打つ手無し
少しずつ大きくなっていく鬼。そんな鬼は今、影と光の鎖で雁字搦めになっていたりする。
フィールド魔法だけではもはや鬼を止める事が出来ないと判断した天使と悪魔は、そのフィールド魔法を単体用に変化させた。
フィールドを形成していた魔力が、ギュッと空間ごと圧縮されて行くような動きを見せ、そしてその圧縮された魔力は鎖へと変化。
そして鎖となった魔力は、あっという間に鬼に絡みつき……光と影の鎖はお互いが干渉しないようにと、絶妙なバランスで鬼を拘束してしまった。
勿論だが、鬼もそんな鎖に抵抗する。そしてその抵抗によって、一部の鎖が砕け散りそうにもなった。
ただそんな時は、俺が〝クイックスロー〟で状態異常を発動させる爆発物を鬼に向かって投擲。これにより、砕けそうな鎖は、鬼の動きが爆発物によって停止した一瞬の内にその形を修復。
とまぁ、現状だとこんな戦闘状況なのだが……やはり、これでも少々の時間稼ぎにしかならない。
何せ投擲アイテムは消耗品であり、少し前に予測したようにそのアイテムの効果が発揮していられるのはカウントダウンが始まっている。
「クケケ。成長する化け物には鎖で封じる。これはお約束ってやつだぜ! とは言え、こいつ……ちょっと強化されすぎじゃねーか?」
「一撃必殺を入れるタイミングが全くありませんからね……私も鎖の維持で手がいっぱいです」
俺も俺で陣魔法を使えたら良いんだけどね。
でも投擲スキルを使うと、どうしても陣魔法がキャンセルされてしまう。そして、リセットされた魔法はまた最初からやり直し……と、発動までの時間さえリセットされなければ! と思うんだけど、それは仕様上どうしようもない。
「ジャマ……ジャマ、ジャマ、ジャマァァァァァァァダァァァァァァ!!」
叫びながら藻掻く鬼。
腕を振り回そうにも、地面から生える鎖がジャマをし腕が全く上がらない様子。
ただ、その鬼の筋力によるパワーは、全て鎖が受け止めているからね。やはり、少しずつだが鎖にもダメージが入っていく。
とは言え。その分、鬼にも鎖によるダメージが入るんだけど……やはりそれは微々たるモノらしい。
「全くもっておかしいんだぜ……本来なら、鎖によるスリップダメージがガッツリ入っているんだが。ケッケッケ……あの野郎、いったいどれだけ体力があるってんだ」
「認めたくはありませんが、私と悪魔による同時拘束ですからね。それもフィールド魔法の効果をギュっと圧縮した鎖です。当然、デバフも入るダメージも通常のフィールド魔法よりは強力なのですが」
……やっぱりコイツ、自己再生の能力ももってるんじゃないか? もしくは、進化や増殖の能力で強化される肉体が、ダメージ量を超えているのかもしれないけど。
ともあれ、現状だと思った以上に鬼に対してダメージが入っていないと言うことなのだろう。
むしろ、ダメージを与えているからこそ、この程度で済んでいるなんて可能性もある。
何か、何か手はないだろうか? 今のところ、所有しているアイテムだけではダメージ量が足らない。
錬金術師の十八番と言える爆発物だって、ヤツには大した威力にならないみたいだし。
となると、魔法か? だけど、俺の魔法は陣魔法を除けば初級が精々と言った所。いくら杖の代わりにもなる〝骨食〟を使ったところで、その威力は高が知れる。
そしてそんな〝骨食〟だが、俺には本来の扱い……刀として使うのは無理がある。剣術系のスキルを持ってないからね。
さて、それならどうしたものか? 何か使える物は無いだろうか? そう考えている内に、時と言うのは無常にも過ぎていくもので。
「景! 鎖が!」
「な! 凍結を無効化した!?」
俺の投げた凍結系のこんぺいとうだけど、鬼はとうとう克服してしまったらしい。
罅が入った魔力の鎖。その鎖で捕らえている腕に向かって俺は氷属性のこんぺいとうを投げつけた。
投げたこんぺいとうは、的確に鬼の腕に命中した。したのだが、通常なら起こるはずの、こんぺいとうの棘が刺さった場所からの凍結が遂に発動しなくなってしまった。
凍結しなかった腕は、鎖をブチッと千切ってしまい。鬼の腕はフリーの状態に。
