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しりとりしたら、あいつの想いに気づいてしまった。~胸キュンしりとりは、罠?!~  作者: 歩磨(旧:あゆま3)


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3/21

③

どうやってここまで歩いてきたのか、記憶がない。

ただただ右左と上がってくる靴を見て、ロボットにでもなったような気分で石段を登った。


凛がしたいって言うから、しりとりに付き合ったのに、変なこと言うから。

今まで凛のことをそういう目で見たことはなかった。

入学して、クラスでも部活でもずっと一緒だったけど。

凛は、男の俺から見ても、かっこいいし、背も高い。

性格もなんやかんやで優しいし、いい男だと思う。

だけど、付き合うとかそういうのは正直わからなかった。

学校でLGBTQって習ったけど、知識としてさらっと流しただけだったし。


グルグル考えてたら、少し先に見たことあるハイカットのスニーカーが見えた。

顔を上げると、手水舎の前で大行列になっていた。

「端に二列に並んでー!」と先生が叫んでいた。

端に寄ると、凛が横に並んだ。

話しかけられる前にイヤホンを耳にねじ込んだ。

やっぱり何回聞いても、あのアニメのOPは最高で上がった。

アップテンポで駆け上がる感じが好きだった。


「なに聞いてんの?」


聞こえていたけど、無視した。

さっきのこともあるし、なんて返せばいいか迷った。

全然前が進まない。

言葉選びに迷っていると腹が鳴って、返事みたいになった。

朝練の後、拳二つ分くらい大きいおにぎり食べたのにおかしい。


「中野ー! うちもお腹空いてんだけどー! 鳴らすなよー!」

「それなー!」

「腹減ったんだから、しゃーないだろ!」


背後の女子からヤジが飛んできた。

振り返ったら、きゃっきゃ笑い始めた。

意味が分からん。

そもそもこいつら、俺に異常に厳しい。

席が前になったら、見えないだのなんだの。

さっきも睨まれたし。


「腹の音、でかすぎて、草」

「それなー!」

「お前もか?!」


凛が俺の右耳からワイヤレスのイヤホンを勝手に取った。

サビ前なんだけど。

そのまま当たり前みたいに、凛の耳にハメた。

裸にされたようで、喉の奥がひくりと鳴った。


「あー、コレ聞いてたん?」

「わりーかよ!」

「んーん。悠希っぽい」

「なんだよそれ……」

「バカ一辺倒みたいな」

「お前ー!」

「痛―! ギブギブ―!」


肩に腕を巻き付けて、壊れない程度に締め上げた。

腕をバンバン叩かれる。


「中野やめなよー!」

「栗栖君がかわいそうじゃん」

「お前らなんなん?! 扱い違うくない?」

「え? 当たり前じゃない? 驚きなんだけど。」


全員が同じキョトンとした顔だった。

女子たちが顔を見合わせて、また笑ってた。

力が抜けて、凛を離した。

前が進んだから、三歩ほど進んだ。

日陰に入って、凛が詰めてきた。

イヤホンから次の曲が流れてきて、流行りの女の子アイドルの曲になった。

赤い子の目がうちの犬にちょっと似てて、かわいいんだよな。


「もういい……」

「悠希は可愛いからいいんだよ」

「嬉しくないし……」


ん? 今なんて言った?!

