104.スロートリングの旅事情。
こんにちは、エルキュール=グラムバルクですよー!!
何故か久し振りに感じるのは何故なんですかねー!?
アリシアがシャリアさんの商業団体から離れてから、六ヶ月が経ちました。
その間に色々と有りましたよー。
例えばですけど、とある広場にトラックを留めてキャンプの設営をして居た時の事でした。
沙霧ちゃんが興味本意で竜の勇者さん達一行にどうやって負けたのかを皆さんに聞いてみたら、マックスさんとライネルさんは言いづらそうだったんですけど、シャリアさんが笑いながら
「アタシと戦ってた薙刀トカゲがさぁ、「銃で戦うな!!武人として戦え!!」とか言って来た訳よ〜。でもアタシは別に武人じゃないし?蛇腹剣やら何やら駆使して戦ってたんだけど、まぁ膂力の違いよねん?結局押し負けた訳で、後は連行?」
どうやら勇猛さ………では無く、獰猛さを語った様でした。
すると続く様に渋々とマックスさんがーーー
「俺は飛竜に乗った騎士との戦いだったっす。姐御を真似て挑発してみたんすけど…」
どうやら汚い手段を使った事が自分の中で腑に落ちなかったみたいでした。
「あーらぁマックスってばやるじゃないっ!戦術の基本を覚えたのね?それでこそアタシが育てたかわいいマックスよん!」
「いえ、俺も普通に技術で押し負けたんで、姐御と変わらないっす。ーーーあの槍捌き、見倣う所が多い戦いでしたっす。」
こう見えてマックスさんも中々の武人気質なのかも知れませんねぇ。
「ーーーで、クソ山賊はぁ?」
あぁ、そう言えば居ましたねぇ。
「ーーーーた。」
はい?
「………掴んで飛ばれて頭から地面に落とされた。」
ーーーはい?
「だから、腕を掴んで封じ込められて、そのまま上空に飛ばれて、俺様もあのイケメン鬼人野郎も頭っから地面に叩きつけられたんだっつーの!!イケメン鬼人野郎は頭打って無かったっぽいけどな!!」
………ナントカ落とし?バイ○ス○ークとか、アラ○マ落としとか、某大御所漫画家様のアレとか。
「へぇー?ソイツ忍者か何か?」
シャリアさんが笑いながら言ってますけど………え?居るんですか?ニンジャ。
「ふむふむ、流石我が軍は精鋭揃いであいふぇふぇふぇ!!ふぁなひへふははいーーー!!!」
シャリアさんが嫌がらせの様に沙霧ちゃんの頰を抓ってますよ?
私達、この子に監視されてるんですよ?
報告されたら今度こそコロコロされちゃうんですよー!?
「まぁ何にしても、アタシ達の戦力アップが最優先事項………な訳有るかい!!アタシ達は商人よ!そこ忘れちゃダメじゃない!!」
そう言って私の胸を揉みしだいて来ました。
「んんっ……シャリアおねーさま、やめてよぉ…。そーゆーのは好きな人にして欲しいからぁ。」
はい、私の言葉に一瞬こっちをチラッと見たピオスせんせーを見逃すエルキュールちゃんじゃ無いですよー?
なんかもうクールだけどちょっと恋愛下手に見えるピオスせんせーかわいいなぁもー。
「んで、エルたそはどうしてまたコロコロされちゃった訳よ?」
ん?私に話題が降って来ました。
「エルおねーちゃん、死んじゃったの…?」
涙目で私を心配そうに見詰めるシャルロットちゃんが可愛すぎて………このまま喰っちまおうか?
「んんっ、……えっとね?アリシアが殺されると思って、ついシャリアおねーさまに貰ったナイフを突き立てたら、その後はよく覚えて無いけど刺されて、そんな感じ?」
私の言葉に何やら深く考え込んでる様子のシャリアさんでしたけど、すぐに質問して来ました。
「所でエルたん?もう一度聞くわよん?前世の名前と性別は?」
もうこれを聞く事が一種の決まり事みたいになってました。
「この前も言った筈ですけどー、ジェシカ=バーンズですよー?かわいいモノだーい好きな享年十八歳の女の子ですってばー。」
シャリアさんは何かを納得した様に、ピオス先生も何やら溜息を吐いてました。
「うんうん、取り敢えずアレからまだ死んで無いみたいねん?ーーーエルキュールちゃん、ちょっと真面目な話をするわよん?」
シャリアさんが深刻そうな面持ちで語り始めたので、私も姿勢を正して聞きました。
「アスクレピオス先生の診断だけど、エルキュールちゃんが死ぬ度に人格が変わってる事は前に話したわね?」
私はコクコクと頷きました。
「まだ経過を見てみないと分からない事だけど、多分エルキュールちゃんは多重人格症?らしいのよ。正式な名前は忘れたから、アスクレピオス先生から聞いてねん。いつ今の人格が消えて、元に戻るかも分からないし、奇妙な記憶の繋ぎ方からも、本当は別の次元のエルキュールちゃんに置き換わってるって言う可能性もあるって事らしいんだけどーーー」
ーーーつまりこういう事です。
自分の人格が多重性の物で有れば、極度のストレスから来ている物かも知れないので、いつか消えて元に戻る可能性。
荒唐無稽な話では有るけど、別次元の私がいて、私が死んだ際に死ななかった私に置き変わってるとしたら、二度と戻らない可能性。
または単に頭の病気で私が別の私になる事でストレスから逃げてる可能性。
ーーーと、この様な診断を下された訳ですが、結局の所、実際にもう一度死んでみないと分からないそうです。
うん、本当に恐ろしい話ですよ。
「………エルクさんも大変なのですね。」
ーーーと、私の背中をぽむぽむ摩って慰めてくれる沙霧ちゃんでしたが、エルクって何?ヘラジカか何か?