そして自由となった腕を使い、鬼は自らの牙を抜き去ると、その牙をオーバースローで投擲してきた。
狙われたのはデルタ。どうやらヤツは周りからジワジワと戦力を削るつもりらしい。
猛スピードで飛来する牙を、デルタはというと……。
「が、ガード!」
いきなりそんな攻撃をしてくると思っていなかった為か、逃げるタイミングを失ってしまっていたらしい。
とっさに大盾を構えたデルタだが、鬼の牙はそんな大盾に命中すると……大爆発を起こした。
「牙って爆発物なのかよ!! ケッケッケ、ソレは予想外だぜ」
「デルタは? デルタは大丈夫なのです? あんな爆発を至近距離で受けてしまっては……」
爆発に気を取られ、俺達は一瞬だけ鬼から目を離してしまった。そして……それは鬼にチャンスを与えてしまう事になる訳で。
「ハッ! しまっ!!」
一瞬の内に、鬼は鎖を全て粉砕。そして一気に勝負を決めるつもりなのか、俺とアルの方へと向かい件のタックルを仕掛けて来ていた。
気がついた時にはもう遅い。もう回避できない距離にまで鬼は接近済み。……これはもうダメだな。ならこの後出来るのは? と一気に思考を加速させるのだが、ソレよりも早くアルが動いた。
「しっかり掴まっていてください。少しでもあの勢いを止めます!」
アルはそう言うと、ランスと大盾を構え……逆に鬼に向かって打って出た。
ドォン! と激しい衝突音が響く。
その衝突と同時に、フワリと一瞬だけ感じる浮遊感。しかしその後、まるでジェットコースターで坂を下るような感覚に。
「ぱ、ぱーj……」
何やらアルの声がかすれて聞こえる。どうやらアルの声帯に損傷がはいったのだろう。ジジッだのブブッだのと言ったノイズが妙に響く。
一瞬のような、それでいて長時間のような感覚。が、そんなものが延々と続くはずもなく。
次の瞬間。俺は硬いモノに包まれながら、更にそれよりも硬い何かに衝突したようで……。
「く……ギリギリ。ギリギリだったんだぜ……」
「全く……心臓が止まるかと思いましたよ」
衝撃により視界が霞んでいるらしい。しかし、そのぼんやりと見える状態からでも色々と察する事はできる。
俺はアルと一緒に鬼に跳ね飛ばされた。それ自体は、あの時点で回避不可能だと理解していたから問題は無い。
ただ、考え違いがあるとすれば、アルが予想外の行動を取ったということ。そして、天使と悪魔も何かフォローをしたのだろう。
うっすらと見える鬼の姿は、横たわりながらも鎖に拘束されている様子。……うん、ガリバー旅行記かな? ともあれ、これなら少しの間だけでも鬼もまた動くことが不可能だろう。
天使と悪魔とて、再び鎖から抜け出されるような真似はしないだろうしね。
でも、あぁそういう事か。きっと衝突するタイミングで、天使と悪魔が再びあの鬼を拘束したからこそ、こうして俺は無事ですんだと言うことか。
そしてそこには、アルが鬼に対して反撃したというのもあるだろうね。
うん、どう見ても鬼の腹にはランスがぐっさりと突き刺さっているようにみえるし。
とは言え、そんなアルもまた……ここでリタイアなのだろう。うん、だってさ、さっきから俺の手とかにはバラバラになったパーツが触れているから。
コアはどうだろう? 無事だろうか。無事なら良いんだけど……でもどうしよう? 遂に錬金人形達が全滅してしまった。
あの大爆発を受けたデルタもまた、幾つかのパーツと一緒に壁際でぐったりと横たわっていてる。
こうなると、残っているのは俺と天使と悪魔のみ……だけど、天使と悪魔には時間制限があるわけで。
あぁ、これ、もうゲームオーバーなのか? 他に何もないとなると、天使と悪魔の時間が切れた瞬間に、あの鬼は鎖から放たれ完全復活してしまう。
これは、どうあがいても絶望……といった状態か。いやでも、今ならまだ何か手があるかもしれない。
残るのは〝骨食〟とこの左手の義手だけど、これで何か出来ないだろうか。
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暑さと他に色々とやることが有って、残念ながら感想に返信出来ない日々です。誠に申し訳ない((。´・ω・)。´_ _))ペコリン