意外に近くにあった顔をまじまじと見た。


「ほら、握ったら音が出るおもちゃみたいで!」


ニヤリと笑った。

悪魔だ。悪魔がここにいた。

凛の耳から乱暴にイヤホンをもぎ取った。

そのまま、自分の耳からも取ってケースに仕舞い込んだ。


「怒った?」


顔を覗き込まれた。

努めて仏みたいな顔をした。神社だけど。

凛が吹き出した。

それでも、俺は仏になった。


「なにその顔?」

「仏」


凛が穏やかな顔になっていって、横に広がった口を開いた。


「その顔もかわいい」

「なんだそれ」


俺は速攻真顔に直した。

あんまり変わらないけど。

凛が腹を抱えて、屈んだ。

口元を押さえて、肩を震わせていた。

腹立つ。

俺の口は手水舎に着くまで、一文字からピクリとも動かなかった。



順番になって、竜の口から流れる、シャー芯みたいな水を杓に汲んだ。

そりゃ行列にもなるわ、と杓を揺らした。

ちゃぷちゃぷと杓の中で水が跳ねた。

揺らしても、全然溜まらない。

待ちきれなくて、指先だけを濡らした。

冷たいのかと思ったのに、意外にぬるい。

横で口を漱いでるヤツもいたけど、俺は心の中で漱いで、そっと杓を置いた。

神様も赦してくれると思う。だって後ろも詰まってるし。

さっき階段で落としたタオルで手を拭いた。

高校名が入った黒のタオルは、普段は枕代わりだ。

今日は帽子代わりで、手拭き代わり。

拭き終わって、頭に被ろうとしたら、びちゃびちゃに濡れた手が伸びてきた。

手を辿ると、凛だった。


「お前同じの持ってるだろ?」

「出すのめんどい」

「あー!」


はらりと俺の頭から凛の手元にタオルが引き寄せられた。

ガシガシと手を拭かれて、差し出された。


「……洗濯して返せよ」

「部活の時、困るだろ?」

「もう既に困ってるだろ?!」


タオルを引っ張ると、ぐちゃぐちゃにまとめてリュックに詰め込んだ。

凛は手を叩いて笑っていた。


「あー楽し!」

「楽しくねーよっ!」


帰りまでに頷かせるって言ったのに、頷くための要素が0だ。

え、違う。頷くための要素って頷きたいみたいじゃん。

掌で、顔を拭った。

凛と距離を空けて、先を見据えた。

最後の最後で急な階段がそびえ立っていて、神社の屋根さえ見えなかった。

端の手すりに縋り付きながら上がっていたり、休憩してるヤツもいた。


「……」

「競争な!」


凛が俺の尻を叩いて、先に駆け上がった。


「ズルいぞ!」


ふくらはぎが重くなってきたのに、ここで階段ダッシュはきつい。

でも、負けるのが嫌で一段目を踏み込んだ。

早く、早く、先だけ見て、凛の背中だけ見て、足を上げた。

先頭の担任も置き去りにして、駆けて、駆けて、駆けた。

心臓は胸を突き上げて、息は足に合わせて吐いた。

一向に背中は大きくならない。

でも、楽しくて、胸はまた強く打ち始めた。

あと5段というところで、凛が先に境内に登り切った。


「やり~! 勝ち~!」


俺に振り返って、腕を上げた。

俺も最後の段を上がって、膝に手を突いた。

なんか言い返そうと思ったけど、息が切れて一言もしゃべれない。

そもそも短距離走勝ったことないのに、なんで勝負したかな、俺。

負けた悔しさも重なって、なかなか身体を起こせなかった。

凛に肘を掴まれて、ぐいぐい引っ張られた。

乳酸が溜まり切った足は抵抗する気もなくて、引かれるがまま動いた。

賽銭箱は、本殿の前に3つ並んでいて迷わず中心に並んだ。

左と右は全然並んでないのに。


「もう、あっちでいいじゃん」


俺は左の方を指さした。


「こういうのはな、真ん中なんだよ!」

「痛っ! やめろよ!」


差していた指を握り込まれて、捻りあげられた。

振り払って、手を握り込んだ。

よくわからないが、もう任せた。




「なー、進まないんだけど」


10分して、俺は凛の腕を引いた。

学校を出て、2時間くらい。

さすがに足の裏がジンジンしてきた。

しかも、さっき走ってちょっとだるいし。

みんな、信心深いのか手を合わせると長い。

そんな言うことある!?と思いながら、黙って並んでいた。


「せっかちすぎんだろ。ちょっとくらい待てよ!」

「えー座りたい……」

「おんぶしてやろうか?」

「どういうこと?!」

「冗談」

「……」


まぶたを半分くらいまで下した。

賽銭箱の前には、男が3人並んでいたが俺の念が通じたのか、さっさと退いた。


「なー、なにお願いすんの?」

「秘密 言ったら叶わなくなるじゃん」

「いいじゃん。ちょっとくらい」

「悠希は?」

「俺? なににしようかなー」

「赤点回避だろ。」

「ガチなヤツ!」


うちの部活は、赤点を取ると参加停止されるという制度があった。

練習中、隅でずっと勉強しないといけないのだ。

当然、試合にも遠征にも連れて行ってくれない。

実は、いつも赤点ギリギリで、凛に教えてもらっていた。

同じような日々を過ごしてるはずなのに、こんなに差ができるのは、なぜなぁぜ?

ついでに明日英語の小テストあったの思い出して、空を見上げた。

鳩が5羽、本殿の屋根に停まっていた。


「……俺の願いなんて、わかるだろ?」


落とした声が隣から聞こえた。

常に自信満々の凛からは聞いたことない声だった。

1羽の鳩が飛び立って、その鳩を目線で追った。

遠くに飛んで行って、目線を落としたら、凛と目が合った。

自分たちの番まで、あと3グループというところだった。

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