↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
しりとりしたら、あいつの想いに気づいてしまった。~胸キュンしりとりは、罠?!~  作者: 歩磨(旧:あゆま3)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/22

⑲

眠い。眠すぎる。

まだ1時間目なんだけど。

身体は先生の方に向いている。

ホワイトボードには、呪文が生成されていた。

霞んで見えて、全然頭に入らない。

机上のタオルが俺を呼んでいる。

薄いけど、頬を押し付けると、そうそう。

こんな感じで、ふかふかなんだよな。

手を握られて、揺らされた。


「中野、起きろ。起きろ」

「う……ん?」


あ、やべ、寝てた?

のろのろと身体を起こすと、ヨダレが垂れそうになって、口元にタオルを押し付けた。

教科書を眺めた。

横から、にょきって日に焼けた指が伸びてきて、止まった。


「ここから。3行目」


指先の下から、もごもごと読み始めた。

なんとなく読めた。

やるじゃん俺って思ってたのに、最後の最後で詰まった。

なんだ、この単語。

読めねー。


「それ、インヴァイアロンメント」

「イン……?」

「インヴァイアロンメント」

「いんばいえろんめんと」

「はい。いいぞー! 寝るなよ中野ー」

「はーい」


先生が俺が読んだところを読み直して、訳し始めた。

俺は本城に向かって、手を合わせた。


「ありがと。助かった」

「いーえ。ついさっきまで起きてたのに。雪降るかと思った」

「あーははっ……」

「テス勉、ごめんな」

「こっちこそ、ごめん」


本城が申し訳なさそうに頭を下げたから、俺も下げた。

本城の髪が顔にかかった。


「大丈夫そ?」


心配までしてくれるなんて、なんていいヤツなんだ。


「あ、うん。凛に助けてもらう」

「仲直りしたんだな。」

「……ケンカしてないけどな」

「いやいや昨日怖すぎて、チビリそうだったもん」

「ウソっ」

「あ、ヤベッ!」


本城に瞳が前の方に動いて、素早い動きで身体を伏せた。


「中野、真面目に受けよう」

「お、おう……」


早口で、本城がシャーペンを握った。

俺もシャーペンを握って、窓際の一番前の席を見ると、目がバッチリ合った。

凛が顎を手に乗せていて、すぐに顔が前に向いた。

……こっち見てたな。

ひとまずホワイトボードのヤツ、ノートに書き写そう。そうしよう。

シャーペンをノートの上に滑らせた。

ミミズが這うような文字しか書けなくて、途中で諦めた。

背もたれに全体重かけて、先生の声を鐘が鳴るまで聞き流した。


次は体育だった。

着替えて廊下に出ると凛が前のドアから出て、俺を待っていた。

ゆっくり歩いて隣に並ぶと、凛が俺に合わせて歩き始めた。


「結構起きてたじゃん」

「寝たら当てられたけどな」

「寝るなよ」

「頑張ったんだけど、無理だった」

「……本城に手握られてたじゃん」

「そうだっけ?」


背中じゃなかったか?

全然覚えてない。

廊下を突きあたって、階段を見下ろした。

本城はすぐ階下の踊り場で、3人並んで歩いていた。

真ん中で左右に首を動かしながら、他の2人と話していた。

ちなみに他の2人は柔道部の相原と陸上部の松下。


「握らせるなよ」

「無理じゃない?」

「寝なかったら、いいじゃん。それか、グーするとか」


善意でちょっと起こしてくれただけなのに。

失礼じゃない?

そもそも、手、握られたか?


