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しりとりしたら、あいつの想いに気づいてしまった。~胸キュンしりとりは、罠?!~  作者: 歩磨(旧:あゆま3)


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18/21

⑱

俺のスマホが鳴って、影は二つに分かれた。

スマホはぼんやりとした光を放って、バッキバキに割れた画面を映し出していた。


「あ゛ー!!」


スマホを拾い上げた。

線が入りまくった画面には母と表示されていて、まだ鳴っていた。

だめだ、やっぱだめだ。

凛のことも大事だけど、スマホも大事だった……

どうすんだコレ。ショックすぎる。


「悠希! 何時だと思って、って……凛君?!」

「こんばんはー」


母さんがスマホ片手に玄関ドアを持ったまま、立ち尽くしていた。

思いっきりパジャマじゃねぇか!

ちょっと待て、地獄なんだけど。

なんて言い訳するんだ。

俺、凛と至近距離でスマホ持ってる。

地面に上着と全開のリュック。

今度こそ、詰んだ。

凛と顔を見合わせた。


「じゃあな、俺帰る」

「お、おう。ありがとな」


凛が母さんの方に向き直した。


「夜分遅くすみません」

「いつもありがとね。遅いし、車で送っていこうか?」

「いえ、近いんで大丈夫です」

「そう? 気を付けてね」

「はい。失礼します。」


凛は小さく頭を下げると、俺に片手を上げて去っていった。


「悠希、さっさと家入りなさい!」

「うん」


母さんはさっさと家に入っていった。

俺は凛の背中を小さくなるまで見つめた。

それから、スマホをズボンのポケットにねじ込んだ。

上着を払って、腕にかけて、リュックを持った。

リュックが逆さに向いてしまって、中身が地面にがさッと落ちた。

一瞬固まった。

なにやってるんだ……

一つ一つリュックに詰め込んだ。

チャックはやっぱり閉まらなかった。

背負わないで、手に持った。

スマホをポケットから出して、萎えた。

メッセージ通知は来てなかった。

ん?って思ったけど、右上の数字を見て急いで家に入った。



翌朝。

朝練があるから、まだ少し早い時間。

俺は小鳥のさえずりを聞きながら、駅に向かって糸みたいな目で歩いていた。

寝れないかなって思ったけど、ベッドに入ったら、もう寝てた。

爆睡。でも、まだまだ眠い。

ほんと、一日30時間くらいにならないかな。

凛みたいな人か近づいてきたけど、夢かな?


「危ないぞ」


凛の声。

へ……?

