【STO:12】異世界転送された人が異世界で一番楽に稼げるのは通訳かもしれない
個室を用意され、俺達はそれぞれの部屋で一晩を過ごす事になった。
異世界に来て初めてのふかふかのベッド、ごろんと仰向けになる。ヤバイ、気持ちいい。
疲れてはいるがまだ眠くはない、さてなにをしようか?
男子特有の生理現象は先ほどオカズを入手するのと同時に引っ込まされる事案が発生したので却下。
生命の危機に陥ると生命は自分の種を遺そうと云々なんてレベルはとうに次元を超えて四次元空間を彷徨っている。
では武器の手入れ?ぶっちゃけ使ってないしジャムるような武器でもない。
残りのお金を数える。重い。
結局の所、今後の事を考えるしか無いんだよな。
せっかく異世界に来たんだし、出来れば世界中を見て回りたい。
ヘラリカと一緒に居れば正直身の安全は保証されるだろうが、バレた時の命の保証もない。
ただバレた時適当に誤魔化せそうなんだよなぁあの子。
罪悪感はあるけど生きる為には仕方ないので遠慮なく利用させて貰おう。
次は戦いだよね。この先生きのこるには何らかの対策や戦術が必要になってくる。
その対策というのが銃以外を駆使しての戦い。
正直他にも使えるものが無いかと考えているところではあるんだけど、もう一つだけ自分は使えるものがある事に気付いた。
ただ、実際に使えるかどうかは為してみないとわからない。HP1だから迂闊に試せないのも困りものだ。
他に・・・あぁ、そうだ。自転車をどうしようか。舗装されてない道が多くて乗れなかったりするし、異世界にとっては珍しい道具だから鍵をかけて放置したら盗まれる。
かと言って今の俺の筋力じゃお金を運ぶのも辛いわけだ。
そうなるとレベルを上げて自転車を売り払うのも決して悪い手じゃないと思うんだよ。
そんな今後の事を色々と考えていたら、いつの間にか深い眠りへと落ちていた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
翌朝、俺は目を冷ました。別に誤字ではない。
太陽吸血鬼が俺の部屋に突然入り込むなり、
「オホホホホ!このわたくしが起こしに来て差し上げましたわ!喜びなさい!」
などと身体を発光させていた。しかも寝起きにいきなり眩しい光を放たれたのだから、そりゃもうどこぞの悪役ばりに「目がぁ〜目がぁ〜」な状態になったわけだ。
そして今現、冷たい水に顔をつけている。
ヘラリカも濃かったが、この太陽吸血鬼も大概だな。むしろ俺がキャラ薄いのか!?そうなのか!?
まだ目がズキズキするが顔を拭き制服を着る。服装も異世界らしいものを買うべきだったかなと考えるも、正直荷物が嵩張るので却下。いずれ筋力が上がったら買おう。
朝食は昨日と同じサラダとチーズ入りの丸パン、それから腸詰肉・・・所謂ソーセージと目玉焼きといったシンプルなものだ。
コロナティアがやたらサニーサイドアップと強調してくるが、話半分に聞き流す。余談だがポンコツ様は腸詰肉と目玉焼きだけを何度もおかわりしていた。相変わらずサラダと丸パンには一切手を付けていない。魔族って肉食なんかね。
食事を済ませて朝の刻9時。ヘラリカの空間移動で一番近い街に飛ぶ事になった。俺達が屋敷を出ると、後から来たコロナティアが指をパチンと鳴らす。それを合図に屋敷が一斉に施錠された。壊された扉もどうやら夜のうちに直されたようだ。
「それじゃ、ヘラリカ様お願いします」
「ふふん、任せろ」
昨日今日でわかった事だが、このポンコツ。どうにも頼られたり褒められたりすると喜ぶタイプらしい。ただ、やり過ぎると調子に乗る。そんな所だ。
「戸締りも終わり、結界も張り終わりましたわ」
黄色い日傘をくるくる回し、旅行鞄の車輪を転がすコロナティア。
ーーちょっと待て、よもや付いてくるつもりじゃあるまいな?
シグマルの魔石が砕け散ると同時にヘラリカのゲートが開く。
景色はあの毒々しい死の森とは正に正反対。生き生きと街の人々が大通りを往来していた。
タムルスよりも活気に溢れたこの街の名前は『花の国カッサル』街の所々に桜の花が咲き誇る美しい街だ。
ーーと、コロナティアが自慢気に語る。
「やっぱり付いて来るんだ?」
「当然ですわ!わたくし、暫く修行の旅をすることに決めましたの!」
「なら一人でもいいよね!?」
「一人じゃ修行出来ませんわよ!?」
「できるよ!?」
賛成派が2票、反対派が1票でコロナティアが同行することになった。決め手は今日のランチ。
単純に戦力増強は有難いし、美少女二人というのも喜ぶべきなのだろうが、これからの事を考えるだけで俺は胃に穴が空きそうだった。




