悪夢の三大能力持ち疑惑
「全く……なんですかね? この化け物は」
「クケケ! 俺様と馬鹿天使の作り出したフィールドの中を自由に動けるとか、かなり根性があるやつじゃねーか!!」
天使と悪魔が作り出した何時もの戦闘フィールド。この中にいると、味方は強化され敵は弱体化される。更にダメージも入るのだから、敵にとっては相当厄介な環境のはず。
だけどこの鬼は、まるで障害にもならないと言わんばかりの動きをみせ、俺か錬金人形に攻撃を仕掛けてくる。
ただその度、爆発物などを投げて足止めをしているために、今のところはなんとかなっていると言った状態なんだけど……。
問題はそのアイテムの在庫がもうかなりまずい状態という事だろうか。
「切り札の天使と悪魔の顕現のお陰で、アイテムによる効果時間は伸びているみたいだけど」
火が燃えている時間が、凍結による凍っている時間が、電撃による麻痺をしている時間など、鬼に与えている状態異常の時間はフィールド効果が乗っているためか、通常通りの効果を発揮している。
いやまぁ、通常通りという時点でどうなの? って話ではあるんだけどね。だってこれ、鬼の能力があるから通常通りになったわけで。これがもし普通のモンスターなら、効果時間が通常の倍とかになっていてもおかしくないのだから。
そう考えると、やっぱり島のラスボスは一線を画しているということなのだろうか。
「グヌヌ……オボエタ……オボエタゾ! コノクルシミ!!」
そんな他のボスとは比べ物にならない鬼が、何やら叫びながらそんな事を言った。
そしてその言葉の意味は、俺達にとっては全く嬉しくない内容で……。
「げっ……ちょ! またアイテムの効果が減ってる気がするんだけど!!」
「間違いなく減っていますね。計測した結果ですが、通常よりも83.2%の効果になっています」
細かい! 細かいけど、なんとなく微妙に減ったというのがよく分かる数字だ。
それに、恐らくこうして少しでも減ったという事は、また徐々にアイテムの効果時間は減っていくはず。
「クケ……俺様達の力を撥ねのけるとはなぁ。こりゃ、火力重視で押せ押せの方がいいかぁ?」
「駄目でしょう。今こうしてフィールド効果を発揮しているからこそ、相手のスペックダウンによって対処が可能な状態なのですから……もしフィールド効果の維持を止めてしまえば、相手はフルスペックで手もつけられない状態になりますよ」
どっちの意見もよく分かる。
一気に火力でヤツにダメージを与えることで、相手の能力に制限を掛けようと考えるのも正解。それこそ、腕や脚の1本でも奪えることができれば、あのとんでもない威力のタックルは使えなくなるはずだから。
しかし、そのためにはこのフィールド効果を少しの間だけでも消す必要がある……らしい。これは全力で攻撃に魔力を使わないと、悪魔の目論見通りといえるダメージが叩き出せないと思われるから。
ただ、天使が言うように、フィールド効果を消してしまえば……鬼の攻撃力・防御力・速度の全てが上がってしまう。なので天使の言っていることもまた、正しいという事になる。
そうなんだよね。どちらも正しい。だけど、どちらも間違っているとも言える。言ってしまえば……俺達には、現状をどうにか出来るだけのカードが無いということ。
火力を取れば、相手が強化された状態で息を吹き返して手がつけられない。でもフィールド効果を維持したままだとジリ貧になることは間違いない。……いや、ジワジワと相手が強化されているから、ジリ貧どころか負けが確定の時間伸ばしでしか無い。
そして……皆がこの場に来るかどうか、現状だと全く外の様子が分からないからどうしようもない。
「このまま拮抗を続けるのか、それとも賭けに出るのか……ただ、拮抗を続けるにも、投擲アイテムの底が見えてきたんだけど」
アイテムポーチの中に手をいれガサゴソと探る。……うん、後どれだけ鬼の足止めが出来るだろうか。多分だけど、アイテム数以外に鬼の成長度合いも考えると十数回といった感じだろうか。
