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しりとりしたら、あいつの想いに気づいてしまった。~胸キュンしりとりは、罠?!~  作者: 歩磨(旧:あゆま3)


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17/20

⑰

俺は、さっき解いた最後の問題から目が離せなかった。

これは凛のサポートでちゃんと答えが出た。

けれども、凛の想いへの答えは難問すぎた。

OKしたら、その先が想像できなさすぎて怖い。

なにするのか、どうなるのか。

変になりそうだし。

断ったら断ったらで、今までみたいにいられないだろうから無理だし。

絡みついている、腕を片手で握った。

こうやって自分から触れてしまうのは、好きってことなのか、ただ単に寂しいからだけなのか。

違和感はない。いや、熱いか……

判断材料はあるけど、どれを選択して判断すればいいかわからない。

うじうじ悩むタイプじゃないだけに、じっくり考えれば考えるほど迷宮の奥底に迷い込んだ。


「あーーー!」

「なに?!」


俺は奇声を上げながら、立ち上がった。

凛の腕は外れて、床に両手をついていた。


「ガツガツし過ぎたら、振られるんだぞ!」


しんと静まり返った。

なに、言ってるんだ俺は。

振る前提?

握った拳に力が入った。

凛は俺をしばらく見上げたまま、瞬きさえ忘れたようだった。

すくっと立ち上がって、同じ目線になった。

俺は一歩下がった。

真顔で何も言わないから、めっちゃ怖い。


「からかってんの?」

「そんなはず……ない」

「もう、帰る?」

「え?」

「ガツガツしたら、振られるんだろ?」


それでも強引に丸め込まれるって、思ってたのに。

肩透かしにあったようで、助けを求めるように目を見つめたけど、思いっきり逸らされた。

凛が開いたままになっていた俺の参考書をパタンと閉じた。

ルーズリーフと重ねて、座卓の上でトントンと端を揃えた。

シャーペンと消しゴムを筆箱に片づけられて、チャックを乱暴に閉められた。

教科書の上に置いて、流れるように一つに纏めると差し出された。

数学Bの文字が、凛に向いていた。


「はい」

「……」


腕が重すぎて、上がらない。

唇を噛んだ。


「早くしろよ」


冷たい声に胸がツキンと痛んだ。

腕は1ミリも上がらない。

凛が俺から目を逸らして、頭を振ると、俺のリュックに手に持った荷物を押し込んだ。

ぐしゃって音がして、チャックが途中で引っかかっても力技で端まで閉めた。

「壊れる、止めろ」って言うことろだけど、目で追うことしかできなかった。

それを俺の胸に投げつけるように押し付けた。

手をすぐに離されて、滑り落ちた。

俺は膝を曲げて、寸のところで抱え込んだ。


「出口、あっち」


膝を曲げたまま見上げると、無表情で出口を指さしていた。

キツイ。こんな態度取られたことなんてない。

指先が冷えて、感覚がない。


「……ごめん」

「なにに対して?」


一番最低な選択。

繕うことさえもできない。

視線が下がった。


「もう10時だし。帰って」


柔らかい声だった。

まだ吐き捨てるように言ってくれた方がよかった。

全然目が合わない。

俺はリュックを背負った。

リュックに付けてあるもじゃもじゃのキーホルダーが揺れて、肘に当たった。


「じゃあな」


返事はなかった。

凛の横を通り過ぎて、部屋を出た。

ドアを音も立てずに閉めた。



寒気がしてスニーカーから視線を上げると、俺の家の前だった。

ここまでの道中のこと、一切覚えていない。

袖まくりした腕に鳥肌が立っていた。

肩が軽くて、上着を着ていないことに気づいた。

ズボンのポケットに手を突っ込んで、血の気がさっと引いていった。

リュックを汚れるのも構わず地面に下した。

チャックを詰まりながら全開にして、手を突っ込んだ。

つるりとした質感の感触が全然当たらない。

なんかの紙が俺の手に押されて、中でぐしゃぐしゃになった。

座り込んで、サイドのポケットも、いつ開けたかもわからない前のポケットも開けて探った。

ない……? ない! ない!! スマホが!!

