白骨の六弦
大きな音ではなかった。
だが、湊はその音を聞いた瞬間、体の奥から何かが抜けるような感覚を覚えた。
耳から入った音ではない。
胸の内側を細い刃でこすられたように、息の置き場がなくなる。
門番は槍を持ったまま膝を付いた。ダーヴも剣を構えたまま体が緊張しているように見えた。
エルゼは退かなかった。
低い弦を短く弾く。
踏み直すようなリフが地面を叩いた。エルゼの足元の土が沈み、北道の白い面に黒い筋が走る。
白い面が割れた。
一瞬だけ、黒い土が見えた。
エルゼはその黒い土を踏んで前へ出る。
湊にも分かった。エルゼの音は白く抜けた地面の表面を割り、足場を確保したのだ。
次の瞬間、ダーヴがその足場を使ってヴァルグに飛びかかった。
ダーヴの剣がヴァルグの頭上から振り下ろされる。だが、ヴァルグはそれを白い六弦で受け止めた。
剣の鍔迫り合いのように、剣と六弦がぶつかる。
エルゼはそのまま前に出て、王冠胴を盾のように構えた。低い弦を刻む。
KARATEだ。KARATEのリフを刻んでいる。
エルゼがリフを弾いている場所を中心にしてグレイアウトの白い面が割れ、黒い土が見えている。
理屈ではない。エルゼが鳴らしている間だけ、グレイアウトの侵食が止まる。
ヴァルグは六弦でダーヴを押し戻して距離を取った。
直後にヴァルグが高い一音を弾いた。
細い音が耳を刺す。ダーヴが歯を食いしばり、エルゼは思わず耳を押さえた。
湊も両耳を押さえる。とてつもない高音で反射的に耳を塞ぐしかなかった。
次の瞬間に、ヴァルグはダーヴを横から白骨の六弦で殴った。
「グゥッ」
ダーヴがその場に崩れた。剣を手にしているが立ち上がれない。
ヴァルグはダーヴの首に六弦の首を押し付けて何かのリフを弾いた。
その音は聞こえなかった。弾いているのに何も聞こえない。
だが、次の瞬間にダーヴは完全に動かなくなり、からだが真っ白になった。
「ダーヴ!」
エルゼが叫んだが、ダーヴは動かない。剣がダーヴの手から落ちた。
そして、ダーヴだったその白い土はボロボロと崩れ落ちていった。




