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しりとりしたら、あいつの想いに気づいてしまった。~胸キュンしりとりは、罠?!~  作者: 歩磨(旧:あゆま3)


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6/19

⑥

集合時間になって、なんとなくクラスのヤツらが集まってる後ろに並んだ。

日差しが更に強くなってきて、暑い。

俺らのクラスは狙ったように日陰に1ミリもかかってなかった。

先生は揃えたように同じアウトドアブランドのウィンドブレーカーを着て、前に集まっていた。

早く出発すればいいのに。


「うちのクラスだけ地獄」

「それな」

「誰だよ、晴れ男」

「それ誉め言葉じゃん」

「そうか?」


やっと先生が解散して、一斉にクラスの先頭に戻っていった。

うちの担任も、帽子の紐をプラプラ揺らしながら小走りで帰ってきた。


「帰りこそ、走って学校まで帰るぞー!」


山田先生の叫びに、アスリートクラス全員が一斉に最後尾の副担任に向いた。

あまりの揃いっぷりに他のクラスから爆笑が起こった。

当の副担任はニヤニヤ笑ってて、クラス全員がみるみる顔色が悪くなっていった。

西野だけは、眠そうな顔だったけど。あ、元からか。


「いくぞー! ついて来いよー!」

「せんせー! 裏切者ー!」

「青春だー!」


副担任の叫びに、また大きな爆笑が生まれた。

山田先生が階段を駆け下りると、後に続いてすぐに姿が見えなくなった。

次のクラスが続いて、ゆっくりと歩き始めた。


「アスリートでなくてよかった」

「それな」

「朝も同じこと言ってたよな?」

「そうだっけ?」

「日焼け止め塗る?」

「タオル返せよ」

「忘れてた」

「忘れるなよ……」


俺の頭にタオルをかけてくれた。

もう湿ってはなかった。

どんだけ太陽シゴデキなの?


「栗栖君、どこいってたの?」


俺と凛の間に、女子が割り込んできた。

朝、日焼け止め塗ってって言ってた女子だった。


「秘密」

「え~一緒に食べようと思ってたのにぃ~」


胸のネームを見ると、藤田と刺繍されていた。

今更だが、名前を知った。

甘ったるい香水の匂いが鼻についた。


「中野空気読めよ~!」


別の女子がきた。

こいつは去年も一緒だったから、知ってる。

卓球部の……確か林だったような。

一番こいつが俺にキツイ。


「しゃーねーだろー! 俺ら切っても切れない縁なんだよ!」

「なにそれ! どゆこと?! 中野が独占してるの間違いじゃね?」

「ねー」

「独占ってなんだよ! 独占って!」


後ろで大人しくしてた、もう一人の女子がすっと入ってきた。

長いストレートの黒髪が揺れた。

こんなヤツいたか……?

ネームを睨むが、陰になってて一文字しか見えない。

坂……本か?田か?上か?