やばい、やばい、やばい!! 生きてけない!!

足元がヒヤヒヤする。

絶対凛の家だ。

今、何時だ? あ、スマホなかったんだ……。

凛の家今から行く?

遅い? 迷惑? でも、スマホなしとか……無理すぎる。

また凛と会うとか……

あの態度、また取られるのか?

無理。詰んだ。

空を見上げた。

結構早く流れてるんだな、曇って。

リュックのつまみを3本の指でつまんだ。

なんかを噛んでて、端から締まらない。

良く見えないし、リュックは開けたまま、立ち上がれない。


「悠希!」


聞こえないはずの声が聞こえた。

どんだけ願望が強いの?

がくっと頭を下げた。

リュックの影が俺の膝まで伸びていた。

そこに、大きな影が伸びてきて、リュックの影が無くなった。

顔を上げると、黒い大きな布が広がって襲ってきた。

視界を奪われて、布を掴むと固い生地が指先を押し返してきた。

腕を下げると、俺のスマホのアップが目に飛び込んで来た。

スマホを掴む腕を辿った。


「忘れ物」


暗がりで顔は見えなかった。

でも、声が求めていた凛のもので、あきれたような言い方もよく知ったものだった。

俺は掴んでいた制服を投げ捨てて、目前のスマホを無視した。

凛の首に、飛びついてた。

凛は後ろに半歩くらいよろけたけど、しっかりした胸で受け止めてくれた。

鳥肌だらけの身体が凛に温められていく。

足元からガシャって、音がした。

たぶん画面が割れた。

けど、そんなことはどうでもよかった。


「凛、凛」

「止めろ」


離さないと言わんばかりに腕に力を込めた。


「……楽しいか?」


首を振った。


「俺の気持ちとか、考えたことある?」

「……」

「期待させるだけ、させといて……」


胸に引っかかる想いを言葉にするのは難しかった。

失いたくない気持ちは確か。

一緒にいたい気持ちも確か。

ただ、認めたくなかった気持ちも確か。


「離せ」


凛の言葉を封じたかった。

微かに開いた唇だけが見えて、そこに自分の唇を押し付けた。

歯が下唇に当たって、痛みが走った。

答えを出すには充分すぎた。

一刻も早く伝えたくて、離した。

凛の唇はまだ開いていた。


「凛の言う通りだった」

「……ん?」

「ちゅーしたら、わかった」

「……」


凛の唇が閉じられた。


「俺、好き……」


言葉にしたら、一気に鼓動が早くなって熱が顔に集中した。

瞳から鼻に視線を下げた。

無性に恥ずかしくなった。


「……かも」

「かも?」


低い声で、首がすくんだ。

凛に腰をがっちり抱え込まれた。

影が完全に一つになった。


「もう一回、な?」


顔が近づいてきた。

目を閉じた。

鼻先に柔らかい感触を感じて、目を開けた。

凛のドアップがそこにあった。

一回瞬きする間に鼻先に感覚がなくなって、もう一回瞬きしたら今度は唇が温かみを感じた。

強引なのに、優しかった。

きゅーっと胸が締め付けられる。

目を閉じるタイミングを失って、合わない焦点を合わせようと目を細めた。

唇の感覚がなくなって、焦点が合うようになった。

隠された瞳が現れた時、吸い寄せられそうになった。

寸のところで、留まった。


「好きかもで合ってる?」


小首を傾げられた。

全然可愛くない。

可愛くないけど、好き。

ごめん、好きだったよ。凛の事。

言葉が詰まって出ない。

代わりに、凛の首筋に顔を埋めた。


「早く答えろよ」

「空気読め」

「難しすぎてわからない」


俺はニヤけて、弧に描いた唇に吸い付いた。

重なった俺たちの影は、雲が月を隠して見えなくなった。

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