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『AIが管理する理想のVR世界でミュートされたらどうなるか』~囚われの姫と月の使者編~  作者: バニラ味一択


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36.お願い




「ちょっと!人の顔を見てその反応、失礼じゃない?」


 心外だと言わんばかりに眉をひそめるルナに、アクアは椅子から転げ落ちんばかりの勢いで身を乗り出した。


「いやいやいや! ここに来たってことはエデンに行く気でしょ!? なんで行くのよ! っていうか、なんであんた、しれっとその一家に家族面して混ざってんのさ! おかしいでしょ、その絵面!」


(……え?)


 ルナの胸に小さな疑問符が浮かぶ。

 けれど、その疑問の正体を突き止める暇もなく、アルセーヌが朗らかな声で会話に割って入った。


「まあそう言うなアクア。大人二人に子供二人。通行料はいつものウォレットに振り込んでおくよ」


「……あー、アルセーヌ。悪いんだけどさ。今はエデンに行くのはお勧めしない。っていうか、ダメ。却下」


 アクアの言葉に、アルセーヌは片方の眉を上げた。


「ん? どういうことじゃ。引率者も一人ずつ付いているし、手続きに問題はないはずだが?」


「うぅ……そっ、そうなんだけどさぁ。ちょっと今、エデンの方が変な状態になってて、普段より警戒がめちゃくちゃ強くて危険なんだよ。マジで」


「危険と言っても、たかが知れているのではないか?」


「その考えは甘いよ。 今、智天使ケルビムの権限率が異常に高くなってる。それに、新しい治安維持装置が誕生しちゃってさ。この前も不正アクセス者が一人、そいつに処理されたんだよ。あいつ、ランカー並みの実力者だったんだけどね」


 アクアの言葉に、アルセーヌは少しだけ目を細めた。


「……ふむ」


「そういうこと! だからダメ~。アタシも今日は積んでるエロゲーで遊びたいし、もう閉店でーす。とっとと帰った帰った!」


 シッシッ、と手を振るアクア。

 だが、その傍らに――いつの間にか、音もなくアンジェが立っていた。


「アクア。この二人なら大丈夫さ。実力ならこのあたしが保証する。……まあ、ダメって言われても行くけどね。あんたのサポート無しで、力ずくで」


「や、やめてもらえます!? 怒られるのアタシなんですけど……。っていうかアンジェさん? ここで暴れようとしてます? さりげなく闘気を当ててくるのやめてもらっていいっすか? これ、カスハラっすよ!」


「ヨッコイショ……」


 アンジェはどこか楽しげに、傍らにあったサーバー機器に、そっと手を置いた。


「ストップストップ! それ一番高いやつ! ああもう、これだから高齢者は話が通じないんだから!」


 アクアは頭を抱え、半ベソをかきながら何かを考え込む。


(……そうだ……)


 アクアはくるりと椅子を回転させ、一転して愛くるしい笑顔をルナたちに向けた。


「それじゃあ、テストしましょ、テスト! 智天使に遭遇してもちゃんと逃げられる実力があるのか判定するの。合格したら、特別にエデン行きを許可してあげるってことで、どう?」


 アクアは首をかしげ、バニースーツの胸元を少しだけ強調するように、潤んだ瞳でルナを覗き込んだ。


「ね? アクアちゃんのお願い、聞いてくれるかな……?」




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