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しりとりしたら、あいつの想いに気づいてしまった。~胸キュンしりとりは、罠?!~  作者: 歩磨(旧:あゆま3)


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11/22

⑪

解散後、いつも通り凛と並んで駅の方向に歩いていた。

細道に入ったところで、俺たちしかいなくなった。

日は完全に落ちていて、街灯がぼんやりと辺りを照らしていた。

さっきとは比べ物にならないくらい空気が冷たい。

ポケットに手を突っ込んだ。


「あのさ、怖いんだけど」

「なにが?」

「なに怒ってんの?」

「別に」


学校に帰ってきても口数は少なかった。

本当に最低限。

一緒にいても、ちゃんと意味のある反省会になるような気がしなかった。

面倒臭くなってきて、リュックを背負い直した。


「帰っていい?」


緊張感を含んだ声を落とした。

凛が立ち止まった。

二歩先で俺も足が止まった。

凛が通り過ぎる車のヘッドライトに照らされた。

今にも泣きそうな顔で、迷子になった子供のようだった。


「俺を置いていくのか?」

「置いていかれてるのは、俺じゃん。」


眼光が鋭くなった。

暗くてあまり見えないはずなのに、刺さった。

こっちは焦って、どうにかなりそうなのに。


「……強くなりたい」


絞り出されるように言葉にした。

凛の姿が輪郭しか見えなくなった。

絶対泣きたくなくて、鼻をすすって瞬きをいっぱいした。


「泣いてんの?」

「泣いてない!」

「めっちゃ涙声じゃん」


凛の指先がまだ濡れていない頬を受け止めるかのように撫でた。


「……泣けば?」

「嫌。」


瞬きもしないで耐えたのに、瞳の下から大きめの涙がポロッと落ちていった。

凛の指先が迎えに来て、右、左と拭った。


「……ごめん。」


瞳を伏せると、次の涙も落ちてきた。

顔を引いたのに、指がついてきた。

凛の手を掴んで、自分で拭った。

ぐっちょりと濡れた手の甲が気持ち悪かった。

ジャージの裾でゴシゴシ拭った。


「なんで?」

「かっこわるい」

「今更じゃん」

「……帰っていい?」


凛の口が横に広がって、肩を抱き寄せられた。

胸と胸がぶつかって、ドンって鈍い音がした。


「泣けば?」


鼻の奥がツンとした。

前方から曲がってきた車のライトが目の中に飛び込んできた。


「嫌」


と、言いつつ凛の肩に涙が落ちて、そこだけ色が濃くなった。

後頭部に手が置かれて、抑えられた。


「泣けるときに、泣いたらいいじゃん。誰も見てない」

「泣いてないって!」

「はいはい」


力が抜けた。


「……絶対追い越してやる」

「俺じゃないよね」

「うっせー」


ポジション違うから、そうだけど。

どうしても、あの場所に立ちたい。

歯がゆくて、悔しくて、嗚咽が漏れて、ぐちゃぐちゃだった。

ジャージがぐっしょりになっても、凜は文句も言わずに待ってくれた。

涙が出来ると目元がピリピリしていて、熱を持っていた。

この顔を上げる勇気がない。

でも、このままじゃいけないから、背中を叩いた。


「もういい?」


俺は胸を両手で押して、一歩下がった。

自分の手を眺めて、そこから上に顔を上げられなかった。


「……ありがとう」

「いいよ」


俺の声は掠れていた。

こんなに泣いたのは、いつ振りか。

顔を覗き込まれて、顔を背けた。


「見るな」

「なぁ、ちゅーしていい?」

「……普通にダメだろ」

「下向いてるし、頷いてるのと一緒だよな?」


急いで顔を上げた。

瞳に捕われた。

ヤバイと思ったけど、逸らせなかった。

まだ頭と背中に凜の手があった。

だんだん距離が近づいてきて、俺の肘が曲がった。

このまま……ちゅー、しちゃう……?

