第2話 名乗る(4)
「なあ、ミカ。書いてよ」
「なんで僕がレオンの分まで書くわけ?
僕は、お母さんじゃないんだよ」
鼻息荒く返事をミカがする。
「だって、絵がないし、字ばっかりなんだよ?
ふう。しゃーないなあ。書くか。
ええと、名前、年齢、住所……」
「もう、レオン、鉛筆を舐めないの!」
そんな小言がミカから聞こえてきた。
「ごめんて。ええと。」
今度は鉛筆で頭を掻く。
隣のお兄さんは鉛筆が進んでいない。
「お兄さん、大丈夫?字読める?」
「レオンが心配してる……」
お兄さんに聞いたのにミカから返事が返ってきた。
「茶化すなよ。この国の言葉が分かるのかなあと思っただけなんだよ」
お兄さんの紙に指をついて説明をした。
「ここに名前。うん。で、ここに年。」
「ありがとう。言葉はわかるんだ。でもさ。住所がさ。」
お兄さんは紙から目を離さずに、小声で言った。
「「ああ。」」
ミカも俺も納得した。
やべえ。あんなところ絶対に番地とかない。
村の川にかかっている水車小屋だ。
カウンター下に沈んで三人おでこをくっつける。
「『川の横、水車』なんて書けないよ。」
「しゃーない。俺んちの住所を書いておこう。俺の兄さんって事で。」
ミイナはニコニコして「水車でも、大丈夫よ。」と目を細めた。
聞いていたらしい。
「本当なら何かあった時のためにきちんと書いてほしいところなんだけど。
冒険者ギルドに移行する人たちが割といて。
住所が決まっていない人たちが多いのも事実なのよね」
「ありがとうございます!」
「じゃあ住所は書けるわね。」
お兄さんの手が、また止まる。
「今度は何に困っているの?」
ミカが覗き込む。
「保護者……」
俺とミカは顔を見合わせた。
「俺がなるよ。」
俺はミイナさんを見た。
「ミイナさん。俺がお兄さんの保護者だ!どう見ても俺らだろ!」




