第2話 名乗る(3)
「ほら。お兄さん。ドア、開けて」
俺がお兄さんを前に出す。
「え?私?」
お兄さんは急に振られて驚いている。
「だってさ。いいじゃん」
「ほら。十歳の子どもより十八歳のお兄さんの方が、バイト探すのに良いでしょ?」
単に俺たちも気後れしているだけだ。
でも、お兄さんはそんな理屈にもならない言葉で納得したらしい。
「そうだ。私はバイトで稼ぐんだ。大丈夫。大丈夫。」
お兄さんは数回の深呼吸をした。
やっと決心がついたらしい。
ゆっくりとバイトギルドの扉を開けた。
中には十五人ほどの人がいた。
L字型のカウンターの向こうには受付のお姉さんたち。
角の衝立には、バイトの募集らしい紙がびっしり貼られている。
「あれが仕事の募集かな?」
俺たちは衝立へ向かった。
「なあに?坊やたち。」
急にそんな声が聞こえた。
「ぼうや?俺たちだよな?」
俺もミカも、お兄さんもキョロキョロした。
カウンターの向こうにいた職員のお姉さんだった。
バイトギルドの隣は冒険者ギルドだったのだ。
「ミイナ。あんたのお客さんよ。こっちの冒険者ギルドには用事なさそうな感じだもの」
ミイナと呼ばれたお姉さんは、ニッコリした。
「レティ。分かっているわ」
ミイナさんは、メガネで黒いロングヘアーを一つ縛りにしていた。
ギルドの制服だろうか、事務職員ぽい服を着ている。
可愛い。マジ。
カウンター越しだから、よく見えないけど。
「ミイナさん。すみません。俺たち初めてで。」
「なんだよ。さっきまで気弱だったのにその態度の変化は!
しかも、爪先立ちしてるじゃん!」
ミカが肘鉄を喰らわせてきた。
「え?そうかなあ?」
だって、可愛いんだもん。
「僕たちはバイトギルドは初めてなのね?」
優しい声だ。
「はい!」
「そうね。じゃあ。まずはギルドカードを作るところからね。
登録したら、そちらの衝立にある仕事をえらんでほしいわ。」
「はい!」
隣でミカがジト目で見てくる。
ミイナさんは紙を三枚寄越した。
「ここに名前とか書いて頂戴ね」
「はい!」
見ると紙には文字だけだ。
俺はなんだかいきなりテンションが下がってしまった。




