43-2 前進の道(完)
「休みが終わったら、魔法師法を研究しようかな」チャくんは笑って言った。
「弟──」女騎士は優しく呼んだ。「お爺ちゃんが亡くなって気分が悪いって言ったから、一年休学させてあげたのに、今ここがこんなことになっちゃったんだから、家に帰ってきなさい。お願い?」
彼女がチャくんに話す口調は、ジコクとサーレンに向けるのとはまったく違う。柔らかく、穏やかで、少し懇願さえ混じってる。顔にも笑みが浮かんでいた。
この女騎士はチャくんの母親だ。
チャくんは家族の中で一番下の子。全員が彼を「弟」って呼ぶのに慣れてる。
「僕、大学に戻るよ」チャくんは手人形をはめた手をポケットに突っ込んだ。「僕、どの道へ進みたいかわかったんだ。おふくろ、僕はお爺ちゃんみたいに、勝手気ままに生きて、どんな変わり者にも本気で向き合う人間になりたいよ」
「変わり者? 俺のことか?」ジコクは首を捻って聞いた。
「そうだよ。でも、まず否定しないのか?」チャくんは笑った。
「弟!」女騎士は少し声を張ってチャくんを呼んだが、彼の決意を変えられなかった。「あいつは──」
サーレンは再び両手で口を囲むようにした。「あの、私に下された命令は──」
「取り消しだ! 風紀委員会が今調査中なのだ!」女騎士は仕方なく元の話題を止め、サーレンの言葉を遮った。
「おふくろ、もし僕の友達に絡むつもりなら、僕と決闘しろよ!」チャくんは手を上げたが、手に一番まともな武器が、人類の入れ歯をくわえた猫の手人形だってことに気づいて、思わず笑い出した。
ジコクもつられて笑い、慌てて口を押さえた。
「家に帰りたいなら、毎日君の好きな料理を用意してるよ」女騎士は最後にチャくんへ、愛情と名残惜しさが混じった視線を投げ、唇を震わせたが、結局、成人の子の交友に干渉するのは諦めた。
彼女はきびきびと振り返った。「サーレン、戻るよ!」
「はい」サーレンはジコクへウインクし、騎士たちについて馬車に乗り込んだ。馬車は去っていった。
ジコクはそこに立ち残り、名状しがたい感情が湧き上がるのを感じた。この三年、黒暗学院を離れてからずっと彷徨っていた心が、静かになった。
彼は再び樹精老人の言葉を思い出した。今度はそれが苦しみじゃなく、温かさをもたらした。
「わしには見えない未来に、君の価値を理解してくれる人に出会えることを願ってる」
それは可能かもしれない。
黒暗学院出身で、夜校の学歴しかなく、金もコネもなく、一目でぼっちだとわかる魔法師──そんな人生だって、まだ頑張れるんだ。
チャくんは隊長と話に行った。ジコクは暇だから、適当に散歩した。
彼は元駐坑の扉だった場所へ着いた。今じゃただの大きな穴だ。中から廃ガスはもう溢れていない。地面には、動かなくなった廃棄魔器が山積みになっていた。
つなぎを着たウニが、奥の闇から歩いてきた。
そのウニは歩き方がふらふらで、まるで子供が歩き始めたばかりの頃みたいだ。
「怪頭、また廃ガス中毒か?」ジコクは思わず笑った。彼はウニ人の手を掴み、支えようとした。
だがジコクの手は、直接拳になってしまった。ウニ人の袖の中は何もなかった!
ジコクはびっくりして手を離し、一歩後ずさった。
彼はウニ人を上から下までじっくり観察した。それから大股で近づき、両手でディッシュアンテナ帽を上へ持ち上げた。
下にも頭はない! つなぎの中も空っぽだ!
