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七百九十四話 ベティ実食

ドラゴンのお肉関連のデータを噴出し、事前にライトドラゴンやダークドラゴンを食べたかどうか分からなくなってしまいました。内容に違いが生まれていたら申し訳ありません。

 ベティさんの機嫌をマーサさんになんとかしてもらい、トルクさんが細心の注意を払いつつベティさんと交渉したおかげで香辛料の検証に関しては目途がついた。そして怒らせてしまったマーサさんに賄賂で妖精の花蜜を贈り、マーサさんの機嫌も回復させることができた。色々とあったが、まあ、順調だ。




 マーサさんの機嫌が回復したことに安心し、食堂の個室に向かう。マーサさんは本当にお礼を言いに来ただけらしく食堂の前で別れた。


「あ、みなさん、こんばんは。いよいよですね!」


 個室に入ると既に待機していたベティさんに声を掛けられた。


 おかゆとはいえ何回もお代わりをしてカロリーを摂取し、そこにヴィータの治療が加わったからか、幽鬼のような雰囲気が消え細身の美女に変身していた。


 モチモチの頃は可愛らしい感じだったのだが、痩せてある程度健康になると美女になるんだな。


 それでも健康に痩せたであろうマーサさんと比べると、若干健康的な何かが足りないようにも見える。


 命の大精霊であるヴィータでもフォローしきれないくらい、ベティさんが無茶をしていたってことかな?


 ベティさんはどれだけ無茶をしていたのだろう……あ、幽鬼に見えるくらい無茶をしていたんだったな。


 それをわずかな時間でここまで回復させたのだから、やはりヴィータの能力は凄まじいと考えるべきだろう。


 ヴィータの手によって幽鬼から少し病的な美女に変身したベティさんだが、中身は変わっていないらしく、ドラゴンのお肉を目前にしてフスフスと鼻息荒く気合をみなぎらせている。


 昔のベティさんならその鼻息も微笑ましく見えたのだろうが、今のベティさんがそれをすると違和感が酷い。


「ベティさん、こんばんは」


 そんな内心を隠しつつ、俺もできるだけ優しい声で挨拶を返す。落ち着いたとはいえ、ベティさんは少し前に感情を大爆発させた不安定な状態なので警戒は必要だ。


「「「こんばんは」」」


 俺の挨拶に続いてジーナ達も挨拶をする。まあ、キッカは少し人見知りが出たのか小声でベティさんには聞こえていないだろう。


 そしてベル達とフクちゃん達も挨拶をしているが、さすがに聞こえていない。


 キッカが人見知りを発揮するパターンがある程度分かってきたな。一番大切なのは慣れで、次に大切なのは友達になれそうかどうかが重要。


 慣れる速度は人によって変わる。怖そうなら時間がかかるし、優しそうなら少し慣れやすい。


 ベティさんは基本的に食事の時くらいにしか一緒にならないから、それなりに人見知りが出るのはしょうがないが、聞こえない程度だとしても挨拶できたのはベティさんが怖くないカテゴリーに属しているからだろう。


 ジーナ達がベティさんに寄っていき、色々と話しかけていく。キッカ以外は人見知りしないタイプなので、ダイエットのことやドラゴン肉について話しているようだ。


 俺は昼間にベティさんと十分に話したので、入口から死角になる位置に座る。ここならベティさんからも斜めの位置だしベル達も盗み食いがしやすいだろう。



「待たせたな」


 のんびり話しているとドアがノックされ、返事をするとトルクさんがワゴンを押して入ってきた。


 おお、クロッシュだっけ? あの料理にかぶせる金属のドームみたいなやつ。ドラゴンの料理だからか、トルクさんは食器などにも拘ったようだ。


 トルクさんに続いて、マーサさんとカルク君もワゴンを押して部屋に入ってくる。 


 全ての料理が並べられると、丸テーブルの上が満杯になった。続いてクロッシュが次々と外されていく。


 クロッシュが外されて豪華な料理が姿を現すごとに部屋にベティさんとジーナ達、そして精霊達の歓声が響き渡る。


 騒いでいないのは、俺とシルフィとヴィータくらいだな。


 シルフィとヴィータは部屋でお酒を飲んでいても良かったのだけど、ヴィータが暴飲暴食が確定しているベティさんを心配してついて来てくれた。


 大精霊が盗み食いをするはずもないので、退屈な時間を過ごさせてしまうことになるのは少し申し訳ない。食事が終わったら部屋でたっぷりお酒を提供しないとな。


「とりあえずはこんなもんだ。あと一回同じくらいの量があるから、必要な頃に持ってくる」


 え? もう一回このテーブルが満杯になるの? トルクさんが精霊達のことを勘定に入れているはずもないし、六人、しかもその内の三人が子供なのにそれだけの量が必要だと?



 どれだけベティさんが食べると想定しているんだろう?


 まあ、余ったらベティさんのお土産にすればいいか。


「ああ、それと特別料理もあるが、そっちは時間がシビアだから食べたくなったら言ってくれ。ドラゴンラーメンだ」


 まだあるの? しかもドラゴンラーメンだと? あ、骨も欲しいって言われたから渡したけど、ドラゴンの骨でスープを作ったのか?