きっとそのうち、凍ったり麻痺したりもしなくなると思う。となると……余裕がある内に鬼に大ダメージを与えておきたい。
どうやって鬼に対策しようか? と考えていると、何やら鬼が叫んだ。
「ムダァ! ムダムダァ! フハハハハハハ!! ソンナトツゲキナド、カニササレタグライダ!!」
ドスッ! と鬼の背後からランスを突き刺したのは錬金人形のベータ。
しかし、刺さったとは言え、それはランスの先端が数ミリ程度だったらしく……鬼には全くダメージが入っていない様子。
「ベータ、ランスから手を離せ!!」
そう指示をしたが、それは遅かったようで……鬼は、自分を突き刺そうとしたランスを掴んだ。そして、掴んだランスをベータごと持ち上げると、「フンッ!」と鼻から息を出しつつ、ランスをピッチャーのようなオーバースローで投げ飛ばした。
ランスを手放しそびれたベータもまた、ランスと一緒に剛速球なんて言葉が可愛い勢いで飛んでいく。そしてその勢いのまま、ベータはランスと一緒にトラップルームの壁に激突した。
「ムゥン! ザコ! ザコスギル!! モット、モットダ! モット、コノオレサマヲ! タノシマセロ!!」
……なんとも好戦的な鬼だ。あ、いや、鬼だから好戦的で正しいのか? ただ、どうしてそんなに筋肉を見せびらかすようなポージングを取っているのだろうか。モンスターの世界に、ボディビルダーみたいな文化があるとは思えないんだけど。
でも、取っているポーズはどう見ても頭からビームを出してきそうなヤツが使うポージングなんだよなぁ。……もしかしてこの鬼も、頭からビームを出してくるのだろうか。
あと、なんだかかなり発している言葉が、どんどん流暢になりだしてきている気がしなくもない。最初の内はもっとどもっていたはずなんだけど。
「イイ……ジツニ、イイ、キブンダ。ドンドン、リソウノ、オレサマニ、チカクナッテイクゥ!!」
ポーズを取りながらクワッっと目を見開く鬼。さりげない格好良さアピールなのだろうか? 牙を見せつけるように笑ってみせている……が、どう考えても獰猛な笑顔。子供が見たら間違いなく泣き叫ぶだろう。
しかし一体全体、この鬼はなんなのだろう? 人の言葉を喋るし、めちゃくちゃ戦闘狂っぽいし、元から強いと言うのにドンドン強くなっていくし。
それによく見たら、最初の時よりも一回りぐらい大きくなってないか? 今もなんだかビックンビックンと筋肉を動かしてみせているけど、その筋肉が少しずつ膨張していっている気がする。
「昔さ……何かのアニメで自己進化・自己増殖・自己再生の能力を持った存在がいたんだけど、それってこの鬼みたいな感じなのかな?」
「自己再生まで持ち合わせているのかはわかりませんが、間違いなく進化や増殖はしているでしょうね」
やっぱりそうだよね。筋肉の量は増殖しているし、進化については鬼の喋りや耐性力などを考えれば間違いなく起こっている。
もしこれで再生能力まで持ち合わせていたら……間違いなく手がつけられないモンスターなんだけど。どうなんだろうか。
さて、それにしてもどうするべきか。ベータもガンマと同じでコアは大丈夫だと思いたい。
これまたガンマと同様に、あちこちへとパーツが飛び散った状態だけど、コアを収納していた部分はぱっと見た感じだけだと一応無傷に見える。
だけど現状、どちらからも反応がないんだよ。本当、無事であってほしいんだけど……。
あぁ、もう。この鬼の弱点はどこなのさ? さっきから鑑定を何度も試しているんだけど、その鑑定結果が全てエラーって出るとか……いったい、こんなモンスター相手にどうするのが正解なのだろう? 誰かヒントを! いや、誰かじゃない。システムさん応答せよ!!
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