は変わらず、何も為さないまま、境界は普遍そのものでした。




「足りない……もっと……心を虚ろに……」



エルキュールは心を深く深く…虚無の海へと沈めます。

そして、黒き衝動は、光すら喰らう暴虐の漆黒は、エルキュールの首筋から登り上がり、顔面右半分を真っ黒に染めて行きました。

優しさの欠片も感じさせないその右半分は、冷たい狂気さえ感じさせ、感情を失ってしまったのかとさえ錯覚させてしまう程でした。


「目標の情報データを…」


そして、左手から生まれた黒き暴虐の雷は、光も闇も、物質も霊的な存在すら喰らう。悍ましい焔となって揺らめいて居ました。


「回収します。」


淡々と紡がれたその言葉は、普段のエルキュールの明るさ等、微塵も感じさせず。只々作業を務めるだけのロボットの様に無感情で、後ろで待機しているシャルロットと沙霧の心を深く刳り、死を決意させてしまう程の無感情な殺意に満ちて居ました。



一閃。



放たれた黒き線は、通り抜けた道の何もかもを喰らい尽くす様に真っ黒で、生物、無生物、関係無く。只々作業を熟す為だけに森の空気も命も、喰らい尽くして通り抜けて行きました。


「ーーー見えた!!外の世界よん!!沙霧ちゃん!!やって!!」


シャリアの声も虚しく、沙霧はピクリとも動きませんでした。


「沙霧ちゃん?………ちょっと!ふざけてる場合じゃ「おねーちゃん!!」


シャリアの苛立つ声を置き去りにして、妹であるシャルロットから悲鳴の様な声が聞こえて来ました。


「エルおねーちゃんが…エルおねーちゃんが!!」


シャリアはその声が聞こえるなり、トラックの上部から飛び降りシャルロットの元へと駆け付けると…


「………!?」


背中から黒い羽根を生やして沙霧やシャルロットに向けて弓を向けて居るエルキュールが目に映りました。


「…マズったわねぇ………」



冷たい瞳は、感情を失ったその眼差しは、確かに大切な人達へと向けられて居ました。



「目標の情報データを回収します。」



全身が黒く染まり、露出している肌は陶器の様に白い肌よりも更に白く。寧ろプラスチックの様に人間性を失って居て、まるで星蝕者、正しくは星骸核の妖精の様な姿へと変わったエルキュールは、空中に何本も錬成した桃色の矢を、シャルロットに、沙霧に、シャリアに、トラックへと向けて居ました。

髪に残る桃色の線だけが、エルキュールの心を残して居る様に見えて、実に不気味です。



「早速誤算が生まれるとか、聞いてないわよん?」



先程のエルキュールの一撃の所為で森が怒ってるのか、ザワザワと木々の騒めきが聞こえ始めると、森に潜む魔物達が寄って来る気配が漂い始めました。

パステルの森の魔物は皆一様に可愛らしい見た目なのですが、実際は魔物なので、生態は全く可愛く有りません。

生きる者の血肉を喰らい、快楽を求めて殺戮を楽しむのが基本的な魔物の生態です。

このパステルの森の中に於いては、撒き散らされた血肉や臓物はキャンディーやチョコレート等に、可愛く変化してしまうのですが。


ーーー予想外の出来事に、集まって来る魔物の気配に、シャリアは焦っている様に見えました。

…いえ、見えただけでした。


「ねぇ、………エルキュールちゃん?」


両手に構えたウィンチェスターM1887/1901、ソードオフ・ショットガンを左右水平に構えたかと思うと、そのまま眼前に持って行き、焦った表情等其処には欠片も存在せず、楽しそうに楽しそうに顔を歪めて嗤い。

残虐で野蛮で、獰猛な瞳を、片目だけの所為で更に兇悪に見えるその眼光を、目の前の星骸核へと向けて、愛しそうに見詰めていました。

次第に、トラックの在る後方からタタタタタンと継続的な破裂音が聞こえ始め、魔物共に寄る襲撃を受けて居るのがよく理解る中、殺意に捉われ始めたシャリアは、ブツブツと呟き続ける愛する者(エルキュール)へと向けて言いました。




「こうなったら、死ぬまでとことん愛し合いましょう?…愛しいエルキュールちゃん。」





ーーー

ーーーーー

どうしてこう、スッと終わらせてやれないんですかねぇ?

自分は。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