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世界最強の殺し屋は異世界で静かに暮らしたい 〜最凶の殺し屋一家の三男が、最弱の神王候補に雇われた件〜  作者: 霜月ネル
第6章 水着回は6話目くらいがちょうどいい

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水族館では神秘的

 アリベルが海に近付くと、海面全体がゆらりと蠢いて波が止まった。


「な、何……?」


 胸と一緒に気も大きくなっていたアリベルだけど、何やら巨大な気配に気付いて動きを止める。

 さっきみたいに半透明の触手が、静かに海面から伸びて砂浜を走る。

 触手がアリベルの足に絡まる前に、俺はアリベルを抱え上げて後ろに飛び退いた。


「あ、ありがと……」


「触手が厄介だよなぁ。でも、竜石を取れば消えるんだろ?」


「……うん、多分」


「アリベル、顔が赤いけど、どうした?」


「何でもないわよ!」


 奇しくもお姫様抱っこになってしまって、アリベルは俺の腕の中で大きくなった胸を隠して赤い顔をしていた。

 前は全裸を見られても元気に斧を投げてきたのに、胸が大きくなったから恥じらいが生まれたのかもしれない。


「さっき、海の中で石を見つけたんだけどなぁ」


 でも、水の中に潜ったら、謎の力で身動きが取れなくなって追い出される。

 海面から次々と伸びてくる触手をアリベルを抱えたまま砂浜を右に左に逃げることしかできない。

 俺が忙しく働いているというのに、幼児体型のみむねは全然狙われず、1本伸びてきた触手を捕まえて遊んでいた。

 みむねに掴まれて、透明な触手はびちびちと跳ねている。あんまり嬉しくないけれど、その動きからして魚介類っていうのは間違いないような気がする。


「みむね、一応聞いておくけど、その触手を引っ張って本体を引き摺り出すってことはできないか?」


「よし!やってみる!……あー!!」


「みむね、どうした?」


 いきなり叫んだみむねに呼びかけると、みむねは腕を抑えて駆けてそのまま俺の腰に抱き着いた。

 アリベルを抱えて走って逃げているのに、みむねまで引き摺ることになって重くて邪魔だ。みむねはソフィアと砂遊びをさせておけば良かった。


「なんかびりっとしたー!痛いー!」


「びりっと……?何だ?」


 俺のスピードが落ちたせいで、アリベルの足に触手が巻き付く。

 その触手を掴んで千切れないように慎重に引き寄せると、海面全体がずもももももと丸く持ち上がった。


「なんつーか……海坊主みたいな……?」


 触手の先には、巨大な透明の半球が海面に浮かんでいた。

 海の中で透明な体は海水に混ざって見えない。でも、海中に本体と触手がひしめいているんだろう。

 さっき俺が海の中で動けなくなったのは、多分触手で掴まれたからか。

 それはどうでもいいんだけど、海坊主は妖怪にしても名前があんまり神秘的じゃない。


「ルカ……なんか、残念そうな顔してない?」


「うーん……」


「まさか、ここにきてやる気なくなったりしてないわよね?ね?!」


「心配しなくても倒すって。ちょっと待ってくれ。今、なんとか気分を盛り上げようとしてるところだから」


「あいつ、みむねを刺したんだぞ!!バラバラにしてやる!」


 みむねは触手にやられた腕を抑えて、お前が倒せとでも言いたげに、後ろから俺をぐいぐい押してくる。

 みむねが倒しに行ってくれないかと思ったけど、今のみむねは主力の武器の日本刀を持っていない。

 さっき砂浜で埋めて遊んでいたから、ビーチパラソルのところに置いてきたんだ。


「みむね、刺されたのか?」


「うん、チクってして、びりってした。まぁ、眠水家秘方の漢方があればこの程度、一瞬で治るがな!」


 そう言いながら涙目のみむねの腕には、赤い痕が残っている。

 触手がデカいだけあって痕もデカいけど、普通のクラゲに刺されたような痕だった。


「つまり、あの神竜はデカいクラゲかぁ……うーん……」


「どう?ルカ、やる気になった?」


「ギリ、なしよりのあり。クラゲって透明でかっこいいし、あんまり食べないし」


「みむね、食べたことあるよ。黒いのでしょ」


 みむねはきくらげをクラゲだと勘違いしている。

 ここで説明してやることもないだろうと俺はアリベルを下してみむねに押し付けた。

 透明の体の天辺に緑色の石が付いていて、太陽の光の下でキラキラと光っていた。


「海中に入らなければ大丈夫だろう。潜らないうちに倒してくるから、みむねはアリベルと触手を抑えていてくれ」


「わかったわ……もしかして、巨乳の形とか柔らかさを仲間だと思って引きずり込んでたのかもしれないわね」


 アリベルが謎は全て解けた、みたいな顔をしている。

 でも、俺は単純に巨乳が好きな人間味のある神竜なんじゃないかと思う。

 だって、紅竜の小紅があんな感じだし。

 まぁここで緑竜の気持ちを考え始めても仕方ないし、俺はその辺はうやむやにして海に向かった。

 水面を蹴って、伸びてくる触手を切り落としながら本体に近付く。

 何本か手足に巻き付いてきたけど、力を込めて引くとぐしゃっと潰れて水に戻った。

 電流で刺されるような痛みがあったけど、クラゲに刺されてるだけだと思うとそれほどテンションも下がらない。

 海の中に戻っていこうとする半球の真ん中にある緑の石を掴む。

 少し力を入れて捻ると、ぱんッと風船が割れるような音がして神竜の体が消えた。

 これだけで倒したことになるなんて、やっぱり緑竜は弱いのか。

 って、ちょっと気を抜いたけど、巨大な神竜の体がいきなり消えたせいで、海面が大きく揺れていた。


「おぉ……?!」


 巨大な波が足元で持ち上がって、慌てて逃げようとしたけど、足が刺されたせいで痺れてうまく動かない。


「ルカ!」


 波に巻き込まれる直前に、アリベルが叫んで海に飛び込んでいくのが見えた。

 泳げないくせに、と思う間もなく、視界が海に沈んだ。

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