目を閉じようとしたら、ぎゃははって大きな笑い声が聞こえてきた。

瞬時に肘を伸ばした。

凛の胸に負けないくらい、俺の胸も強く打っていた。


「まだ、返事してない」

「……惜しい」

「惜しくない!」


また距離を詰めてきたから、胸を思いっきり押した。

凛が後ろによろけて、離れていった。


「だから、パワーがゴリラなんだって!」

「失礼な!」


凛が身体を揺らして笑い始めた。

さっきまでの魔王みたいな雰囲気の凛とは別人のようだった。

やっぱいつもの凛がいい。


「あー、もうちょっとだったのになー」

「全然! アラスカくらい遠かった!」

「遠っ! 早くOKしろよー」

「せっかちすぎるだろ!」

「待てないー ちゅーさせろー!」


覆いかぶさるように手が伸びてきたから、強めに払って逃げた。


「やめろ! セクハラ!」

「一瞬で判断しろ!」

「バレーじゃねぇんだから!」

「ははは!」


ひとしきり笑うと、凛の顔がすっと引き締まった。


「……精度、あげないとな」

「わかってる」

「早く上がってこい」

「おう」

「……帰るか」

「うん」


駅に向かってゆっくり歩き始めた。

肩を並べて、先に見える一段と明るい光を目指した。


「凛、ありがとう」


前を見据えたまま、言った。

小指が凛の手とぶつかった。

思い切って掴んだ。

握り返してはくれなかったけど、振り払われなかった。

言葉は交わさなかった。

乾燥してて、俺より高い体温が指先を温めた。

駅の光が俺たちを照らしはじめて、俺は手を離した。


「あのさ、さっき機嫌悪かったのなに?」

「なんで手離した?」

「……質問返しするなよ」

「気になるじゃん」

「……だって、人、いる」


俺が先に改札を抜けた。

凛は俺の背後にピタリとついてきた。

階段を上っていると、後ろに引いたタイミングで手を掴まれた。

ガッツリ掴まれて、顔を前に向けたまま、引っ張ったけど払えなかった。

俺たちの靴音とは別にヒールを鳴らすような軽い音が近くに聞こえた。

振り返れない。介護だと思ってほしい。そう、介護だ!


階段を上りきっても、全然離してくれなかった。

周りを見回すとスマホを見ている人だらけで、俺たちの手を見られることはなかった。

いつも並ぶ辺りの大学生風のお兄さんの後ろに並んだ。

俺たちの背後から、黒いパーカーを着たお姉さんが通り過ぎた。

お姉さんもスマホを見ていて、ほっとした。

隣に立つ凛を睨みつけた。

凛は機嫌良さそうに微笑んでて、握る力が緩まることはなかった。


「大丈夫だろ?」

「……」


離す気ゼロ。

瞬きを忘れて、凛の顔をじっと見てしまった。


「なに?」


口パクで「離せ」って言った。

わざとらしく首を傾げられた。

胃の辺りが重たい。ストレスが。

逆の手で鳩尾を押さえた。


「腹減った?」

「違う。お前のせい」

「俺は腹減ってる。今日の晩飯なにかな?」


そんなことはどうでもいい。

あんま目立ちたくない。

前だけ見て、口を噤んだ。

凛の視線が向けられているのを肌で感じた。

見るなオーラを放ちつつ、無視無視。


手は別れるまで離してくれなかった。

一人になった途端気が付いた。

不機嫌だったの、聞けなかったなって。

別に気になるわけじゃない……はず。

指先も冷えるし、走って家に帰った。


軽く息を切らして、玄関前でスマホをポケットから取り出した。

メッセージ通知が結構来ていた。

ちょこちょこ見るのに、今日は一日見てなかったから。

凛からも来てて、開くと遠足の写真だった。

1枚目はストレッチしている俺が写ってて、目を大きく開いて、今にも叫び出しそうだった。

なんでこれも送ってきた。消してって言ったのに。噴き出した。

2枚目は凛が満面の笑み過ぎた。俺も笑っているけど、本当に嬉しそうで。

ピンチアウトするように二本の指でスワイプして、自分をフレームアウトさせた。

拡大された凛の顔をじっと見た。

この顔、好きかも。

小さく、「あ、」って声が漏れた。

自分の声に驚いて、小刻みに首を振った。

ただ単純に顔がいいだけ! そうそう! なんでもない。

異常に胸が早くなったのは、気のせい。


最後の一枚にさっさと指先をスワイプさせた。

俺の驚き顔。指が滑って、電源を切ろうとしてしまった。

凛に押されて、ベンチに倒れてしまった時の写真だった。

めっちゃかわいいって言われたけど、全然そんなことない。

それに対して、凛の写りは良い。

黙って、2枚目と3枚目をダウンロードした。

『ありがとう』ってだけコメントして、玄関ドアを押した。

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