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世界最強の殺し屋は異世界で静かに暮らしたい 〜最凶の殺し屋一家の三男が、最弱の神王候補に雇われた件〜  作者: 霜月ネル
第4章 新たな仲間(?)が加わった

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初めての神竜が芋虫だった件

 委員長のおかげで外の人間を操っている奴の居場所はわかったけど、不確かな状況で神竜がいるところに突っ込んで行っていいものか。

 俺は神竜を見たことがないから、どんなものがいるのか想像もできない。


「ソフィア、どうしようか?」


「神竜の気配はそっちの方に感じますね。私にも糸は見えませんが……行ってみる価値はあるかと」


「走って行けば外の奴らも撒けそうだし……行ってみるか、アリベル」


「そうね。危険な神竜は倒せるものなら倒しておきたいわ」


「じゃ、委員長、一緒に来てくれる?」


「うん、いいよ。狩刃くん」


「狩刃ー何しに行くの?」


 みむねが、面白そうな気配を嗅ぎつけて俺の腰に抱き着いて来た。


「神竜退治」


「神竜……?何それかっこいー!みむねも行くー!」


「そっか、好きにしろ」


 みむねは1人で大丈夫だろうから、俺は委員長を背負ってソフィアを脇に抱えた。

 ソフィアは小柄だけど委員長は俺と同じくらいの身長だし、2人も抱えるとそれなりに重い。

 でも、ソフィアが重いとか文句を言ったらアリベルに後で何発殴られるかわからないから黙っていた。


「狩刃くん、重くない?」


「大丈夫だよ、委員長。ソフィア、車椅子は後で取りに戻るんでいいよな?」


「ええ、気にしないでください」


 天窓から外に出て、群がっている人の背中を踏み付けながら先に進むと、みむねとアリベルが後ろから続いて来る。


「捕まらなければこのまま逃げ切れそうね」


「ああ、ゾンビってのは大抵動きが遅いからな」


「狩刃くん、この人たち死んじゃったの?」


 委員長が肩越しに聞いて来て、俺はさぁと首を傾げた。

 しかし、ここにいる人間が皆死んでしまったらこの街が無くなるから、買い物が不便になって困る。


「生きてるといいよな。で、委員長、どっち?」


「あっち。このまま真っ直ぐ」


 委員長の指差す方に向かって街を出て、そのまま森の奥まで進んでいくとすぐに妙な気配に気付いた。

 何か大きな力を持つ者が森の奥にいる。


「2人はここで待ってて」


 気配の中心に向かう前に、委員長とソフィアを高い木の枝に下ろした。

 ここなら操られた街の人間が来ても届かない。


「狩刃くん、大丈夫?」


「うん、ちょっと行って来る。委員長、ソフィアを頼むな」


 木を下りて森を進むと、先に行ったアリベルが木の影に隠れて様子を窺っていた。

 初めて見る神竜がどんなものかと期待してアリベルの頭の上から覗くと、木をなぎ倒して巨大な物体が横たわっていた。


 その神竜は、一言で言い表すなら、でっかい芋虫だった。

 青い6個の目の他に、頭部の真ん中に緑色の石が付いている。

 白い巨大なぶよぶよした体に、口の辺りから白い糸の束を吐き出していた。


「あの糸が街の人間を操ってた訳ね」


「でも、途中で見えなくなってるな。なんで委員長は見えたんだろう……」


「それは気になるけど……あの竜は緑でしょ。多分、私でも倒せるはず」


 アリベルはソフィアを狙って来た神竜が許せないのか、すでに剣を抜いてやる気満々だった。

 対して俺は、全然テンションが上がらない。

 虫は嫌いじゃないけど、初めて倒す神竜が蚕の幼虫みたいな面白可愛い奴っていうのはちょっとどうなんだろう。


「あ、みむねにやらせようぜ」


「あの子なら、委員長とソフィアを守るって戻って行ったわ」


「そうか……」


 はしゃいでいたから押し付けようと思ったのに、すでに逃げられた後だったか。

 もしかしたら眠水のくせに虫が駄目なのかもしれない。そうだとしたら良い弱点を知った。


「俺、あんまり虫好きじゃないんだよなぁ……特にああいう芋虫、仕事サボった時に夕飯で食わされたことあってさぁ……あーあ、嫌なことを思い出した」


「気持ち悪いこと言わないでよ!いいからさっさと倒すわよ!」


 アリベルが木の影から飛び出した。

 一直線に神竜に向かっていく様子から、防御のことは考えていない。

 あの芋虫を前にして警戒しろっていうのが無理な話だけど。


 でも、神竜の青い目が赤く変わったのに気付いて、俺は一気に警戒モードに入った。

 こういう虫型の怪物の目が赤くなったら、怒りで暴走する合図だと相場が決まっている。


 何が起きるのかと身構えたら、すぐ傍の繁みから人が飛び出して来た。

 神竜の近くにいるせいか、街にいた人間に比べて動きが機敏だ。ゾンビゲームだったら第2ステージに出てくる厄介なタイプ。

 猟銃を背負っていて、両手には獣の解体に使うような大振りなナイフを構えている。

 それがアリベルに触れる前に頭を叩き潰してやろうと思ったけど、操られている人間は殺してはいけないんだったと思い出して少し攻撃が遅れた。

 そして、ぶっすりと音がするほど見事に俺の腹にナイフが突き刺さる。


「ちょ、ちょっと!大丈夫?!」


「平気平気」


 アリベルが俺の腕を掴んで、顔色が青くなっている。

 俺の服がみるみる赤く染まっているから、傍から見れば大事のように見えるんだろう。


 この程度、ゆぅ兄が機嫌が悪い時にテレビのチャンネルを勝手に変えたら食らう程度の怪我だ。

 しかし、虫に操られた奴に刺されたのは若干ムカつく。


 シューシューと怒ったように鳴いている神竜から離れて、俺はアリベルを木の陰に押し込んだ。


「俺がやるから、アリベルはちょっと待ってろよ」


「で、でも……!」


「アリベルも操られるかもしれない。委員長とみむねが正気なんだから、多分異邦人は操れないんだろ」


「わかった……竜石を狙って。あれを取れば緑竜は灰になるわ」


「なーんだ、それだけでいいのか」


 俺は足に隠していたナイフを握った。

 あの芋虫を輪切りにしないと倒せないとかだったらちょっとキツい絵面だなと思っていたけど、石を抉り取るくらい一瞬で終わる。


「そんな小さなナイフじゃ危険よ!私の剣を……」


「いいんだよ、慣れてる得物の方が」


 アリベルが差し出した剣を断って、俺はナイフを一振りして気合いを入れてから芋虫……じゃなくて神竜に向き合った。

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