「二人きりだったの?」


アニメの声みたいなかわいらしい独特の声だった。

顔と声が合わなくて、頭の中でバグを起こした。

みんなの目が一気に坂なんとかの顔に向いた。


「いや、部活のヤツらと一緒にいたよ」


凛がすぐに返して、胸を撫でおろした。

半分本当で、半分嘘だけど。


「さっき、手繋いでたよね?」


心臓をぎゅっと掴まれた。

アニ声を出す口を凝視した。

ぷくっとした唇が横に伸びた。


「こいつの手、ふわふわで気持ちいいんだ。」

「は?!」


手を取られて、指と指の間に凛の指を差し込まれた。

胸の高さまで挙げて、ぎゅっと握られた。

俺の指は伸びてるけど、俺の手の甲の皮膚を凛の指先が伸ばしていた。

凛は他人行儀な顔で、言葉を飲み込んだ。

初めて言われたわ!と頭の中で叫んだ。


「え?! そんなん言われたら、握ってみたくなるじゃん!」

「林、遠慮しとくわ」

「はぁ? 中野に選択肢ないし!」


林が飛びかかってきた。

ひょいっと繋がれた手が高く掲げられた。


「はぁ? ふざけんな! 握ってあげるって、言ってんじゃん!」

「いらねーし! 触るな!」

「このー!」


ジャンプして、高い位置で結ばれたポニーテールが一緒に跳ねた。

俺の左手、身体の横にあるんだけど。言うのも変で、黙ってた。


「中野ーうるさいぞー。その辺にしとけ」

「俺?!」


先頭の方から担任の間の抜けた声が飛んできた。

周りの奴らが俺らをチラチラ見てた。

林が急に大人しくなった。

それに合わせて、凛が手を降ろしてくれた。

まだ繋いだままだったけど。


「中野、後で握らせて?」

「ウチも」

「私も」


女子三人がトーンを落として、上目遣いで俺を見てきた。

そんな目で見られたことなかったから、腰が反った。

俺がでかいから、上目遣いは自然とそうなるんだろうけど。

減るもんじゃないし、まぁ、いいかと、頷きかけた。

しかし、柔らかいってなんだ、と思って止まった。


「……痛って!」


指の根元の関節がごりっと鳴った。

爪が食い込んで、思いっきり振り払った。


「凛!」

「あーごめんごめん。力入った」

「中野ー二回目だぞーいいかげんにしろー」


担任の注意より俺の利き手だ。

思いっきり爪の跡が入っていて、指の形に赤くなっていた。

息をふーふー吹きかけた。


「いって……利き手なんだけど……」

「大丈夫?」

「バレー出来なくなったら、どうしてくれるんだよ……」

「責任とるよ」

「どうやって!」

「……それは、ちょっとここでは……」

「こわっ!」


全身の毛穴がぶわって広がった感覚がして、身を抱いた。

しりとりから、俺、凛に過剰になってないか?と、首を捻った。

俺の考えすぎかもしれないけど。

それだったら、ハズいから頭から追い出した。


「中野ー! 先生の後ろー!」

「えー!」


担任が先頭で、手招きをしていた。

顔が歪んでいく。帰りは小言の嵐かと、息が漏れた。

藤田と林がニヤニヤして「ドンマイ」なんて言ってたけど、無視して前に歩き始めた。

一歩半歩いたところでリュックの紐を引かれて、振り返った。

凛かと思ったら、違った。

“坂下”だった。こいつ、坂下って言うんだ。へー。


「ごめん。わたしらのせいだよね?」

「お前のせいじゃねーよ。気にすんな」

「ジュースおごる」

「そんな、いいよ。俺が悪いし」


坂下がニコリと笑った。

どこ見てるか、わからなかったけど。


「中野ー! 早く来い!」

「はいはい!」

「はいは、一回! 舟入先生に言うぞー!」


舟入先生はバレー部の監督だ。

名前を出されただけで、鬼みたいな顔がよぎって震えあがった。


「うわっ!それだけは……!」

「返事!」

「はい!」


砂利を踏み鳴らしながら、先頭に立った。

背中に突き刺さる視線が多すぎて、鳥肌が立った。

目立つの苦手なんだけどな。

先生の後ろに立つと、満足そうに頷いた。


「先生なんで俺?」

「お前が目立ってるからだろ。先生もさっき主任に嫌味言われたんだからなー勘弁してくれよ」


胃のあたりを押さえながら、空を見上げていた。

どんな嫌味だよ、と突っ込みそうになるがやめた。

最近担任の顔色が悪い。

俺らって、そんな問題児ばっかだったっけ?

普通だと思ってたけど。そもそも体育以外、授業中寝てるから、知らんけど。


「お願いだから、中間も頑張ってくれよ……」

「いつも頑張ってるじゃないですかー!」

「お前だけだろ! 小テスト全部埋めないやつ」

「は?! みんな全部埋めてんの?!」

「進学クラスだろ……」


担任が頭を抱えた。

あ、俺だった問題児。

頬がピクピク動いた。

先生は、不憫という文字を背負っているようだった。


「……先生、ごめん。俺、頑張る」

「そうしてくれ……お願いだから。英単語しながら帰るか?」

「え……」

「なんだ?」


先生の瞳に闇を見てしまった。

選択肢は【はい】と【Yes】の2択。

なんでうちの担任は英語教師なんだ。一番苦手なんだけど。


「オネガイシマス」

「じゃあ、まず……」


帰りは担任の個人授業をみっちり受けた。

歩いてるから、寝れない。

容赦ない英単語の嵐に、ほかのやつらには物理的な距離を置かれた。

逃げられそうにない。

間違えるたびに担任の目が血走っていって、怖かった。

学校に着くころには、頭も足もパンパンになってて、目が回りそうだった。

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