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ガルドフェルト帝国戦記  作者: やしき丸
第二章 ザカルシュとの戦い編

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『前座』の終わり

ジルカにある王城に入った俺達は丁重にもてなされた。


それはそうだろう。


俺達の機嫌を損ねれば、ザカルシュはすぐさま滅亡してしまう。

彼らはそんな風に考えているはずだ。

しないけど。




ザカルシュの王はザカルシュ・ウルと言う。

代々受け継がれる襲名制で、ザカルシュの王は全てザカルシュ・ウルと言う。

『次のウルは誰だ』みたいな感じで使われるらしい。


今代のザカルシュ・ウルは褐色の肌に金髪の長い髪を持った若い青年だった。

やや釣り目な瞳には、今は諦めの色が濃く浮かんでいる。


「我らを生かしてくれた事、感謝しております」


そう言って今代のザカルシュ・ウルは俺に頭を下げた。



現在俺は玉座に座っている。

本当は立ったまま会議室かどこかで話そうと思っていたのだが、目の前の元王が『どうぞどうぞ』と勧めてきて、あれよあれよと玉座に座らされてしまったのだ。


「私達は略奪者ではない。ザカルシュは正当な戦いによって手に入れた。戦争は終わり、これからは帝国によって統治されるだろう」


「はっ。従うと決めたからには忠義を尽くし、精一杯の働きをお約束いたします」


「まだ確定はしていないが、ザカルシュには総督府がおかれ、新しい総督によって統治されるだろう。ザカルシュ・ウルには別の地が与えられると思われる。諸侯の配置も変わるかも知れぬ」


「覚悟しております」


「皇帝陛下には私からよく伝えておこう。『ザカルシュは勇敢に決戦を挑み、負けた後は潔く従った』と」


「配慮感謝いたします」


玉座に座っていると、自分が偉くなったかのように錯覚してしまう。

必要以上に偉そうに語ってしまった。


要は、『配置換えはあると思うけど、そこで大人しく領主やってね』と言う事だ。

領地をそのままにしておくと反乱のリスクがあるからね……。


ザカルシュ・ウルにはロレアーノの総督を任せるようフランツ殿下に進言するつもりだ。国の統治と言うのは非常に難しい。経験者に任せるのが一番だ。


ザカルシュには帝国側から誰か総督に任命し、ロレアーノをザカルシュ・ウルに任せる。ザカルシュ・ウルを土地から離すのも反乱を抑止するためだ。

恐らく帝国の公爵にでも叙爵されて総督に就くんじゃないだろうか。


ロレアーノの王族をどうするかはわからないが、生かして使うならロレアーノの元王をザカルシュの総督にするかも知れない。そこはフランツ殿下次第だ。



俺はザカルシュ・ウルに、ザカルシュ内の領主宛てに帝国に従うよう指示する書状を出させた。王からの指示ならほとんどの領主が従うだろう。



それを見届けた俺は、ローゼンベルク侯爵とその領軍をザカルシュに残して帝国に戻ることにした。

フランツ殿下からの知らせで、そろそろ帝国の領土奪還が大詰めに入ると聞いたからだ。


俺がフランツ殿下と合流する頃には残すは帝都のみとなっているかも知れない。

帝都は無事奪還されるだろう。


その後が問題だ。

今後の帝国の命運を左右する重要な場面がやってくる。

俺はそこに立ち会わなければならない。


「ではローゼンベルク侯爵。後の事は頼みます」


「うむ。重要な局面だ。帝都を奪還した後に卿がいなければ始まらないだろう」


ローゼンベルク侯爵は快く留守番を引き受けてくれた。


帝都奪還後こそ一番重要な場面になる。

その事をローゼンベルク侯爵もよくわかっている。




「フランツ皇帝陛下の誕生ですね。アルバート様も昇爵されるでしょう」


「昇爵かあ。あんまり出世には興味なかったけど、ここからは上の立場にいないと危ないからなあ……」


「その通りです。皇帝の右腕が男爵と言うのもない事はないですが、大きな影響力を持たねば潰されてしまいかねません」


エルザとそんな会話をしながら帝国に戻って行く。

道中に敵はもういない。



途中シェシュナ砦に寄って、残しておいた兵を回収して行く。


こまめに伝令を飛ばし、帝国の状況を把握しながら進んでいく。

やはり俺がフランツ殿下と合流する頃には、ちょうど帝都を囲む段階になりそうだ。




「やあアルバート。ザカルシュはうまくいったみたいだね。最初に分断してくれたおかげでこっちもやりやすくなったよ」


「元王のザカルシュ・ウルは生かしてあります。ロレアーノの統治を任せても良いかと」


「ふむ。確かにいきなり領土が二国分増えた。帝国の貴族だけじゃ統治は無理か。ザカルシュの王をロレアーノに置けば分断もできる。そうしようか」


フランツ殿下は俺の案を受け入れてくれた。


「ザカルシュの領主達にも恭順を促す書状を出させています。大人しく従った領主は配置換えをした後に帝国に組み込みましょう」

 

「わかった。誰をどこに置くかは任せるよ」


殿下は爽やかな笑顔を浮かべながら俺の提案を受け入れた。



今は帝国軍が帝都を包囲しているところだ。

ザカルシュ軍は籠城しているが、数ももうほとんど残っていない。


すでに戦いの趨勢(すうせい)は決している。


今は殿下が降伏の使者を送り、それが戻るのを待っている状況だ。

本国がすでに落ちている今の状況なら、恐らく降伏するだろう。




「申し上げます!帝都内のザカルシュ軍が降伏を受け入れました!」


使者が戻り、予想通りザカルシュ軍が降伏を受け入れた。

ロレアーノ攻めから始まった、長い戦争が終わりを迎えた。


「これでザカルシュは完全に落ちた。……さて、ここからだね」


「はい」


「父上はどうなったかな。……そう言えばカール兄さんもいたか」


「……」


ここまでは言わば『前座』だ。


ハインツ皇帝陛下がどうなったのか。

皇帝陛下が討たれていたとしたら、誰が次の皇帝になるのか。



ガルドフェルト帝国は、その未来を決める重要な局面を迎えようとしていた。

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