 テントの支柱にもなるしラーメンの出汁にもなる、さすがドラゴン、万能だ。


「昼からラーメンなんてよく作れましたね」


 ラーメンは仕込みにかなり時間がかかるイメージなんだけどね。


「おお、さすがに俺も間にあわねえかと思ったが、凄まじく良い出汁が出るんだよ。研究すればもっと美味くなりそうだが、それでもかなり美味いラーメンが完成したぜ」


 拘りが強いトルクさんが提供できるレベルと判断する味に仕上がったのなら、それだけドラゴンの骨のポテンシャルが高かったのだろう。


「全部のドラゴンの骨を使ったのですか?」


 提供したのはライトドラゴンとダークドラゴンとファイアードラゴンの骨。お肉も同じだ。


 ワイバーンやアサルトドラゴン、グリーンドラゴンも提供できたが、イメージ的にも先の三種の方が格上な気がするので、今回は先の三種類に絞ることにした。


「いや、今回はライトドラゴンの骨だけだ。さすがにそれ以外に手を出す余裕はなかったぜ」


 そうなるとラーメンにできるか分からないが、ダークドラゴンラーメンとファイアードラゴンラーメンが完成する可能性もあるのか。


 それに加えてそれぞれの出汁を合わせてなんてことになったら、かなり面白いことになりそうだ。


 思わぬところで次の楽しみが増えたな。


「うう、ドラゴンラーメン、食べたいですぅ。でも、まずは目の前のドラゴン料理からですぅ」


 ベティさんが苦悶の表情で悩んでいる。どうせ全部食べるのだから、悩まなくてもいい気がするけど、言ったら怒られるんだろうな。


「おっと、のんびりしていたら冷めちまうな。俺は戻るから楽しんでくれ」


 トルクさんがマーサさんとカルク君を連れて部屋から出て行った。確かにせっかくの料理を冷ましてしまうのは料理に対する冒涜だよな。


「師匠、カルクがドラゴン料理を見てうらやましそうにしてたぞ」


 マルコがちょっと申し訳なさそうに伝えてくる。ここで自慢げではなく可哀想だと考えるのが偉いな。


「大丈夫。家族で食べてくださいって多めにドラゴンのお肉を渡してあるから、カルク君も後で食べられるよ」


「それならよかった」


 安心した様子のマルコ。


 まあ、俺の予想では試作分がカルク君とマーサさんに回されそうな気がするが、それでもドラゴン料理だから、満足してくれるだろう。


「さて、じゃあ冷める前に食べようか。おっと、俺が仕切ってすみません。今日の主役はベティさんでしたね。一言お願いします」


「分かりました、食事開始です」


 俺の無茶振りなんて気にせず、シンプルに食事の開始を告げるベティさん。もう料理しか目に入っていないようだ。強い。


 ベティさんが真っ先に確保したのは、テーブルの真ん中に並んでいる極厚のお肉。おそらく極厚のステーキを切り分けた物だろう。三種類あるのは、それぞれのお肉をステーキにしたからだな。


 高級なお肉ならやはりステーキは外せないということだろう。


「ふわーー。とろけまふーー」


 とろけるということはファイアードラゴンのお肉か。日本人好みの肉質で俺も大好きだ。


「さあ、みんなも食べて」


 俺が促すとベティさんに続いて弟子達も料理を食べ始める。とたんに輝く弟子達の表情。ドラゴンのお肉はそれだけの破壊力があるということだ。


 どれ、俺も食べよう。


 ベティさんが選ばなかった別のステーキを確保する。明るいお肉と暗いお肉、なんだか変な言葉だが、暗い方を選んだ。


 やはりお肉なのに周囲の光を若干吸収しているようだ。まあ、テントになった皮も光を吸収したり発光したりするんだから、お肉に同じような効果があっても驚かない。


 この世界がファンタジーな世界じゃなかったら、怖くて食べられないけどね。


 さて、ダークドラゴンのお肉か。どんな味がするのだろう?


 ドキドキしながらダークドラゴンのステーキを口に運ぶ。


「ふわっ」


 なんだこれ、想像していたお肉の食感と違い過ぎて思わず声が漏れてしまった。


 この食感をどう表現すればいいのか。同じくとろける肉質のファイアードラゴンととろけるところは同じだが、その性質はまったく違う。


 こちらは滑らかにとろける舌ざわり…………ん? もしかしてこれがビロードのような舌ざわりというのでは?


 高級ワインを表現する時によく使われる表現。なんで液体を布で表現するのかと疑問でしかなかったが、まさかドラゴンのお肉にまで適用されるなんて、凄いなビロード。


 そしてその滑らかな食感に加えて、強い旨みと妙に落ち着く味。


 普通美味しい物を食べるとテンションが上がるはずなのだが、布団に包まれたような安心を感じる。


 もしかしてダークドラゴンの闇属性が関係しているのか?


 あれ? これって問題なのでは? 精神に影響を及ぼすお肉なんて洒落にならない。


 周囲を見渡すと精霊以外はお肉に夢中な様子。今なら問題ないと判断してヴィータを手招きする。


「裕太、どうかした?」


(実はカクカクジカジカ―――)


「ああ、それなら問題ないよ。ダークドラゴンが生きているならともかく、死んだダークドラゴンに残っているのは純粋な闇属性の魔力。その性質は安寧だからね。闇は悪いことではないって裕太も知っているでしょ?」


 そういえばそうだった。ダークドラゴンがちょっとガラが悪かったから不安になったけど、ダーク様とかオニキスとか真っ当で素晴らしい性格だもんね。


 なるほど、純粋な属性魔力は危険じゃないということか。ファイアードラゴンは火の属性を纏っているから熱くてとろける食感と考えると納得できなくもない。


 ん? そうなると光属性の魔力にはどんな効果があ「おいしいですーー!」る……のかは分からないけどベティさんのテンションを上げる効果はあるようだ。気になるし俺も食べてみよう。


読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
>真っ当で素晴らしい性格 そういう「プレイ」かもしれないというのが闇属性の業の深さよ
翌日にはリバウンドしてそうだな。
地味に楽しみだった回 いっぱいお食べ……いややっぱり程々にね?
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