「なにそれ。それより、今日の体育なんだっけ?」

「話変えるなよ」

「は? おっと!」


凛が変なこと言うから、階段の最後の段で踏み外しそうになった。

凛に肘を掴まれて、なとか逆の足で踏ん張った。

転倒は免れたけど、だいぶん恥ずい。

後ろのヤツに見られたか。


「大丈夫か?」

「うん。ありがとう……」


腕を掴まれたまま、踊り場を過ぎて次の階段を下り始めた。

半袖着てるから、直に凛の体温を感じる。

結構強く握られてて、凛の指が沈んでた。


「離せよ。」

「なんで?」

「なんでって……」


もう階段を下り切ったのに、まだ離さない。

体育館までの渡り廊下前で女子たちと合流した。

チラチラと見られて、いたたまれない。

生ぬるい風が前髪を揺らした。


「もう危なくない」

「本城は良くて、俺はダメなんだ」

「状況が違うだろ」

「変わらない」

「一瞬だったじゃん」

「結構ガッツリ握られてた」


面倒。ほんと、めんどくさい。

あー言えば、こう言う。

そもそも、凛って俺のなんなんだ?

付き合っては……ないよな。

なにも言ってないし。

そういえば、好きって言ってないし。

あれ……? なら、これはなに?

凛の白くなった指先を見つめた。


「触れさせて欲しくない……」

「……無理だろ」

「なるだけ」


体育館の入口に差し掛かって、段差を踏み込んだら腕が自由になった。

腕に爪痕が残っていた。

凛も俺の腕を見ていて、袖を下に引っ張った。

全然隠れなかったけど。

痛そうな顔だったから。俺が痛かったんだけどな。


「ごめん」

「別に……」


体育館はシャトルランのリズムが軽快に流れていた。

そうか。今日はシャトルランか。

シャトルランは20メートルの間隔をリズムに合わせて往復する持久走だ。

音楽を聴いてたら、俺の中の負けず嫌いがむずむず込み上げてきた。


「凛、勝負な」

「……話聞いてた?」

「聞いてる聞いてる」

「……」

「なに?」


瞬きもせずに、目をじっと見られた。

そんな見なくても。

ちゃんと聞いてたし。

なるだけ気を付けるし。

俺も負けじと瞳を見た。


「いや……いい。勝負な」

「勝った方の言うこと一個なんでも聞く、でいい?」

「……絶っ対勝つ」


眉頭がピクリと動いて、強めに言われた。

なんだ、凛もやる気じゃん。

なにしてもらおうかな。

去年勝ったし。


チャイムが鳴って、音楽がぷつっと消えた。

準備体操も終わって、先生の短い説明の後、女子からってなった。

俺たち男子は、壇上に登って待機することになった。

俺は真ん中の方で、胡坐をかいて座った。

凛も俺の横に同じように座った。

リズムが鳴り始めて、一斉に女子が走り始めた。


「目標何回?」

「悠希に負けなかったら、何回でもいい」

「必死か!」

「当たり前」


肩に突っ込み入れてみたけど、冷たい目で返された。

急いで腕を引っ込めた。


「なに? 勝負してんの?」


本城の首が俺の隣から伸びてきた。


「うん。そう」

「俺もいい?」

「俺もー!相原、お前は?」

「俺はいいわ……膝痛いし。」


本城は控えめに言ったのに、松下は右手を挙げてアピールしてきた。

相原は、気まずそうな顔で言った。

松下が入ったら、勝負にならないような。


「凛、いい?」


愛想の良さそうな顔をしてて、喉奥が絞まった。

全然目が笑ってないんですけど。


「いいんじゃない?」

「おっし!負けないぞー!」


松下が肩を回し始めた。

レベルアップのアナウンスがされた。

音楽は最初に比べると、格段に次のスタートが早くなっていた。

ステージの下を見ると、藤田と坂下が仲良く隅で座り込んでいた。

脱落早すぎだろ。


「早く走りたい……!」

「林がいるからなー。まだじゃない?」

「落ち着け、松下!」


本城たちが話してるのを見ていたら、床に突いていた、手の甲を撫でられた。

くすぐったくて、身体を竦めた。

手首まで時間をかけて撫でると、凛の手が俺の手の上に掌が重なった。

凛は前を見据えたままだった。


「中野、去年なんかいだった?」

「忘れた。俺が優勝するから」

「なんだとー!」

「あはは!」


本城達と女子が終わるまで話したけど、意識は常に手にあった。

時たま、指を曲げられて指先を撫でられた。

声を上げそうになったけど、ぐっと堪えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。