目が開いた。

俺の横に並んで、駅に向かって歩き始めた。

ちょっと待って、合流地点もうちょい先なんだけど。


「なっ……! なんでいんの?」

「迎えに来た」


凛がふわりと微笑んだ。

手をおでこにかざして、仰け反った。


「眩しっ」

「太陽あっちだけど」


俺の方に凜が指差した。

確かに、俺の右頬が暑い。


「……お前鏡見たことある?」

「え、俺?」

「うん」

「なんかついてる?」


小首をかしげられた。

日の下だと破壊力が倍以上だった。

心臓が飛び出そう。

凛の顔なんて毎日見てたのに、昨日とは全然と違う。

なんだ、コレ。フィルターかかったみたいだ。

2割増しくらいでかっこよく見えるんだけど。

ネクタイを鳩尾あたりで握って、首を振った。


「変なの。あ、元からか」

「失礼な!」


二の腕を軽く拳で殴った。


「痛っ! だから、パワーがゴリラなんだって」

「そんなはずないだろ!」


大げさに腕をかばってよろけた。

めっちゃ笑顔だし。ふざけんな。

端が上がった口に目がいって、前を向いた。

なんで見た、俺。

心臓が過剰に仕事する。


「……昨日、ありがとう。助かった」


ちゃんとお礼言えなかったし。

言ったかもしれないけど、記憶ないし。


「うん。俺も……ありがとう。嬉しかった」


ちょっと歩調を早めた。

電車の時間まで全然時間あるけど。

手を前に振って、後ろに引くときに手を握られた。

ぶんぶん大げさに振られた。


「……やめろ」

「いいじゃん。だれもいないし」


周りをぐるっと一周見回した。

ほんとに誰もいない。

カラスくらいしか。

人いるから離せって言おうとしたのに。


「今日も来るだろ?」

「え?」

「断ったんだろ?」


凛の方に手をグッと引かれた。

距離が縮まった。

昨日、相談する前に帰ったんだっけ。


「断られた。テニ部やばいヤツ多いんだって」

「そこに悠希が加わったら、全滅だったな」

「俺、そんなやばい?」


まだ赤点取ったことないぞ。

入学して最初のテストで43点取ったけど。

あれ以降、凛に教えてもらって、最低でも60点は取ってるし。


「やばいやばい」

「ひどくない?」

「そんなことないって」


手が離れるまでブンブン腕を振ってやった。

なかなか離れないなこの手。しつこいぞ。


「ウソウソ。冗談じゃん」

「触るな!」


手を取られそうになって、払った。

パチンと音がした。

思ったより、強く当たってしまった。

手を顎の下まで上げたまま、下げられない。

すぐにごめんって言えばいいだけなのに、唇は引っ付いたまま開こうとしない。

ちょうど隣の高校名が入った、ジャージ姿の女の子が左の道から曲がってきた。

結構会う女の子で、目が一瞬合った。

興味なさそうに、俺らの前に入って歩き始めた。

唇が重くなって、なおさら言いづらくなってきた。

女の子のバックについてた、ぬいぐるみが歩くたびにゆらゆら揺れていた。

かわいい顔に似合わず、意地悪く笑っていた。


ーーやっぱ無理なんじゃん。


そう言われているような気がして、ムっとした。

腕を隣に伸ばして、手首を掴んだ。

駅に近づくたびに人が増えていった。

手首から下に指を滑らせて、凛の指の間に差し込んだ。

ぐっと握ると、握り返してきた。

女の子と俺たちの間に人が増えて、ぬいぐるみは見えなくなっていた。


ーーほら、無理じゃなかっただろ。


心の中で呟いた。

手に力が籠った。


「悠希……ちょっと痛い」

「ごめん!」


低い声でぼそりと囁かれて、ぱっと手を開いた。

凛が俺から顔を背けて、堪えるように笑い始めた。


「なんだよ」

「なんでもない」

「……笑うな」

「やっぱかわいい」


また、出た。違和感しかない。

口がへの字になった。

一回、チャッピーに聞いてみよう。そうしよう。

ちょっと、自分では答えを出せない。

返事に困るし。


「そろそろ離す?」

「もうちょっとチャージさせて」


指をそっと折った。

指先が凛の手の甲に触れた。

今まで気が付かなかったけど、吸い付くようで心地が良かった。


「凛の手もフワフワ……」

「そうか? 悠希みたいに肉厚じゃない」


口に出したつもりがなかったから、手が開いた。


「指が太いだけじゃん」

「それがいいんじゃん。ウィンナーみたいで」

「……全然嬉しくない。離して」

「グーしたら、クリームパンみたいな」

「……腹減ってんの?」

「別に? めっちゃ食ってきた」


凛の頭の中、どうなってんの?

ちょっと心配になってきた。

駅の前にやっと着いて、吸い込まれる人の流れに乗った。

こんな遠かったけ?

駅の時計を見上げて、針は早い時間を刺していた。

うそだ。もっと時間経ってるって思ったのに。

なぜだ?

改札を抜ける時は流石に話してくれたけど、すぐに手を差し出された。

手を伸ばせば、すぐに包まれた。

電車は、早い時間で座れるくらいだった。

敢えてドアの近くに立って、隠すように引っ付いた。

肩も太ももも触れていて、近い。

周りに倣って、スマホを眺めた。

凛のインスタにメッセージを送った。


『今日行っていい?』

『いいよ。なんでメッセ??』


即レスだった。


『近すぎ。』


一呼吸置いて、俺の寝顔の画像が送られてきた。


「ふぁ?!」


変な声がでた。

周りの視線が刺さった。

凛に近づいて、手を必死に隠した。

凛の尻に手が触れていた。


「痴漢」

「ちょっお前!!」


声を潜めて、繋いだ手で尻を叩いた。

凛の口が横に広がった。


「いつ撮った?」

「こないだの遠征」

「盗撮……」


よく見ると、背景がジャージっぽい。

しかも、俺の口角がちょっと上がってる。

なに、この顔。


「消せ」

「え、いい写真じゃん」

「いいから消せよ。記憶からも」

「コンビニで引き延ばして、印刷しようかと思ったんだけど」

「……本気で止めろ」


間違ってしまったのか……俺?

こめかみがツキツキと痛み始めた。

それでも、手は離れなかった。


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