【STO:17】露店を見てまわる時は即決即断で行かないと大抵後悔する
水が床を叩くような音がして俺はふと目を覚ます。
窓の外は明るく、カーテンの隙間からは日が差し込んでいる。
「もう朝か・・・」
1日36時間なだけに地球で暮らして来た俺は十分な睡眠時間を取る事が出来た。まだ半分寝てる頭を揺らしながらふとハート型のベッドに視線を向ける。
ヘラリカが大の字になってハート型のどでかいベッドを占領して寝ている。一緒に寝てたらやっぱり寝返りで殺されてたかもしれないなぁ・・・怖ぇぇ・・・。
と、なると今コロナティアが起きてシャワーを浴びている、と言うコトか。
・・・堂々とヤってOKな事を宣言したコロナティアのシャワーを覗いても許されるんじゃないか?
ーーヘラリカは寝ている。起きる様子もない、今行けば美少女の裸体を拝めるどころか童貞卒業も夢ではない・・・。
ゴクリと生唾を飲む・・・
ーー今なら・・・いけるっ!
一歩、また一歩とシャワールームへと歩き始める。
そして遂に脱衣所の扉へと辿り着き、ゆっくりと開く。
ーー音を立てず、ゆっくり・・・ゆっくりと・・・
・・・中を覗くと、浴室の前でメイド服を着た女性が立っている。
ーーあぁ、すっかり忘れていたよ・・・
アイツ、影からメイドさん召喚してたわ。
従者だから別にスルーして行く、なんて考えは残念ながら俺にはできない。むしろ主人を守る為に俺を攻撃するかもしれない。
まだだ・・・一緒に旅をする訳だしまだチャンスはある、まだ慌てるような時間じゃない・・・我慢だ、ここは我慢して引き下がる・・・
そう心の奥底へと欲望を押し込めると、俺は再び扉の入り口へと戻って行った。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
胃もたれするような光景を目の当たりにして朝食を済ませる。昨日の疲れなど別に残ってはないが、午前中は街の中を散策する事にした。
朝食を食べた店に昼の刻1時に集合ということでそれぞれ別々に行動する。
「別々って言ったのにな」
「ふふん、自慢じゃないが私は極度の方向音痴なのでな」
「確かに自慢になってないね!?」
「ふふふ、わたくしも自慢じゃありませんがぼっちで居るのは寂しいんですの」
「すげぇや、ぼっちが寂しいとか自白出来る子初めて見た」
結局三人で行動を共にしつつ露店を見てまわる。
しかしこう、周囲を見渡しながら歩いていると・・・なるほど、やはり注目を浴びるな。
そりゃあそうだ、自転車に加えて黙ってれば見た目絶世の美女二人が後ろを付いて回ってるんだ。注目されない方がおかしい。
やはり自転車はいずれ売っぱらった方が良さそうだ、変な注目を浴びるのは出来れば避けたいしね。
もっとも、美女二人が居る時点で目立たないなんて事は無いだろうが・・・
露店には様々な衣服、武器、アクセサリが並び、ポピュラーなものから漫画や小説などで仕入れた知識が役に立たなそうなものまで数多く並んでいた。
「鑑定」みたいなスキルがあればいいのだが、生憎俺のスキル項目はエラー吐いてて何を持っているのかさっぱりわからない。
「なぁ、なんか凄い魔力を感じるようなものとかないかね?このアクセサリは凄い魔力を秘めている!とか」
「んー・・・そうですわねぇ・・・強いて言えば、先ほど体力増強の魔法が掛けられていたペンダントがあった位でしょうか?」
「それ何処にあったの!?」
「あの露店に・・・あぁ、残念。今買われてしまいましたわ」
チクショーメ!!なんて間の悪い!!HP1から脱せられるチャンスが・・・っ!!
「か、買われたのは仕方ない。他になにか凄いモノを探すしか・・・」
「凄いモノと言われましても・・・稀少価値の高いもので宜しいのかしら?」
「ふふぁほふはほほはははふほひは」
「いつの間に買い食いしてんだこのポンコツ」
思わず声に出てしまったがポンコツという言葉が通じないのでセーフ。
ケバブに似た食べ物を頬張る姿は実に可愛らしい。
「・・・これは」
ふとコロナティアの声音が変わる。露店の前でしゃがみ、一冊の本をじっと見つめている。
黒色を基準とし、銀色の刺繍が施された装丁の分厚い本。
魔力のコトなどさっぱりわからない俺でも何か禍々しいオーラを感じる。
「おぉ?こいつに目をつけるたぁお嬢ちゃんひょっとして魔導師さんかい?何の魔本だか知らないが、すげぇ力だろ?」
つまり、あまりに強力で調べられないし、出処を探られたら不味いから露店で売り出してるのだろう。
恐らく盗品かなにかだと思われるが、まぁこの際なんだっていい。
「ではこれを戴けます?」
「まいど、金貨2枚だよ」
随分バカ高い値をつけるな、とは思うが魔道書ならそんなものらしい。むしろ安い位だとコロナティアは言う。
そのまま次の露店を見てまわろうと歩き始める。出来れば防御系統のアクセサリでもあればなぁと思いつつコロナティアが仕入れた本へと目を向けるーー
「・・・助かった、あまりに不気味過ぎてさっさと売りたかったんだよな・・・」
ーーふとそんな声が背後から聞こえた気がした。




