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しりとりしたら、あいつの想いに気づいてしまった。~胸キュンしりとりは、罠?!~  作者: 歩磨(旧:あゆま3)


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10/19

⑩

リュックを背負って、挨拶した後にバスの前に並んだ。

練習が終わって今まで他のヤツとは話したけど、凛とは一言もしゃべらなかった。

そもそも、近くにもいなかった。今も俺が二年の先頭で、凛が最後尾。

表情も固くて、明らかに不機嫌そうだった。

調子悪かったのかな?と思ったけど、交代してなかったから、それはない。

さっき頭に負荷をかけすぎた。なにも浮かばない。

前に続きながらちょっとずつバスに近づいていたら、背中を突かれた。


「ケンカしたのか?」


橋田にこっそり耳打ちされた。

もちろんケンカした記憶はない。

首を振ったら、眉を寄せて難しそうな顔になった。


「痴話ゲンカだろ。つつくなよ」


西尾がボソッと言い放った。

全っ然違う! しかも、俺、なんもしてないし!!

頭に一気に血が上った。

叫ぼうとしたが、俺の首の後ろを掴まれて引っ張られた。

首が締まって、叫べなかった。

首を後ろに回すと、濱が、唇の前で人差し指を立てて睨んでいた。

後ろに並んでる一年と目が合って、身体を縮こまった。

濱に、小さく「ありがと」って言った。

最後尾の凜は俺たちのことは全然見てなくて、どこか遠くを見ていた。

俺だけ熱くなってるみたいで、胸のあたりがモヤっとした。


「西やん、ちょっと後で話しような?」

「俺もいいかな?」

「俺も!」


橋田の鋭い声が囁かれた後、濱が小さく上げた。続いて俺も。


「「お前はいい!」」


西尾以外の二人の声が重なった。

圧が強すぎて、頷いた。

試合以外で圧をかけないでほしい。

当の西尾は、ぶすっとした顔で、「なんでだよー」って言ったけど、濱がわき腹に拳をかましてた。


「お前もっとやることあるだろ」

「それな」


二人の視線が魔王みたいな凛に向いた。

黒いオーラがさっきより増していた。普通に怖い。

こんなヤツを俺がどうにかするの? 無理だろ……

二人には、合掌までされてしまった。

見なかったことにして、前に向いたら、ちょうど乗り込む順番になっていた。

先輩の後に続いて狭い通路を進んで、また窓際に座った。

俺の隣に濱が乗り込んだ。

通路挟んで向こうには、西尾と橋田が座った。

魔王の凛の隣じゃなくて、ちょっと安心した。

が、濱の真横で凛が仁王立ちして、俺たちを見下ろした。

穴が開くほど凝視するが、凛は座らない。


「変わって」


バスの中の空気が若干下がったように感じた。

後ろの1年が困り顔で後ろに立っていた。


「俺変わるわ」


凛の後ろで橋田が立って、前に座った。

一年が順に座り始めた。

でも、橋田のおかげで空席になったのにそこに座ろうとしない。

濱が困り顔で席を立って、凛の肩を叩いた。


「貸しな」


濱は通路挟んで向こう側に「ごめんなー」って言いながら移った。

凛はぶすっとした顔のまま、俺の横にどかりと座った。


「お前迷惑だろ」


完全に無視。

不機嫌そうな顔がこっちに向くこともなかった。

嫌なら一年の隣に座ったらいいのに。わざわざ……

俺は諦めて、窓の外ばかり見た。


しばらくして、バスが走り始めた。

バスの揺れが最高に心地いい。

目を閉じたけど、全然眠れない。

隣から流れてくる、重苦しい空気のせいで。

薄く目を開けると、凜は寝てなかった。

首を曲げてスマホの画面を眺めていた。

凛の奥に見える西尾は窓に寄りかかって、濱は西尾の肩を枕にして寝ていた。

みんなの寝息に紛れて、長く長く息を吐いた。

濱みたいに凛の肩を枕にしてやろうと思った。

俺が眠れないのは凜のせいだし。

背中をずらして、肩に頭を乗せた。

小さく押し返された。

めげずにもう一度乗せた。

今度は押し返されなかった。


「悠希?」

「……」


枕にしては固いけど安定感があって、すぐにでも眠りに落ちそうだった。

力を抜いて、体重を寄せた。

きっと重いと思う。

枕が動いて、押し返されるかもと身構えた。

頭にそっと手が置かれて、撫でられた。

ビクついてしまって、凜の手が止まってしまった。

起きてるのバレたかとヒヤリとした。

思いきって、もっと深く身体を寄せたら、手が動き出した。

それは優しい手つきで、方々からあがる、いびきと布ずれの音がだんだん遠くなっていった。


肩をグッと押された。

傾いていた身体がまっすぐになった。

目を擦って、あくびをした。

頭の芯が重い。まだ眠い。

少しだけ目を開けて、左右確認。

左は、学校に一番近いコンビニの前を通り過ぎた。

右は、凛。

結構厳しめの視線が俺を刺していた。


「重い」

「……ごめん」


結構前に頭乗せたような気がするけど。

利き腕じゃないから許して欲しい。

いや、こいつ両方利き腕だったような。


「痺れてる」

「まじか。ごめん」


さっきまで頭が乗っていたあたりを右手で撫でてやった。

凛は大人しかった。

肩だけじゃなくて、おまけで肘の先まで掌を滑らせた。


「俺の左肩が」

「ごめんて」


何回謝らせるんだ。ちょっとしつこい。

未だ魔王みたいだし。

俺の方が不利だから言えないし。


「後で反省会な」

「……わかった」


危険を知らせるように鳥肌が立った。

こうなったら、長い。

バレー馬鹿が炸裂する。

凛の肩越しに西尾と目が合った気がしたが、思いっきり目を逸らされて車窓の外を見始めた。

俺は目を細めて、濱、橋田、後でしっかり、十二分に話してくれと願った。

裏表ないところはいいんだけど、ちょっと素直過ぎる。


バスが緩やかに揺れて、止まった。

バラバラと各々が立って、順に降りていく。

凛に続いて俺も立ったが、眠いしだるい。

狭い通路を凛の背中を見つめながら前に進んだ。

今日の最後の試合を思い出した。

コートの中では、ものすごく大きく見えた。


バスから降りると春風がひんやりと頬を掠めた。

空が暗くなり始めていて、白い月が見えた。

体育館前に着けられたバスの影を踏んで、後ろに続いていく。

みんな黙ってて、無数の靴の音が重なった。

急に焦りを感じ始めた。

俺に足りないのはなに? 時間が足りない。

さっきまで疲労感で身体を動かすのも億劫だったのに。

練習したくてたまらない。

絶対、あそこに立たないといけない。

強くなりたいって気持ちは、もちろんあった。

もっとなんでもできるようにならないとって、意識はあった。

その今までの気持ちとは比べ物にならないくらい、燃え上がった。

勝ちたい。凛と。

腹ははっきり決まった。

目の前の背中を見つめて、こっち向けって念じた。


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