47.学園での戦い②
校舎の昇降口は、もはや学生たちが談笑する場所ではなかった。
ヘルメットを被り、金属バットを構えたサトウたち野球部が、血走った目で校門の方を睨みつけている。
「ヒナコッ!! 夜になるぞ!! お前どこに行って……って……えぇッ!?」
サトウが、ヒナコの背後に続くルナたちの姿を認め、驚愕に目を見開く。
「ルナちゃんを見つけたッ!! このまま教室に行くわ!! ここはお願い!!」
「お、おっしゃーッ!! 気合い入れるぞみんなーッ!! 」
サトウの怒号が響く中、ヒナコは迷うことなく校舎の奥へと駆け込んだ。
ルナたちは、クラスメイトたちが築いた急造のバリケードを飛び越え、その後を追う。
廊下を走るルナの目に飛び込んできたのは、異様な光景だった。
角材を抱えた者、消火器を構える者、机を積み上げて盾を作る者。かつての友人たちが、外敵からこの牙城を守ろうと、逃げ場のない決死の意志で各所に陣取っている。
「ルナ!?」
「ルナちゃんだ!」
「本当にルナなのか!?」
「あれ?もしかして、ルリ?」
歓喜の声が上がるが、誰一人として持ち場を離れようとはしない。
再会を喜ぶ余裕すら、この場所には残されていないのだ。
突き当たりの教室。ヒナコが勢いよく引き戸を跳ね飛ばした。
「ゴンドウさん!! ルナを見つけたよ!!」
教壇の前に、その男は立っていた。
強面の相貌に、巨躯を包む古びた制服。そして、カツンと乾いた音を立てる義足。派出所の責任者であり、ルナが最も信頼を寄せる上司、ゴンドウ所長その人だった。
「ゴンドウさん!!」
ルナが叫ぶ。だが、ゴンドウは再会に表情を崩すことはなかった。鋭い眼光はそのままに、彼はルナと、その背後のアルセーヌたちを冷徹なまでに見据えた。
「ルナさん、そして皆さん。……お待ちしていました。積もる話はあると思いますが、すみません、しばらくお待ちください」
「え……? 待つって、何を――」
ルナの困惑を、世界を揺らすような地響きが遮った。
窓の外、急速に夜に飲み込まれていく校庭の向こうから、無数の「何か」が這いずる音が聞こえてくる。
ゴンドウが短く、鋭く言い放った。
「Waveが始まります」
その瞬間、学園は宵闇につつまれ、けたたましい警報音が鳴り響いた。




