11 ルーツ
クラウディア+α 視点です。
私が「佐倉倫子」だった時、私には、大好きなお友達がいた。
かわいくて、勉強もできて、運動神経も抜群で、優しくて、正義感にあふれてて、お金持ちなのに全然偉ぶらなくて、人望もあって、生徒会長もこなしちゃう、自慢の友達だった。
ただ、方向感覚だけはおかしかった。マップの見方もわからないし、道を1回でも曲がると来た方向がわからなくなるし、出口が2方向にあるお店に入った時は、どこの出口から出ても「入った時の逆」に行こうとするので、よく迷子になっていた。「りんちゃーん、助けてえ~」とラインが入るのは日常茶飯事だったし、「どこにいるの~」のラインスタンプをとにかく使うので、みんなが飽きないように(?)大量に持っていた。
それ以外は非の打ちどころのない友達。きっと誰よりも幸せになる人だと思っていた。
それなのに、居眠り運転のトラックが歩道につっこんできて死んだ。
一緒に歩いていた私も一緒に死んだんだけど、自分のことより、「なんで彼女が!」っていう思いのほうが強かった。
その時に「可哀想だから転生させてあげる」という声が聞こえたので、「私はいいからきいちゃんを転生させて! あの子はこんなとこで死んじゃいけない子なのに! 女性首相にだってなれたかもしれないのに!」と騒いだら、「希衣という子も転生するから安心して」と言われた。
それで安心して生まれ変わることにした。能力値を選ばせてくれるというので、迷いなく「危機回避」に全振りした。
あれほど恵まれていたきいちゃんが、たった一度の危機で将来を失ってしまうのだもの。才能だのルックスだの、どれだけあったって意味がない。生きてるだけで丸儲けなのだ。生きるためには危機回避! 前世で学習したからね!
◇◇◇
(だからきっときいちゃんも、生まれ変わってるはずなんだけどな…。この世界とは違うとこに行ったのかな…。もしかして、方向音痴だから、どこかで迷ってるのかな…)
自分が『幸せだな』と感じる時、いつも少しだけ罪悪感を覚える。
きいちゃんは今、幸せでいるんだろうか。私だけこんなに幸せでいいんだろうか。
今もアラン様にぎゅっとされて、めちゃくちゃ幸せだ。急に地面の石を拾いたくなってかがんだら、こけそうになっただけなのに、アラン様があわてて抱きとめてくれたのだ。その横を何かがかすめていった気がするけど、「毒矢だ! 王室反対派に違いない! 捕まえろ!」とか護衛の人が言ってた気がするけど、私はもう、『アラン様が守ってくれてる…』という幸せでいっぱいで、何も気にならない。
(きいちゃん、私はこの世界で幸せに生きてるよ。たとえ会えなくても、どうかきいちゃんも、どこかで幸せに暮らしていますように)
◇◇◇
クラウディアは知らなかった。きいちゃんも同じ世界に転生するのだが、「運に全振り」したため、クラウディアの「危機回避能力」とかぶる部分が多く、不具合が起こる危険があったため、生まれ変わる年代が変わってしまったことを。
しかし、きいちゃんの「りんちゃんに会いたい」という気持ちと強運があるため、天が「そうそう同じ願いがかぶることもないだろ」と判断した50年後に再会できるのであった。




