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世界最強の殺し屋は異世界で静かに暮らしたい 〜最凶の殺し屋一家の三男が、最弱の神王候補に雇われた件〜  作者: 霜月ネル
第6章 水着回は6話目くらいがちょうどいい

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竜騎士候補、Cランクから始める

 ソフィアが身を隠している屋敷に神王の手先でもある神殿職員のミリアを呼び入れるのはまずいとのことで、ミリアとの待ち合わせはいつもの白猫堂になった。


「じゃーん」


 掃除をサボって俺のジュースを勝手に飲んでいたみむねに、カードを見せびらかしてみる。


「何だ、それ?」


「竜騎士候補のライセンス」


「か、かっこいい……!」


「だろ?」


 思った通りの反応が返ってきて満足した。

 みむねにクリームでべたべたの手で触られる前に財布にしまう。


「狩刃くん、それってこの前倒した神竜の?」


 店員として真面目に働いている委員長は、店長に休憩をもらってから俺の隣の席に腰掛けた。

 テーブルの上に薄いドレスに包まれた大きな胸が乗って、透けそうになっている。

 でも、しばらくこの店で働いていて慣れたのか、高校の制服を着ている時と同じように全然恥ずかしがっていなかった。


「すごいね、狩刃くん。それで生計立ててくの?」


「収入が安定しなさそうだから、もう1つくらい副業が欲しいな」


「そうだね。生き物が相手の商売って大変だよね。あ、ジュースのお代わり持って来る」


「あーあ、狩刃、うっかり神竜に負けて死んだりしないかなぁ」


「おい、委員長に言いつけるぞ」


「違うよー!みむね、死ねとか言ってないよー!」


 みむねと一緒に遊んでいると、待ち合わせしていたミリアが姿を現した。


「狩刃ルカ様ですね、お時間いただきありがとうございます」


 神殿の受付の外で見るミリアは、立って向き合うと思っていた以上に小さくて、小動物みたいだった。

 前はかけていなかった縁なしの眼鏡に、スーツのような服装で真面目キャラに見える。


「失礼します」


 そう言って、俺の正面に座ったミリアは、資料をどさりと置いた。


「狩刃ルカ様、現在のランクはCランクです」


「へー?竜騎士候補にもランクがあるのか」


「ええ、10ランクありまして、上から6番目です」


「つまり、下から5番目ってことか……」


 いまいち低い評価にちょっと不満に思いつつ、ミリアが山のように置いた資料を眺めた。

 どうやら一般市民から集めた緑竜の目撃情報がまとめられているらしい。

 でも、竜騎士になれる黒竜とか銀竜の情報はない。


「で、これは……?」


「緑竜を倒すと、ランクがどんどん上がっていきます。そうすれば、褒賞金の額もどんどんアップしますよ!がんばりましょう!」


「俺は黒竜とか銀竜を倒したいんだけど」


「それは後で考えることにして、がんばりましょう!」


「うーん……」


 ミリアのこの必死な様子から、多分、神殿ではノルマみたいなのがあるんだろうなとわかった。

 神殿の職員って、意外と過酷な営業マンなのかもしれない。

 俺はミリアに少し同情しつつ、テラス席から店内に入った。

 奥の目立たないテーブル席で、アリベルとソフィアがケーキの皿を山のように重ねている。


「アリベルって、ライセンス登録してないんだっけ?」


「してないわ」


「ふーん、なんで?」


「何でって……」


 アリベルは答えを濁すと、俺を無視してケーキを食べ続けている。

 これは、何か知っている態度だ。


「なんか、神殿の職員が体育会系なんだけど、あれはどうした?」


「あらあら、あそこは相変わらずですね」


「ソフィア、何か知ってるの?」


「神殿の職員は、神王から神竜の管理を任されているんです。現神王は神竜を減らすことに熱心なようで、職員も苦労しているみたいですね」


「そうか、それでライセンス登録した奴にザコ竜の討伐を押し付けてくるのか……でもさぁ、竜騎士候補ってどうせ沢山いるんだろ?俺じゃなくてもいいのにな」


「それは……ですね……」


 ソフィアも、微妙な笑顔になって言葉を濁す。

 そして、聞こえないふりをしてケーキを食べ続けているアリベルに、助けを求めるように視線を向ける。


「アリベルも、神竜の討伐を頼まれるから登録しないのか」


「私は軍にいたからそんな面倒くさいこと頼まれないわ」


「えー?あの受付の職員、人を見て選んでるってことかよ」


「そうよ。暇そうな田舎者が押し付けられるの」


「はぁー?俺、めちゃくちゃ忙しいっての」


「そうなの?ルカの今日の予定は?」


「昨日収穫した林檎煮て、アップルパイでも作ろうかな」


「暇じゃない」


「多忙極まれりだっつの」


「まぁ、どうせ緑竜の情報しか来ないけど、黒竜にたどり着く可能性もゼロじゃないし、頑張りなさいよ」


「そうだよなぁ……あ、もしかして、俺が暇そうな田舎者に見えるように俺1人で受付させたのか?」


「そうね、私、首都での生活が長いから。都会育ちがつい滲み出ちゃうのよね」


「迷子になってたくせに、よく言うよなぁ」


「なってないわよ!人に流されただけでしょ!」


「都会育ちは人とぶつかったりしないんだよ」


「ぶつかってないわよ!身動きが取れなくなっただけ!」


 アリベルが騒ぎ出して、俺は手を出される前にテラス席に戻った。

 みむねを揶揄って遊ぼうと思ったけど、やっぱりまだミリアがいて、今度はカラー刷りの派手なパンフレットを突き出してくる。


「狩刃ルカ様、こちらのプランはいかがでしょうか?!」


「おお……熱い営業だなぁ……」


 でも、保険だの不動産だのの営業とか、今まで縁がなかったから、そんな熱烈な思いをぶつけられると気持ちが傾いていく。


「この、『もしもの時に備えて死亡保障付きBプラン』っていうのは?」


「さすが、お目が高い!こちら、初めての方には特にお勧めのプランとなっております」


「狩刃のくせに死亡時の保障を求めるのか?」


「大人な話してるねぇ……」


 みむねと委員長は、何にも関係ないのにミリアの軽快な営業トークに引き込まれて、身を乗り出して真剣に聞いていた。


「あ、この黒竜・銀竜討伐特約オプションってのは?」


「え……付けられますが……よ、よろしいんですか?!」


「うん。どうせ倒す予定だし」


 ミリアが目を丸くして固まった。

 アリベルは店内から顔を出して、呆れたようにため息をつく。


「……ルカ、本当に倒せると思ってるの?」


「あるよ。ソフィアのためだし、褒賞金も欲しいし」


「ならもっと真面目に取り組みなさいよ……」


 アリベルはそれだけ言って、また店内に引っ込んでいった。

 ミリアはまだ固まったままだ。

 多分、ノルマの数年分を一気にクリアしたんじゃないかと思う。

 でも、なんとなく不安そうな顔をしているのが気になった。

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