「ーーーで、勘違いしないで欲しいのは、アタシ達は何もエルキュールちゃんに死んで欲しい訳じゃ無いし、そうならない様にしっかり守ろうって話になった訳よ。」
ピオス先生をチラッと見ると、小さく頷いてました。
何これ優しい嬉しい。
「そもそもだけどぉ、エルキュールちゃんをファルネリアまで届けた時点で契約は完了してた筈なんだけど、コッチの不手際と色々有って今も一緒に旅を続けてる訳じゃない?ーーーつまり、アリシアちゃんが居たから良かった物の、今は完全にコッチの都合で連れ回してる状況だから、ここからはエルキュールちゃんの意志で決めて欲しい訳よん。」
「えーーーっと、それはつまり…今後もシャリアおねーさま達と一緒に行くか、ファルネリアに帰って悪党商人の玩具にされるか、それかまたはここを抜けて一人でアリシアを探すか選べって事?」
シャリアさんはコクンと頷いてました。片目が眼帯に覆われた、美しくも真面目な表情でした。
私は………。
ー
ーーー
ーーーーー
私がシャリアさん一行に着いて行くと決断をしてから一ヶ月程。
スロートリングの中心付近を旅して居た時の事でした。
私はシェリーおばさんに服の仕立て方を習いながら、シャルロットちゃんと沙霧ちゃんを着せ替え人形にしてはハァハァと変態顔を晒して居た頃。
「あっちゃー、道間違えたかしらん?」
シャリアさんの不穏な発言がトラック内に響いてました。皆思い思いに過ごして居たのですが、急にトラックが停止しました。
運転手のマックスさんとシャリアさんが地図を広げて何かを話し込んでいましたが、どうにもおかしな状況に陥ったご様子でした。
私がシャルロットちゃんの着せ替えに勤しんでた時、荷台の方へやって来たシャリアさんから一言。
「残念ながら我々シャリア商隊一行は、パステルの森に捕まってしまいました!!」
シャリアさんが意味のわからない事を言い始めました。
パステルの森とはきっと地名の事なのでしょうけど、捕まってしまいました?
間違えて入った事を言ってるだけですよね?
「パステ………って、はあああああああああっ!!!?」
私の着せ替え人形になっていた沙霧ちゃんが驚愕の表情でガタガタと震え始めました。
え?なになに?そんなマズいの?
「取り敢えず何とか抜け出す方向で考えて見るけど、一年以上ここに留まるとヤッベー状況になるので皆様、是非とも全力で力を貸してねん?」
意味が分からない私は取り敢えず小窓を開いて外の状況を確認すると………
「え?何これかわいい…」
視界一杯にパステルカラーで可愛らしい絵の様に丸みを帯びた木々が広がって居ました。
よくよく見ると、木々の間に可愛らしいバンビの様な動物やら、白くてかわいいフワフワした動物やらが此方を覗いてるでは有りませんか。
え?これ本当にヤバい状況なんですか?
「おねーちゃん、シャルおそとに出たい!!」
「えっ、ちょっ…シャルさん!?」
シャルロットちゃんが懇願し、沙霧ちゃんがあわあわと慌てふためいてました。
私にはその光景がなんとも可愛らしくって…。
「ダメよん。」
一喝。
シャリアさんがそれを許しませんでした。
「アレはこの森の所為で可愛く見えてるだけで、本当は怖〜い魔物かも知れないのよん?だーかーらー、ダーメ!」
…なんとまぁ、流石の私も肝が冷えました。
ーーーしかし、何故一年以上居ると駄目なんでしょうか?
「ここ、パステルの森にはねん?一年以上空気に晒されてると、自分達もパステルカラーで可愛らしい魔物に変えられてしまうって噂が在るのよん。一応出て来る事は出来るっぽいけど、森の空気には麻薬みたいな成分が含まれてて、一度吸っちゃうと中々出て来れなくなっちゃうらしいのよん。それから、電波障害が起こってて、外への通信も不可能。助けも呼べないって訳よ。」
えぇ〜…。
名前の割に随分と恐ろしい森の様でした。
「ガッカリ…」
シャルロットちゃんがかなり落ち込んでました。
沙霧ちゃんはホッとしていました。
「………って言うか、そんな恐ろしい森にどうして入っちゃったの?」
私の質問に、シャリアさんはタハハと笑いながら。
「だーかーらー、森の方がアタシ達を捕まえたのよん。」
…はい?
「要するにパステルの森は、森の形で生きてる生物みたいな物なのよ。」
………ほげー。
なんて言うか、ファンタジックなら何でも良いんですかねぇ?この世界は。
私達が話してる外で、沙霧ちゃんが一人表情を青ざめてました。
「あわわわわわわっ若への定時連絡が…!!このままだとスロートリングが火の海に……っ!!」
こっちはこっちで恐ろしい事を呟いて居ました。
からのエル子さん達の旅です。