ジコクは無言でディッシュアンテナ帽を元に戻し、空っぽのシャツの襟元を隠した。
寝不足で幻覚でも見てるのか、それとも知らないうちに寝ちまったのか、と彼は疑った。
ウニ人は両袖を上げ、帽子を直した。
ジコクは禿げた芝生の方を振り返った。本物の怪頭が今、ちょうどチャくんと隊長の会話に加わっていた。怪頭は存在しない帽子を被る仕草をし、三人とも大笑いしている。
ウニ人はウニの下から声を発した。「まったくよ、人の頭を勝手に持ち上げるんじゃねえよ」
この声は、ジコクが分別箱の中で聞いた、自分に箱底を外させようとしたあの声だ。
「お前、言わないよな?」ウニ人は言った。「吾輩、自由だぜ! 人類も女王も、もう吾輩を支配できない! やっほー! 吾輩はアイタロの果てまで歩いてくぜ!」
ウニ人はよろよろとした足取りで、駐坑の通路を出て、国道の縁を、ジコクが五日前にやって来た方向へ、遠く遠く歩いていき、やがて闇の中に消えていった。
ジコクは口を押さえ、体が震え始め、腰が前へ折れた。彼は二十秒耐えたが、ついに我慢できなくなり、声を上げて大笑いした。
笑い声が、この草一本生えていない芝生に響き渡り、崩れた壁や瓦礫の山を越え、みんなが彼の方を振り返った。
彼は笑いすぎて立っていられなくなるほどで、周りの視線なんてまるで気にしなかった。
遠くの空に、薄明かりが差し始めた。同時に、今年最初の雪片が、ジコクの視界に入ってきた。
(完)
第二巻の内容はここで終了です。
次の巻(次の仕事)は、この物語の中で最も議論の多い部分になります。
翻訳を始める前に、固有名詞や人名の訳し方などを決める必要があり、その準備にはかなりの時間がかかります。
さらに、少し休みたい気持ちもあり、優先して翻訳したいものもあるため、第三巻の連載は五月頃から始まる予定です。
どうかこれからもジコクの旅を応援してください。
◇◇◇
このエピソードの原文:
「我回去研究法師法好了。」小碴笑說。
「弟弟──」女騎士輕聲叫著:「因為你說爺爺過世心情很不好,我們才讓你休學一年的,現在這裡都變成這樣了,你就回家來吧,好吧?」她對小碴說話的語氣和對璽克、瑟連說話的語氣完全不一樣。柔軟、溫和,甚至帶點懇求,臉上也掛起笑容。
這名女騎士是小碴的母親。小碴是家裡最小的孩子,全家人都習慣叫他弟弟。
「我要回學校去了。」小碴把戴著手偶的手塞進口袋裡,說:「我知道我想要往哪個方向走了。老媽,我希望我和爺爺一樣,是個率性自在,不管對什麼樣的怪人都真誠相待的人。」
「怪人?是指我嗎?」璽克轉頭問。
「是啊,不過你不先否認一下嗎?」小碴笑說。
「弟弟!」女騎士用稍微提高的聲音喊小碴,但無法改變他的心意:「他可是──」
瑟連再次把手放在嘴邊,圍成杯狀:「請問我收到的命令──」
「取消了!風紀委員會現在正在查!」女騎士不得不停止本來的話題,打斷瑟連的發言。
「老媽,如果妳非要找我朋友麻煩不可,就跟我決鬥!」小碴抬起手,發現他手上最像樣的武器居然是戴著人類假牙的貓咪手偶,忍不住笑出來。連璽克也笑出來了,他趕緊遮住嘴。
「如果你想回家,家裡每天都有準備你喜歡的食物。」女騎士最後投給小碴一個關愛與不捨的眼神,嘴唇顫抖,終究還是放棄了干涉成年孩子的交友狀況。她俐落的轉身說:「瑟連,跟我回去!」
「是,長官。」瑟連對璽克眨眨眼,跟著騎士們坐上馬車,馬車便離開了。
璽克留在原地,感覺一種無以名狀的情緒湧現。讓他這三年來,自從離開黑暗學院以後就一直徬徨不安的心平靜下來。
他再次想起樹精老人說的話。這次那些話不會讓他痛苦,而是感到溫暖。「我希望在我看不到的那個未來,你會找到明白你價值的人。」也許這是有可能的。
他,一個出身黑暗學院,只有補校學歷,又窮又沒後台,一看就是社會邊緣人的法師,他的人生仍然可以努力下去。
小碴跑去跟隊長聊天。璽克沒事做就隨便散步。他走到原為佇坑門,現在只是個大洞的地方。這裡面已經不再溢出廢氣了,裡頭地面上堆滿了不會動的廢棄魔器。
他看到一個穿著工作褲的海膽從深處的黑暗中走過來。那顆海膽走路歪歪倒倒,像是小孩子剛開始學走時那個樣子。
「怪頭,你又廢氣中毒了嗎?」璽克失笑。他走上前抓住海膽人的手,打算扶著他。
但是璽克抓下去的手直接握成拳頭。海膽人的袖子裡什麼都沒有!
璽克嚇了一跳,放開手後退一步。他上下仔細打量海膽人,又跨步上前,兩手抓住碟形天線帽往上抬。
那底下也沒有腦袋!工作褲裡頭空空如也!
璽克默默的把碟形天線帽放回原本的位置,遮住空蕩蕩的襯衫領口。他懷疑自己是不是睡眠不足到出現幻覺了,或是睡眠不足到自己睡著了而不自知。
海膽人舉起兩邊袖子,把帽子調正。
璽克轉頭往禿草皮看,看到真正的怪頭現在正好加入小碴和隊長的談話中。他作勢戴上不存在的帽子,三人哈哈大笑。
海膽人從海膽底下發出說話聲:「真是的,不要隨便把別人的腦袋拿起來啊。」
這個聲音,是璽克在分類箱裡聽見的,那個想騙他拆箱底的聲音。
「你不會說出去的,對吧?」海膽人說:「我自由囉!不管是人類還是女王都不能統治我了!呀呼!我將一直走到艾太羅的邊陲!」
海膽人踩著歪歪扭扭的步伐,走出佇坑通道,沿著省道邊緣,璽克五天前走來報到的方向,走得遠遠的,最後消失在黑夜裡。
璽克掩著嘴,身體開始發抖,腰也往前彎。他撐了二十秒終於忍不住了,放聲大笑起來。
笑聲傳遍這片沒有草的草皮,傳過園區裡的斷垣殘壁,每個人都轉頭看他。他笑到差點站不住,絲毫不介意旁人的目光。
遠方的天空露出一絲魚肚白,同時,今年的第一片雪花進入璽克的視野中。
(完)




